第4話 仲間①
ユウヤが冒険者ギルドまで歩いていると、複数人をボコして胸ぐらを掴んでいるテキシャさんと出会った。
「ん?悪魔か?」
「え?あくまたん?」
「いえいえ、なんでもないです。それより、こんにちは。テキシャさん」
「あら、ユウヤくん、こんにちは」
「他の二人は?」
「今、私は日課の散歩をしているだけよ。まぁ、グノルさんは風邪を引いてしまったようだけど」
「最近は疫病無いですけど、心配ですね」
「そうねぇ………それじゃあ、さようなら」
「さようなら」
ユウヤはテキシャさんが散歩と言っていて、人をぶん殴っていた事に一瞬疑問になるが、その思考をすぐに消した。テキシャさんが話を反らしたなら、深入りしない方が良いことなのだろう。
冒険者ギルドに着いたユウヤはすぐに研修の部屋の椅子に座る。
ユウヤはニィナとクインの家から遠いので、冒険者ギルドで集合することになった。どうやら、二人はユウヤと違って、ご近所で知り合い程度だったらしい。
「それじゃあ、これからは友達だ!これからよろしくね。友人っ」と言っていたし、クインは名前を紹介したりなんかもしなかった。
「おはようございます」
「よぉ」
「おはよう。クイン、ニィナ」
二人が研修の部屋に到着する。
「暇だし、会話すっか」
「そうだな。昨日思い付いたんだけど、今までで一番ダサかった出来事、にしようよ」
「えぇ、ユウヤさん、私はいいですけどクインがどう言うか―――」
「別にいいよ」
「あっ、いいんですか」
基本、会話のお題はすぐに決まるものだ。嫌なお題はすぐに嫌というし、言えるお題ならそのお題になる。
「―――そういえば、ユウヤはどうしてこのお題に?」
「え?スラムで臭いなと思ったら首吊り死体があって……出てたんだよ。それで思い付いた」
「それで、ですか」
二人ともかなり驚いた顔をしている。奴隷とかスラムの貧民について何も思ったりしない常識、だったと思うが流石にやり過ぎのようだ。
ちなみに首吊り死体は嘘で小説で話されてた事を言っていただけである。粗暴な奴と比べるのがまず間違えだった。
もっと良い話をすれば良かった、という感情とあんな赤裸々な話をしてる時点で……という気持ちが芽生える。
「漏らしてたのか。なんか、かっこつかないな。普通に可哀想というかなぁ………」
「死んだら下が緩くなるんだよ。雑学、雑学」
「へぇ」
そうやって、話が途切れかけようとしたところで、研修の話が始まった。最初に何をするか聞き逃さないために急いで姿勢を正す。
「パーティーの組み方について教えるぞぉ」
研修にて気になっていた事について出てきたので、前のめりになりながら聞く。今まで、皆に分からない事を説明をしていたので、ニィナが意外そうにしながらユウヤに言った。
「あれ、パーティーの組み方は知らないんだね」
「うん」
ゲームや小説だと仲間を募集して、しれっと組んでいたので、知らなかったのだ。
「なんか意外だね〜」
これから仲間になるニィナとも他愛もない会話を交わす。
「パーティーを組む時は、受付の方にパーティーを組む旨を伝えて金属プレートを渡す必要がある。質問等はあるか?」
「はい」
「どうぞ」
「何故、受付の人に伝える必要があるんですか?」
「それはパーティーのメンバーは誰がいるか、などの確認をしやすくするためだ。依頼を受ける時に楽になるぞ。ただ、パーティー全員で行かずに一部だけの場合はちゃんと報告をするように。これで伝わったか?」
「はい、ありがとうございます!」
どうやら、仲間を組む時は受付の人に言わなければならないらしい。面倒くさい仕様だと考えながら、またいつものように無気力状態になる。他には、研修を最後まで受けると無料で職業に就けるので、仕方なく受けているのが今の状況だ。
「パーティーを今組みたい人は前に出るように」
直ぐにパーティーを組むことが出来るようなので、三人で研修の人のところまで向かって、金属プレートを出してパーティーを組んだ。
他の人達も組み終わったところで、次に移った。
「それでは、組手をしてもらおうかな」
「く、組手ぇ!」
今までも一つの事を学べば以前とは関係ない事を教えていたが、組手を何故しなければいけないのかとザワザワと騒いでいる。
「これもお前達のためだぞ。同じ冒険者でも攻撃してくる事もあるんだからな」
木製の武器を持って自衛の方法を学ぶのだった。
◇◆◇◆◇◆
十分と判断されるまで、弱点について教え込まれ、クインは疲労を感じていない様子だったが、急な組手に困惑したままだった。
組手が終わっても不満が残っている様子で、何を話すかという感じだ。
「まさか、組手をするとは思わなかった」
「まぁ、良いじゃないですか〜。防衛の方法を学べただけ。ね、ユウヤさん」
「…そうだね。俺達はまだ初心者なんだ。……基礎がしっかりしていたとしても、レベルの差によって殺されてしまうかもしれないが基礎が身についていなければレベルが同じでも戦いにならない事だってあるんだぞ」
