第6話 藤本と佐伯
「ふっじぃもとぉ~!!お昼食べよー!」
「今日も元気だね、佐伯」
「相変わらず藤本はドライだなぁ…どしたん?」
「どうもしてんて。通常運転ですが」
「いやいや、この佐伯ちゃんの目はごまかせんぞ~?いつもよりちょっと元気ないよね」
「佐伯はん…あんた、こない私の事を見てくれはって…!」
「エセ関西弁やめなさいって」
「関西人に怒られちゃうね」
「んで?どしたんよ?…あ、ハンバーグうまい」
「いやね、この間山田に私はキャピキャピしてないって言われてさ」
「へぇ~?ヒャヒハヒ?」
「食べ終わってから話してくれ」
「…ごくん。で、何でキャピキャピ?」
「少女漫画の主人公はキャピついてるけど私は違うみたいな事言われてさ」
「少女漫画の主人公って『いっけなぁーい!遅刻遅刻ぅ!』みたいなやつ?」
「思考回路一緒かよ。ビビるわ」
「まぁ、漫画に出てくる女の子って実は現実では
「やっぱりそう思う?私も自分を男らしいと思った事は一度も無いけど、少女漫画のような女の子って言われるとさぁ…」
「というか、珍しいね。藤本がそんなん言われて気にするの。…きゅうりだ」
「まぁね。今まであまり、自分がどう見られるかって気にしてこなかったんだけど」
「けど?」
「ほら、もう高校生だしあと数年すれば社会人だし。やっぱり周りからの目って気にしながら生きていくべきなのかなぁと」
「なぁんだ。山田に言われたから気にしてるわけじゃないのか」
「どういう事?」
「山田に女の子らしいと思われたいっていう、藤本ちゃんの淡い恋心かと思って期待したのにぃ!って事!」
「あ、それは無い」
「バッサリ!山田もかわいそう!」
「いや、山田も…なんか好きな人いるっぽい事言ってたよ?」
「え、そうなんだ?藤本以外の女子と話してる所あんまり見ないから意外かなぁ…。うん!きんぴらも美味しいね!」
「私は昔から知ってるからじゃない?」
「あぁ、幼馴染だっけ?」
「そんな胸ときめくようなのじゃないなぁ。小学校が一緒だっただけ」
「似たようなもんじゃん!あたしも幼馴染欲しい~!」
「話聞いてた?」
「3歳年上で黒縁メガネの普段はクールなんだけど猫が好きで猫の前だと赤ちゃん言葉になっちゃう幼馴染が欲しい~!!」
「具体的すぎて怖いんだけど」
「今読んでる漫画に出てくるの」
「だろうなとは思ったよ」
「当て馬キャラなの」
「佐伯、当て馬キャラばっかり好きになるよね」
「いつも好きなキャラが報われなくてつらいよう」
「そっか。…実は私もつらい事があってさ」
「え!?なになに~!?藤本が私にそう言ってくれるの珍しいね!どしたん!」
「どっかの誰かが私のお弁当のおかず食べまくったせいで、私の分が無いんだよね」
「あ…」
「気付かなかったみたいな顔されましても」
「美味しくて…つい」
「それは嬉しいわ、ありがとう」
「でも、何も味付けがなされていない輪切りのきゅうりはビックリしたよ」
「全部食っといて文句言うな」
「次はドレッシングかけてね」
「わかった」
「仕方ないから今日はお弁当交換してあげる。あたしの食べな?」
「何も仕方なくない。当然の権利」
「ほら、これとか美味しいよ!冷凍ハンバーグ!」
「いやハンバーグ自分の弁当にも入ってるんかーい」
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