第14話 自我

 ラントーテがキャリーがいることを伝えると、皆が警戒体制に移った。どうやら、キャリーはアージェスと戦っていたようだ。キャリーは石を操って飛ばすが、アージェスは回復能力によって無視して突っ込んでいく。


「無理に突っ込むのは、得策ではない。キャリーと戦っているアージェスに何かあった時のため、準備しておこう」


 皆、ナカの指示を聞いて魔法が使えるものは魔力を煮て立たせ、武器を持つものは平常心を保って観察を続ける。

 ――その時、キャリーが吹き飛んできた。

 盾を構えながら、見ていたラントーテはキャリーとぶつかり、一緒に吹き飛ばされる。同時にラントーテは盾を手放した。


「«堅周壁ウォール»」


 キャリーは追いかけてくるアージェスを見て、魔法の壁を作った。


「ちっ、逃げられた」

「ラントーテ!」


 ラントーテは狭い空間で二人になってしまった。キャリーが息を切らせていたが、すぐに落ち着いてラントーテに気が付いた。


「女……」


 そう呟いた後、キャリーは自分の怪我を治す。


「私を殺さないの?」

「ハァ、お前は俺に攻撃してきてないんだし、やる意味が無いだろ。俺も疲れてるし」

「あんたは、凶悪犯だから、指名手配されたんでしょ」

「それとこれとは、話が別だ。何もしていなかったのに仲間は殺され、戦力を集めるのに必要だったんだ。あの未来視の魔女のせいであぁなったんだ!」


 キャリーはそう言いながら、魔法を解いた。石は崩れ、皆はどこにいるか見るが誰もいなかった。


「誰も……いない」

「そりゃそうだ。魔法で移動したんだからな」

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