第20話 強敵

 ユウヤが共鳴によって嫌な予感を感じとった。カイマも恐怖を感じているようで、ユウヤのバッグの中で震えている。


「アビリティを発動してくれ。やばいやつがくる……!」

「わ、わかりました」


 十七層を探索していると、以前戦闘した女が現れた。女は一瞬剣を手に取りかけるが、ユウヤの顔を見て瞬時に目の前に移動してきた。「くっ」とユウヤは声を漏らしながら、女の拳を避けた。

 ユウヤはエグゼキューショナーズソードを取り出して、女にかざした。


「『選定す』」


 女はエグゼキューショナーズソードの危険性を察知したのか、異様な速度で近づいて蹴り飛ばしてしまった。やばいとユウヤが考えた瞬間、ユナが前線に飛び出てアビリティの技を発動させる。


「――己のアトミック


 ユナは魔法によって、‘‘爆発’’を生み出した。

 (確か、能力は『演算能力によって、自然現象を多少把握して、少ない魔力で最大限の魔力を発揮する』だったか?)ユウヤはユナを頼もしいと感じながら、一緒に女と戦う。


 魔力によって体を保護しているのか、刃は通らず殴り飛ばされる。


「花魔術を使って、逃げるぞ!」

「はい!」


 ユウヤ、迷宮の魔力を吸い上げて、女の前に木が立ちふさがる。

 女は木に向かって殴った。ダンッという激しい音とともに木片が飛び散るが、突破された訳ではなかった。

 ユウヤ達が走って逃げる。


「あ……ぅ……」


 女は足音を聞きいれると、剣を取り出しまるで豆腐を切るように、刃を止めることなく、木を切り払った。女は印象に残るほど強烈な笑みを浮かべながら、

 まるで、赤子自身が何を出来るか試すように、歩法を使ってユウヤの背後まで回り込んできたのだ。


「化け物め」

「最後まで、戦うしか、ないのかな……」


 ユウヤ達は女と対照的にかなり困った表情だった。(もしかしたら、前回の戦いよりも強いか?)ユウヤはため息をつく。

 魔物のみ迷宮では、階層で上下に移動する時は力の変動がある。


「激強、魔物なのか? こいつは」


 そんな言葉を聞いてすぐに女は攻撃を再開した。

 数分間、進展のない戦闘が続いた後、ユナが技のカードを切った――。ユナの動きが止まり、『共鳴』からユウヤにまで影響を及ぼす。


「『粒子の星空スター・ストリーム』」


 全ての景色が変わった。挙動が何重にも、幾重にも重なったように見え、体の芯から鼓動をしている感覚に見舞われる。

 女は、この能力を受けず攻撃してくるが、ユナはその攻撃に合わせて華麗に避ける。


「つ、強い」

「う、ごきよまれた」


 女が言葉を喋ったことに対して、ユウヤは驚く。しかし、ユナはそれも知っていたかのように言葉を返した。


「いいえ。未来を確定させたんです」

「未来の確定……いままでつかわなかったりゆう」

「この技、相手と自分の動きを合わせていくの。‘‘ライミ’’に一番手伝ってもらって開発させた。試作段階だからね……ッ!」


 最初はまるっきりライミと女が同じ動きをするが、途中から別人のように動きを変えて、女に対処を不可能とする。

 しかし、ユナは一切の攻撃が出来ていない。

 (聞いた話じゃ精度を100%まで上げるために、演算と魔法、代償の重ねがけだったか? それでも攻撃が出来てない)


「俺もいるぜ」


 ユウヤも戦闘に混ざる。(共鳴で全て見えてる)ユウヤは、アビリティに身を任せ戦う。

 戦闘が一気に好転した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る