山田と藤本の会話劇
くるみりん
第1話 ジャンル
「オッス藤本。放課後だぞ」
「オッス」
「なんだよ、また読書か?」
「いや読んでる途中の小説が面白くて面白くて…思わず授業中も読んじゃってた」
「すごいな…俺もたまに読むけど、そんなに夢中に読めた事ねぇや」
「好きなジャンルが違うんじゃない?」
「ジャンル?」
「そう。山田は普段どんなの読んでるの?」
「適当に人気のやつだな。ファンタジーだったり、推理小説だったり」
「なるほど。どうだった?」
「まぁ、普通に面白かったよ」
「続きが気になる!とはならなかったのか」
「ならなかったなぁ」
「よし!なら色んなジャンルの本を読んでみなよ!」
「それって意味ある?」
「意味があるかは分からんけど、自分が夢中になれる好きなジャンルが見つかるかもしれないっしょ?」
「なるほど。ちなみに藤本は何読んでるの?」
「これ」
「『マンホール殺人事件』?ホラーか?」
「というより推理小説だね」
「どんな話?」
「あるマンホールに入っていく人が続々と殺されちゃう話」
「いやマンホールに続々と人が入るってどういう状況だよ」
「でも殺された死体は何故かいつも地上に出されている」
「ちょっと面白そうだな」
「でしょ?」
「でも俺はな~馬鹿だからなぁ~。推理小説は読むのにすっっっげぇ時間がかかる」
「あー。山田昔からバカだもんな」
「いやもう高校生なんだから昔ほど馬鹿じゃねぇわ。増えてるわ、知識」
「いや倒置法で言われても…」
「そのマンホールなんたらも、どういう話か読み終わったら教えてくれよ」
「ん?読み終わったら貸そうか?」
「いや…多分理解できないからいい。藤本が俺に説明して」
「いや説明って」
「かみ砕いて分かりやすく話したうえで、犯人は誰なのかどういう捕まり方したのか。最後にはどうなったのか聞きたい」
「それ楽しくないだろ」
「楽しい!!本をすらすら読める人には分からんだろうが、自分も読書が出来た気になるんだよ!!!」
「ええ…」
「なんなら、あらすじとネタバレだけ読みたいぐらいだぜ」
「それはマジで意味ないじゃん」
「意味があるかは俺が決める!」
「はぁ。そっすか」
「って事で、読み終わったらかいつまんで俺に教えてくれよな」
「納得はしてないけど、わかった」
「あ、そういえば俺もおススメあるぜ」
「ほう。何、小説?」
「いや、ドラマ」
「へぇ。ドラマか」
「結構古いやつだけどさ『山と谷と向こうの山』ってタイトル」
「なんじゃそりゃ。タイトルだけじゃどんな作品か分からないな」
「……」
「……」
「……」
「いや、何で無言なんだ。プレゼンしろよ」
「え?」
「いや、だからさ。その山だの谷だの…どんな内容なのか、どこが見所かとかあるでしょ?」
「いっやぁ~。わかってねぇな、藤本」
「は?」
「それを言っちゃあ、つまらんでしょ!」
「おい」
「タイトルだけで探し出して見てくれ」
「…山田、二度と『あらすじとネタバレだけで良い』なんて言うなよ」
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