「そうだな。すまん、ちょっと我儘だった」
不満を垂れる事自体は我儘だと思わないが、謝罪をしていて十三歳の割にしっかりとしているなとユウヤは感じた。
「いや、昔は十四で成人だったか?そういえば、今の俺は十二歳?そういえば、声も変わった気が、違和感が無くなってる………」
「ん?何か言いました?」
かなり小さく呟いたはずだが、亜人系の五感の鋭さによるものか聞こえていたようだ。
「なんでもないよ。そういえば、ニィナは何歳なの?近所のクインは知ってるかもしれないけど、俺は知らないんだ」
「私は十四歳かな。あ、そうだ。何が使えるか説明しましょうよ。ユウヤの事は全然分からないもの」
「分かった」
ユウヤはそう言って説明をしだした。
「俺は短剣を持っているが、戦闘特化ではないな。知識を持っているから役立たずでは無いと思いたい。後は身体強化の薬を持っている。まぁ、素材持ちでもしようかな。それじゃあ、クイン頼む」
「え?俺ぇ、まぁ、いいけど、俺は槍と剣を扱える。魔法は使えないかな。革の装備で肘とか覆ってるけど、それ以外は肌に吸い付く服?かな。バッグの中に医療道具いれてる」
「それで最後に私か。私は火炎系統の魔法を扱えます。それに剣を持って戦えます。装備は胴体の革の装備以外はただの服ですね。バッグには食料を少々」
「おぉ、なんか丁度いいな」
「そうだね」
ユウヤの言葉にクインが同調する。おそらく、クインとニィナはあらかじめ道具を入れておいたのだろう。
「そうだ。友人、ユウヤ、迷宮に潜ろうよ。こんなに道具がそろっているんだからさぁ」
「おぉ!いいね」
「賛成」
クインの言葉にユウヤとニィナが賛成して、迷宮に入る事にした。
ユウヤは一人で迷宮に入ろうとしていたが、複数人で入るので、少し奥に入ってもいいのではと考える。
◇◆◇◆◇◆◇◆
―――迷宮に入ってみると、クインとニィナが突然震えだした。
「なにこれ」
「なんだこれ。震えが止まらねぇ」
「お!低階層で‘‘それ’’起きるのか」
「何か、知ってるのか?」
「魔法の才能がある奴は、魔神の魔力や魂に当てられて防衛として魔力を剥き出しにしちゃうんだよ。そして、身に覚えの無い魔力の動きに酔っちゃう訳だよ。まぁ、直ぐに慣れるらしいよ」
クイン達は喋っている間にもう慣れてしまったようだ。
「ユウヤも初回はこうだったか?」
「いや、全く無くって忘れてたわ」
笑って流しながら、迷宮の中を進んでいく。一層とはいえ、採取しているところよりも奥に行くため、難易度はいつもの比ではないだろう。
ユウヤは前の索敵、クインが後ろの索敵をする。
ニィナは竜人で一番強いと思うが、魔法という遠距離攻撃を使う者には危険な事をさせる訳にはいかず、真ん中に置いた。
「角、安全。進むぞ」
「「了解」」
敵に見つからないよう慎重にする。長い文章では喋らずに単語で分かりやすくはっきりと伝える。
「敵、出刃ネズミ、二体、歯に気をつけろ」
出刃ネズミとの戦闘。
クインから借りた長剣で出刃ネズミを牽制し、後ろから飛び出したクインが槍で突き刺す。ユウヤは同時に短剣を投げて出刃ネズミに命中させた。
「ヂュッ!」
出刃ネズミが負けじと突進してくるが遅い。ユウヤは出刃ネズミの突進を避けながら、剣で軽く切り付けた。クインが槍でトドメを刺している間にニィナが参戦し、後ろから切りつけ、驚いたところを袋叩きにした。
「………ゥゥウ……」
どうやら、完全に息絶えたようで熱が入ってくる。二度目だが慣れるようなものでは無かった。
ただ、面白かったし楽しかった。どうやら、異世界に来てから感覚が鈍いようだ。しかし、死ぬかもしれないという恐怖、戦闘の時の興奮が病みつきになっている。
「ふぅ!やったな。友人!ユウヤ!」
「あぁ、初戦闘お疲れ様」
「あ!先にユウヤさんは戦闘してたのか〜」
ユウヤが解体をして、魔石を取り出す。
「うわっ、解体とか気持ち悪くないの?ユウヤ」
「別に俺はそうでもない」
解体が終わると離れないように近寄りながら休憩を挟む。安めの地図を確認してみるが、一人の時の範囲とはさほど変わりなかった。戦闘は申し分ないが罠を見極める人がいない事に気がついたからだ。
会話はあまり挟まず、また探索を進めていたところ、敵の代わりに宝箱を発見した。
なんの装飾もされていないが、大きさからして期待していいだろう。
「開けようぜ!」
「あ、危ないですよ。ねぇ、ユウヤさん」
「いや、意外と一層には命取りな罠は少ない。脅威なのは麻酔針と魔力無効化ガスくらいだろう。ニィナは一歩後ろにいればいい。それで、もし鍵がかかってたら諦めよう」
と言いながら、皆で近づいていると宝箱は凶悪な牙をさらけ出し、クインの頭目掛けて襲いかかっていた。
思わず、クインが声を漏らした。
「―――ぇ?」
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