第22話 苦難
十六層の道はユウヤ達にとって厳しいものとなった。一番の要因は、戦闘による体力の消耗。ユウヤに関しては強壮薬で体へのダメージも軽減した。しかし、ユナは女に魔法を破壊されてからの時間により、身体へのダメージが深刻化してしまったのだ。
「休憩でもするか? 正直、たまに鼻血を出してるから、大丈夫じゃなさそうなんだが……」
「そうだね……まぁ、戦闘の疲れがね。抜けないから、休もう」
ユナがゆらゆらと倒れるように壁にもたれかかる。ユウヤは、魔物が来てもすぐ対応するためにユナの前に立つ。
ユナが水筒を取り出して、水を飲む姿勢になった。
「……」
――だが、水は出なかった。ユウヤがユナのことでなんとなく察したのか水筒をユナに手渡した。
「そういえば、『共鳴』があったわね」
「…………いや、今は『共鳴』を切ってる」
「切ってる」
ユナはまるで砂のように水を飲み込んでいった。
ユナが水筒をユウヤに返しながら、喋り始める。
「体、洗いたいな。これで一緒に帰ったら、銭湯とか行かない? 最近、銭湯の内装とかかなり変わったらしいよ」
「うぅ〜ん、いつ男に戻るか分からないし、いいや」
「そっか。元男だったね」
「……」
「……行こっか」
「うん」
ユナがいきなり歩き出すが、体がふらつくこともなかった。ユウヤはユナが貧血にはなってなさそうなので、少しだけ安心する。
木々の間を通りながら進む。
「どこの階層で水を調達する?」
「十五辺りでいいんじゃないかな」
「そうだね。水の残量とか考えると、そのくらいかなぁ」
唐突にバッドバットが飛び出してきて、超音波を放ってくる。ユウヤはすぐに耳を塞ぐことが出来たが、バッドバットのことを知らなかったユナは直撃して藻掻き出す。
「カイマッ! 頼む!」
ユウヤからカイマが飛び出して、バッドバットの羽を喰らった。バッドバットはそのままカイマに喰いつぶされて終わった。
ユウヤは、ユナを心配しユナに近寄る。
「う……ぐぅ……」
バッドバットは、
「暗視のスキルを持っていれば……」
ユウヤはそんな言葉を吐きながら、ユナの金属プレートを確認する。内容は、目眩。
小説での目眩の効果は、まず走ることが出来ない。戦闘では一切頼れない。罠に掛かりやすい。後、酔いやすくて途中で吐く人が多いなどなど、散々な状態異常である。
「どうしよ……立てない」
「俺が背負うよ」
戦闘での不利とユナの体重も考えて、スライムとカイマを常時外に出して置くことになった。(他の魔物を仲間にするのもいいかもしれないな)ユウヤはそう考える。
◆■◆■◆■
イシィ達は、ユウヤを助けようと頑張っていたがその努力が実ることはなかった。冒険者というのは、冒険してなんぼ――と言われるだけ。
探し出したグルミも個人の事情で助けてやるほどの義理はないと言っていた。
「依頼でも出すか?」
「そうだな。依頼だったら、やれるかもしれないな」
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