第21話

「ウチを魅力的にしてどうするつもりやの!?」

「どうもしませんが……」

 なんだか妙なところで機嫌が良くなったらしい。けいは頬を緩ませている。腕にいちいちまとわりついてくるし、胸を押し付けてくる。魅了チャームをしているのだと思う。顔を見ると瞳にハートの形が浮かんでいることに気付いた。なるほど、これが魅了チャームか。残念なことにまったく効かないのだが……。

「ウチにかまってやの」

「これでもかまってるほうです。投げ捨てられないだけありがたいと思ってください」

「うーうー」

「くっついているだけで吸精ドレインできるんでしょうから、十分でしょう」

「どうせなら直に欲しいやの。ウチの中にいーっぱい注いでほしいの」

「仕方ないですね」

 肩口を押して、ソファに押さえこむ。けいは顔を引きつらせている。

 ……怖がってどうする。サキュバスなら激しく求められるくらい慣れているだろうに。と思ったが、この娘は自分から仕掛けるのと相手から仕掛けられるのとでは違うとかなんとか言うタイプだった。触るのと触られるのとは違うだとかなんとか言っていた気がする。

 このまま触るとどうなる? 修道女服には替えが大量にあるので、そのまま引き裂いてみた。更に怖がって大きな瞳に涙を溜めている。

 これは駄目そうだな。ソファに座りなおし、彼女の手を引っ張り起こしてやる。服を破いたので白い柔肌が見えている。ちょうど風呂のお湯張りの終わった音が聞こえてきた。

「お風呂わきましたよ。入ってきたらどうですか? 着替えは適当に持って行ってください」

「……うん」

 逆に元気が無くなってしまったような気がする。

 風呂上がりに夏樹に作ってもらった栄養剤と牛乳を与えておくか。それでひとまず魔力の回復はできるはずだ。

 彼女は風呂に入っている間に下着を注文しておこう。サキュバスの標準服だとか言っているようなものがエナメル質のテカテカした服だが……、そういえば、あれは、下着をはいているのか? くり抜かれたハート部分には肌色が見えていたし、下着をつけていないのでは? それもそうか。すぐに行為を致せるように余計な布は無いか。だとすれば、彼女に下着は必要無いか? そうだとしても修道女がノーパンなのはさすがに問題だろう。しかし、元から下着を身に着ける習慣がないなら、着せるほうが問題になってくるのか? 民族性の否定にならないだろうか? だとするなら、私が下着を買う必要も無くなってくるわけだ。

「良い湯でしたやの」

 けいが戻ってきた。うさぎか犬かわからない生き物のデザインがデカデカとプリントされたトレーナーを着ている。ショート丈のズボンからは、白くてむちむちした脚がはえている。細すぎるよりは、少し太めの脚のほうが健康的で良いな。

「あんまりジロジロ見んといてやの。神父様のえっちー!」

「サキュバスなんですから、見られてなんぼでしょうが」

「そんなことないやの! キメツケは駄目やの!」

 風呂に行く前よりは元気になっているような気がする。やはり風呂は心の洗濯と心身の疲労回復に役立つようだ。とりあえず、牛乳を渡しておくか。

「これどうぞ」

「お風呂上りは牛乳がキマるやの」

 けいは腰に手をあてて一気に飲んでいた。飲み干してからこちらを向いて、口を開き、舌なめずりをした。

「上手にごっくんできましたね」

「神父様のなら、もっと上手にごっくんできるやの」

「そうですか。それよりも聞きたいことがあるんですが、お前に下着は必要ですか?」

「それは、ウチにノーパンでいろって言ってる? 神父様がそう言うなら……」

「そういう意味ではありませんし、ノーパンでも問題ないんですか?」

「サキュバスの標準服はノーパンやの。ほら、ここから下着が見えたら嫌やの」

 けいは自分の服を持って説明してくれている。ノーパンノーブラが普通か。

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