異世界ではじめる通信革命 〜 World Tree Network. 〜

朝海拓歩

第一章 繋ぎ手

いつかの約束

 あの日、僕らは誓った。


 撫でるような優しい雨と時が止まったような凪の中、大切な人を失った。

 この世界にとって僕らはあまりにも無力で、何も変えられない小さな子供だった。

 旅立ってしまったその人は言っていた。


「あなたは、あなたが出来ることをしなさい」


 無力な僕らにその一言はとても残酷に響いた。この手でいったい何を変えられるのかと。

 その言葉は祝福だったのか呪いだったのか、それは今でもわからない。けれど心の芯に刻み込まれたその言葉は、遙か遠くまで僕らを導いた。


『ワールド・ツリー・ネットワーク』


 ここカルミア王国の創世神話にも登場する世界樹は、この世の始まりから終わりまで見守る役割を持つという。全ての樹々でひとつの命を持つと伝わるこの樹木の力を借りて、僕らは新しい伝達手段を確立した。


 今やどんなに離れていても、人々はお互いの気持ちを伝え合い、それぞれの知識で助け合い、過酷な現実を手を取り合って生きることが出来る。


 世界は一つに繋がった。

 繋がりこそが僕らを生かす。

 これは王国の辺境で育った姉弟が、世界の在り様を変えてしまうまでの物語だ。

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