配信者メルメル6

『重大発表』

 そんなタイトルを掲げ、今日の私の配信は始まった。


「どっもー。初めましての方も昨日ぶりの方もこんちは!メルメルです!今日は告知通り、重大な発表があります!」


「ユースティア。よろしく~」


「マスターです!よろしくお願いします!」


 マスターちゃんは今まで通りの喋り方でいくらしい。

 そんなことよりもだ。私は今、この1641人の視聴者の前で伝えなければならない内容に、内心びくびくしていた。


「まず、私たちでギルド【メルメル探検隊】を結成しました~」


「いえーい!」


 私が言い終えると、私の拍手にあわせてマスターちゃんが笑顔で大きな拍手をしてくれた。ユーちゃんもパチパチと、ドヤァって表情を浮かばせながら拍手している。

 ユーちゃんは声は出してないものの、相変わらず目元が隠れているのに嬉しさというか喜びというか、そういう感情が伝わってきている。


 >>いえーい!

 >>どんどんぱふぱふー!

 >>いえーい!

 >>いえーい!

 >>マスターさん、明るくなったなぁ

 >>緊急時に見せてくれる姉御感も最高

 >>問題は天破斬も強いせいで滅多に見れないってこと

 >>お前らそんなことより祝えよ

 >>ヒューヒュー!!

 >>おめでとー!!

 >>いえーい!


 視聴者さんたちも喜んでくれてる。ギルド名は視聴者さんたちも含めてみんなで考えたから、それも関係あると思う。だからこそ、、、


「あー、それでですね?えーっと、この前、マスターちゃんとユーちゃんが戦った跡に、土方建設の方がレーリアに来てたじゃないですか。それでですね、、、」


 言いにくい。言いにくいけど言わなきゃいけない。

 私は、バッとカメラの画面を私の正面に向けた。


「これ、私たちのギルドのギルドハウスです!みんなの狩り場に勝手に作ってしまってすいません!!!」


 そこには、とっっても立派な洋館が建っていた。横240m。奥行き50m。4階建て。約4万坪という大豪邸だ。部屋の数は、、、数えようとして途中で諦めてしまった。そんな位に広い。


 これ、実はマスターちゃんとユーちゃんのサプライズだったみたいなの。

 レーリアの所有権を持ってるのはウーノの領主様。ユーちゃんとマスターちゃんは、レーリアにギルドハウスを作るため、領主様に土地代を支払い、土方建設さんに依頼をしていたのだ。

 二人が戦ったのは、土方建設さんの幹部の方に、

「今うちギルマスが就寝中で居ないんすよ。あの人休日全部寝て過ごすっすからねー。ホント迷惑っす。あっ、それでなんすけど、整地、自分等でやってくんないすか?いやーうちらがやるよりお二人さんがドンパチやった方が早いと思うんすよねー。じゃ、頼むっすよー」

 って言われたらしい。それで折角だからって配信してたんだって。


 それはそれとして、レーリアに勝手にギルドハウスを作ったことだ。所有者にお金は払ったんだし、どうしようと自由だって言ってしまえばそれまでなんだけど、やっぱりそれは違う。

 これまでレーリアで活動していた他のプレイヤーさんに対し、何も知らせていない。そもそも、告知もせずにフィールド環境を変えてしまったのは、良くないことだと思う。


「今回の件は本当に申し訳ありませんでした!」


「「申し訳ありませんでした」」


 再び画面を私に戻し、頭を下げる。それに続いて、ユーちゃんとマスターちゃんも頭を下げた。

 二人には、サプライズ自体はとても嬉しかったこと。だけども大がかりなことをするんだったらしっかり告知しなきゃいけないこと。などなど。私の思いを伝えた。


 >>他の誰かは不満かも知れないけど、俺的には結果的に薬草とかの種類増えたしOK

 >>気にしてないよー

 >>謝罪をしっかりするのは偉いと思う。ただやっぱり事前告知は必要。

 >>メルメルの監督責任だな

 >>反省してるならいいと思うよ。俺は

 >>次回からはしっかり伝えてくれよ?


 視聴者さんたちは殆どの人が擁護してくれている。けれど、それは私のことを知っている人たちだから。何も知らない人からしたら、とても不愉快に映る出来事だったと思っている。

 チャットのなかの、監督責任、というのはちょっと違うと思うけど、今後は3人で話し合って色々決めること。サプライズは周りに迷惑をかけない規模にする事。そんな反省を持って、今回の配信は終わった。


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