第8話 お宝

「珠守りが守っていたっぽいもの、『代償』付きの腕輪らしいです」


 珠守りがいるところは宝箱が近くにあることで知られている。そして、珠守りは基本すぐに逃げるが逃げ切れないと考えると、筋肉魔法らしきものを使って襲いかかる魔物だ。正直、イシィがブレイブを持っていて良かった。


「代償のことについての詳細は金かかるらしいですけど、本当に祝福とかにも詳しいんすかぁ?」


 ラントーテは疑っているが、仕方ないだろう。皆、祝福に関しては余程のことがない限り金を払っているし、覚えている人はいない。


「あぁ、祝福に関しては魔物以上に分かる。代償は魔術、スキルなど様々なところで使われていて、魔法で再現されたらしい‘‘これ’’はたちが悪い。ただ、低階層のは限界まで使っても死にはしないし、やろうと思えば回復も出来る」


(HP半分になったら発動する技のために、わざわざこの代償を使ったりもしてたんだよな〜)


「やろうと思えばってことは基本しないの?」

「あくまで、中途半端な再現だから威力アップが効率的なんだよ」

「……?」

「あ、代償で使ったものは一部改変すれば回復出来るんだけど、正常に機能させようてすると金がかかるんだよ」


 突如として今までに無かったと思われるほどの異様な視線を感じる。視線の先には誰一人としていない。

 ただ、そこからは白髪の女を想起させる雰囲気が漂っていた。


「……どうした?ユウヤ」

「いや、実際に代償の力を見せてやろうと思ってな」


 訓練所を借りて、まず、魔力を込めて魔法を放った。そして、込める力を上げていき、今度は代償で魔力を少し多めに使って同程度の魔力を使った魔法と比べると威力は10から13ほどになった。


「便利だな。これをあまり攻撃力のないやつに渡すか……」

「火力のある奴に渡すかだな」


 ユウヤは熟考した後、イシィに視線を向けた。


「もしかして、私?」

「俺はイシィしかいないと思っている。正直、アタッカー以外攻撃スキルとか持ってない訳だし、奥義が強いイシィに渡すべきだ」


 「そうだな」「だね」と皆が納得する。詳しいユウヤがそう言うなら、という状態になっていた。


「正直、ここで『代償』の遺物を得られると思ってなかったよ」

「遺物自体良いもの出るのは少ないからねぇ〜」

「スライムを飼える能力の方が貴重だがな」

「はは、まぁね」


 ナカの言葉にユウヤは笑いながら同意する。


「そういえば、他の魔物とかも飼えるかな……」

「何言ってんだユウヤ。飯代とかどうするんだよ」

「なんだっけ?借金があるんだっけ?」

「そうです。しかもかなり多いです」


 パーティーメンバーが多くなり、事情をよく覚えてない人もいるので、どんどん脱線していく。


「なんだよ、お前等ぁ、せっかくスライム配ってやろうと思ったのに」


 そう言うユウヤだったが、皆はそんなのいらないといった表情をしていた。魔物を飼う人はかなりいるが、愛玩目的や戦闘目的が多いからスライム程度はいらないのだろう。


「皆、そんな顔してー。スライムで止血とか出来るんだぞー」

「ネバネバして汚いだろ」

「そこは問題にならないんだよな。俺達はレベルアップでより魔力とか取り込んだり出来る洗練された体に変わるだろ?そうなると、魔力で満たされたスライムは魔力の循環にいいんだよ」

「一体、どうやって試したんだ」

「本(ゲーム内の)! 最近、思い出した」

「えぇ……」


 少し皆からの好感度が下がるが、ユウヤは全く気にしない。


「まぁ、俺は貰っておくよ」


 クインがユウヤに近づいて、スライムを受け取るように手を伸ばした。そうすると、ユウヤは仲間にした時から異様に肥大化したスライムを取り出した。


「「「でっか!」」」

「はい、スライム」


 皆の言葉は無視してスライムをちぎり取って、野球ボールサイズのミニスライムをクインの手に乗せた。

 ユウヤは一瞬で切り離していたが、ミニスライムはまるで一体の生物のように動いている。

 (魔物ってやっぱり不思議だな)と思うクインであった。


「……」

「……貰っとく?」

「まぁ、もらっておいて損は……そんな無いよな」


 クインを皮切りに皆がスライムを受け取りにくる。


 そうして、やることは無くなり皆が家などに帰ることになった。

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