そのメイド最強につき ~TS転生したオレは勇者の息子を守りぬく~
ジータ
第1章 ディルク家のメイド達
プロローグ それはクソッタレな自称神との邂逅
「おめでとう、君は亡くなりました」
「……は?」
「えっと……レイハ、で合ってるよね。あー、君男の子だったんだ。そんな名前してるからてっきり女の子かと思っちゃった。だとしたらちょっと失敗したかな」
軽快な拍手と共にレイハのことを出迎えたのはヘラヘラと笑うチビっ子だった。男なのか女なのかわからない。姿も見えてるはずなのに判然としてない。
それは酷く奇妙な感覚だった。見えているのに見えてない。わかるはずなのにわからない。
そして何よりもここに来る直前の記憶が無いことがレイハを戸惑わせていた。いつものように学校へと向かったはずなのに、家を出てからの記憶が無いのだ。
「誰なんだよお前」
最大限の警戒を込めてレイハは目の前の自称神を睨み付ける。目の前の存在が普通の存在で無いことはわかっていた。醸し出される異質な雰囲気がレイハに目の前の存在がただの人間では無いと告げていた。
そんなレイハの警戒を知ってか知らずか、自称神はのほほんと言う。
「うーん、神様? 的な? まぁボクのことなんてどうだっていいじゃない。説明するのも面倒だしさ。ただわかって欲しいのは君は死んだってことだけ」
「死んだって。お前とこうして喋ってるだろうが。だいたい神様ってなんなんだよ」
「あー、君そういうタイプ? 神様信じない的な。最近そういう子多いんだよ。神様なら神様らしいことしてみろって。ふざけんなって感じだよね。君らと違ってボクは忙しいの時間無いの。だいたいさ、証明なんて面倒だって話。だいたい何したら神様になるのさ」
突然死んだなどと言われて受け入れられるはずも無い。ましてやレイハには死んだ感覚などまるで無いのだから。
こんなのが本当に神なのかと戸惑うレイハ。しかし自称神はそんなレイハの心を読んだのはムッとした様子で言う。
「あ、今こんなのがマジで神様なのかって思ったでしょ」
「なんでわかんだよ!」
「人の心を読むなんて朝飯前だよ。まぁボクのことを疑うような不信心な人はもれなく全員虫に転生させるんだけど」
「虫!?」
「でも良かったね。今日のボクはご機嫌だから。特別に寛大な処置をしてあげる」
どこか寛大なのかと声高に突っ込みたい。それどころか、その寛大な処置という言葉にレイハは嫌な予感を覚えずにはいられなかった。
普通に転生させられるよりも、もっと大変なことになるのではないかと。
「あ、それ正解かも」
「だから心を読むんじゃねぇよ!」
「最近思うんだよね。普通に転生させてもいいんだけど、それじゃ面白くないって」
「聞けよ人の話!」
だがそんなレイハの主張も虚しく、目の前の自称神様は話を続ける。
「輪廻転生って知ってる? 事細かに話すと長くなるからざっくり説明すると死んだ人間生まれ変わらせましょうってことなんだけど。最近神様の間でちょっとした流行があってさ。お互いの世界の人間の魂を交換して遊ぶ――じゃなくて、世界を発展させてみようって試みなんだけど」
「おい今遊ぶって言ったよな。確実に遊ぶって言ったよな」
「とにかく君はその交換対象に選ばれたってわけ。良かったね。超ラッキーだよ。宝くじに当たるよりもラッキーだ。諸手をあげて万歳しなきゃだね」
「できるか! んなわけのわからんこと言われてはいそうですかって受け入れられる奴がどこにいるんだよ!」
「んー最近はそういう子結構多いけどなー。優しい神様なんかだと、生きやすいようにすっごい能力あげてから転生させるらしいんだけど。君はどうしよっかなー。前回は化け物みたいなチートあげたんだけど。そのせいであの世界はめちゃくちゃになっちゃったし。それに今回も同じじゃ面白くないよね。あ、でも安心してよ。何もあげないってことはしないからさ」
オレの戸惑いも疑問も無視して自称神は話を進める。というか話を聞いてると、どんどん良くない方向に舵を切られてる気がするんだが。
ここで突然自称神が困った顔をする。
「でも君、男の子だったんだよねー。容姿見て無かったから女の子だと思っちゃったんだよねー」
「それがどうしたんだよ」
「器もう決めちゃってるんだよなー。うーん、よし決めた! 今度はさ、逆の人生を送ってみようよ」
「逆? 逆ってなんだよ」
「まぁつまり簡単に言うと女性としての人生ってことかな。安心して、記憶はちゃんと残してあげるからさ。その方が違いをより実感できるでしょ。あとはそうだなー、楽な人生じゃ面白くない。人生山あり谷ありの方が見てて面白――君も楽しいでしょ。よし! そうと決まればさっそく――えーと生まれは……まぁ適当でいっか。【
「完成! じゃねぇよ全部適当じゃねぇか! おいふざけんな! お前、そういうのはちゃんと――」
「じゃあ、次の人生へ行ってらっしゃーい」
そんな自称神のふざけた言葉と同時、突然落下する感覚がレイハを襲う。
そんなレイハを笑みで見送る自称神。
「バイバーイ♪」
「ふざけんなぁああああああああっっ!!」
ありったけの怒りを込めた叫びも虚しく、レイハの意識は遠のいていった。
こうしてレイハは異世界へと転生することになった。
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