どうして俺は無人駅で目を覚ましたのか

秋桜空白

第1話

目が覚めたら夜の無人駅にいた。

あれ、おかしいなと思った。

無人駅に来た覚えなんてないし、

その無人駅のホームで居眠りした覚えだってない。

なんで俺はここにいるんだ?



たしか昨日は仕事でミスをしてしまって一人落ち込みながら家に帰ったはずだ。

「…それでそのあとどうしたんだっけ?」

その先の記憶を思い出そうとするがどうも思い出せない。

だんだん頭が痛くなってきたので思い出そうとするのをやめた。



俺はとりあえず次に来る電車の時刻を確認した。

どうやら次の電車は昼の12時に来るらしい。

あと10時間もこのホームで待たなくちゃいけないことになる。



スマホは圏外でつながらない。

改札を一度抜けて外の状況を確認してみたが、

辺り一面田んぼで人一人見当たらない。



しょうがないので俺は電車を待つことにした。

昼の12時ってことは明日は会社遅刻決定だなあ、と思った。

ただでさえ会社の人たちには迷惑をかけているのに、

なんといって謝ればいいんだろう?



職場の人たちの顔を想像して俺は頭を抱えた。

頑張って迷惑かけた分を償わなきゃいけない。

けれど、無能な俺が頑張ったところでできることなんてたかが知れてる。

むしろ俺が頑張って空回りしたことでさらにみんなに迷惑をかけてしまう気がする。

もし本当にみんなに申し訳ないと思うんだったら、

自殺するのが一番の償いになるんじゃないのか?



その思考に至った瞬間、自分がなんでここにいるのかすべてを思い出した。

昨日も俺は同じことを考えていたのだ。

いや、昨日だけじゃない。

もう何年もずっとそう考えつづけていた。

そしてやっと、俺は実行に移したのだ。



全ての謎が解けると、遠くから電車がやってきた。

電車は静かにこの無人駅のホームで止まった。

扉が開く。

俺は電車の中へ足を踏み入れた。



真夜中の田舎道を電車が走る。

ガタゴトと音を出しながら電車は揺れている。

俺の心は安らかだった。

だって俺は、やっと自分のマイナスを償うことができたのだから。

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