第19話

 司祭館へ戻り、夕飯の支度を始める。

 けいもついてきているので、何か手伝ってもらおうか。夏樹のようにキッチンを爆破することはなさそうなので、手伝わせて問題無いはずだ。

 その前に、何を作ろうか……。大量に寄付されている牛乳を消費しなければ腐ってしまうし、ごはんも冷凍したものが残っていたな。今から炊くのも良いが、先に冷凍したものを消費しなければ。

 冷蔵庫を開く。ベーコンもまだ残ってるな……。

「けい。玉ねぎの皮を剥いてみじん切りしておいてください」

「わかりましたやの」

 けいに玉ねぎを一玉渡す。すぐに手で剥がしていた。

 私の記憶だと夏樹は包丁を使って危なっかしい行動をしていたはずなので、これならけいに任せておいて大丈夫だろう。みじん切りの段階でケガをしなければ。

 玉ねぎの処理はけいに任せておいて、私はベーコンを一センチ幅に切り、しめじの軸を落として、ほぐした。冷凍ごはんは電子レンジで解凍しておく。

 そうしている間に、けいが玉ねぎを涙目でみじん切りにしてくれた。ぴえんぴえん言ってるが、放っておこう。

 フライパンにオリーブオイルを熱し、玉ねぎを炒める。玉ねぎが飴色になるまで炒めたところで、ベーコンとしめじを加えて合わせ、白ワインを注ぐ。

「お酒入れたのに炎が出ないやの?」

「お前が言ってるのはフランベのことでしょうが、あれはアルコール度数が高い酒でないとできませんよ」

「へえー」

「見たいんですか?」

「見たいやの」

 魔族だから炎でも見たいのだろうか。だが、私も炎を見るのはけっこう好きだな。

 贈られたブランデーがあるので、それを使うか。こういうのは肉料理の仕上げにでもすれば格好がつくものだが……、フライパンに入っているものは玉ねぎとベーコンとしめじだ。

 ブランデーを棚から下ろし、ソムリエナイフを使いコルク栓を引き抜く。

「神父様なら口でコルク栓引き抜くと思ったやの」

「瓶の中にコルク栓があるんですから、無理ですよ」

 頭が少しくらい出ていたならできたかもしれないが、瓶内の圧力を考えると無理だろう。

 フライパンにブランデーを注ぐ。火柱ができたので、けいは「すごいやのー!」と言っていた。そこまですごくもないと思うが……。

 無意味にフランベをしたが、ここに牛乳、顆粒コンソメ、塩コショウを入れ、沸騰してきたところで弱火にして煮詰める。

 この間にサラダでも作っておくか。あっさりした味付けのものが良いな。

 冷蔵庫から水菜を出し、三センチ幅に切る。れんこんの水煮も冷蔵庫に残っていたので、これを使おう。

 別のフライパンでゴマ油を熱し、おろしニンニクを炒め、香りづけした後、れんこんを炒める。軽く火が通ったらコンロから下ろし、マヨネーズ、めんつゆを合わせ、水菜も追加し、鰹節をまぶして完成。更に盛り付けておく。他の料理が完成した頃には冷めているはずだ。

 あとはスープでも作るか……。牛乳を消費するにはポタージュが一番だな。

 けいが刻んでくれた玉ねぎもまだ残っているので、これを使うか。あと、ほうれん草があったな。

 ほうれん草を茹でて、氷水で冷やし、水気を絞る。それから四センチ幅ほどに切る。鍋にバターを入れ、玉ねぎとほうれん草を炒めた後、水とコンソメ顆粒を加え、ひと煮立ちさせて火を止めた後、牛乳を加えてブレンダーで攪拌する。これは食べる直前にもう一度加熱することにしよう。

 さて、弱火で煮詰めておいたものがちょうど良い感じになっている。解凍したごはんを入れ、全体を混ぜ合わせながら煮る。とろみが出てきたら、チーズを加え、塩コショウで味を調え、器に盛りつける。

 ポタージュはもう一度火にかけてひと煮立ちさせてから器に盛った。

「できたので運んでください」

「はいやの」

 けいは私が盛り付けた料理をテーブルに運んでいく。トレイを使えば一度に運べるのだが……転んで台無しにされるよりは良いか。

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