第11話 自分ルール

「雨の日ってさぁ」

「ん?」


「テンション上がる?下がる?」

「うーん…どうだろう。下がるんじゃないかな?」


「やっぱりそうか」

「何で?山田は上がるの?」


「そう、俺割と上がるほうなんだよな」

「へぇ。珍しいね。なんで?」


「なんとなく?ほら、雨より晴れの方が多いじゃん?」

「ん?そうなのか?…いや、実際は知らんけど体感的には確かにそうだな」


「だろ?何かそんな感じするだろ?」

「するかも」


「だから、雨の日ってなんか特別?珍しい日?みたいな気持ちになるっていうか…」

「なるほど、分からん」


「分かんねぇのかよ」

「分かんねぇよ。別に特別でもないだろ」


「そんなバッサリ…」

「あ。じゃあ梅雨の時期とかはどうなん?」


「梅雨?」

「うん。珍しいどころか毎日雨が続くじゃん?あの時は?」


「逆に晴れの日が嬉しくなるな」

「うわーなんだそれ」


「ふふ…藤本のようなお子様には理解できまい」

「いや、知らんけど山田のその考えの方が子供っぽくないか?」


「え?そうなん?」

「意味が分からない理屈っていう点では子供っぽい」


「なんだそりゃ」

「ほら、子供って意味が分からない事言うし」


「そうだっけ?」

「私が小学校の頃にも、そんな奴がいてさ」


「おう」

「学校にある柱の中で、1本だけ色が塗られた柱があったじゃん?」


「あー、あったな」

「あの唯一のピンクの柱、アレを帰る前に絶対タッチしてから帰る奴がいて」


「おう」

「理由聞いたら『珍しいからタッチしてたら良い事が起こる』とか言い出してさ」


「おう」

「あの頃は私も小学生だったから、納得したけど」


「おう」

「今思えば何で珍しい=良い事が起こるなのかも分からんし。そもそも触るだけで良いのかも謎だし」


「あのさ」

「うん?どうした?」


「それ俺の話じゃね?俺の自分ルールじゃね?」

「うん、そうだね」


「うん、そうだね!?!?」

「いやー、覚えていたのか。てっきり忘れてるかと」


「薄々俺の話するんじゃねぇかとは思っていたけどさ…」

「あら、オチがバレてたなんて恥ずかしい」


「もっと恥ずかしそうにしろよ。本当に恥ずかしいのは俺だよ…」

「まぁまぁ。元気出せって」


「元凶が言うなよ…」

「あ、そう言えばさ」


「そんなコロコロ話を変えちゃうの?俺、寂しいよ?」

「そうそう、寂しいと言えばって話なんだけどさ」


「おう、なんだ」

「この間、新垣と山田帰った日あったじゃん?」


「おー、あったな。あの時は悪かったな」

「いや別に良いって。でもさ」


「でも?」

「確かに、少し寂しかったかなぁって思って」


「うぇ!?本当に!?」

「そんな驚くことかね」


「い、いや藤本いつもホラ、クールだからさ。…そおっかぁ、寂しいと思ったのか」

「うん、だからさ」


「だから?」

「この間は大丈夫だったけど、話したい日があれば帰らないでって言うね」


「ええっ!?」

「え、何。ダメ?」


「ちちち、ちがくて!なんか今日す、素直じゃね?なんか…俺明日急に不幸にならないよな?」

「なんでだよ。私が素直だと不幸になるのか」


「いや、そういう意味じゃなくて」

「はぁ?どういう意味だ、じゃあ」


「ああ!説明が出来ない!」

「なんでだよ」


「ま、まぁいや。あの、まぁいいじゃん、な?」

「なんか山田の方が変だけど大丈夫?」


「大丈夫!なんなら俺今すげぇ元気!」

「?そっか。元気なのは良い事だな」


「あ、あのさ…」

「うん?」


「今日一緒に帰らねぇ?」

「は?」


「い、嫌なら…」

「じゃなくて、こうやって放課後話してる日はいつも一緒に帰ってるじゃん」


「あ、そっか。ごめん何か意味わからん事言ったわ」

「結局今も意味わからん事言ってるんじゃねぇか」

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