浜辺の帰り道
ペンギン
浜辺の帰り道
「ニンゲン…か、久しぶりに聞いたよ」
彼はそう言うと、海のある方へ向き直った。
澄み切った空の
「そう呼ばれた時代もあったんだ…」
寄せては返す波を眺めながら、彼はポツリと
それから体を小刻みに震わせてにゅっ、と体を起こした。「そういえば、最近のペンギンは魚を
「
彼のすぐ
かの時代より時は流れ、すっかり暖かくなった南の大陸の海辺には、砂浜が現れはじめた。
ペンギンたちは朝日と共に目覚めると、それぞれの場所で思い思いに過ごしている。
海を泳いで遊ぶ者、仲間と話したり、浜辺で波の音を聞きながら
このペンギンはもう何度も、彼のしなやかで薄く白みがかった身をクチバシで
「なかなかの味だからね、みんな魚を食べなくなったのさ」
今は
彼らの身はペンギンたちにとって、とてもよい香りがして、飲み込むと
ペンギンは羽繕いをやめ、彼をまじまじと見つめた。
「いつもありがとう、ニンゲンさん。美味しい
「どういたしまして、
「残念だけどもう、お腹がいっぱいなんだ。でも、もっとニンゲンのこと、知りたくなったよ」
いつからか、ペンギンたちが彼らを見つけて、少しずつ
正確には、末裔の残した
ニンゲンの記憶が詰まった
話すこと、笑うこと、仲間のために泣くこと……
未来を夢見て、過去を懐かしむこと……
歴史と文化、文明による繁栄と
やがて魚を捕らなくなったペンギンたちは、浜辺で
「私も、懐かしい話が聞けてよかった」
「自分の体験じゃないのに、何でもわかるのは不思議だね」
彼はふたたび身を震わせると、今度はすっと立ち上がる。
「今日は私も歩こうか」
日が
“今日、
“それはすごいね、どうやって増やしたんだい?”
“
“それなら私たちも、食べるものに困らないね!いい事だ”
“そうだね、楽しみだよ”
“ニンゲンとは
“ニンゲンとは心を持った生き物です、彼らは私たちが知らないことを教えてくれます。我々ペンギンの繁栄の
浜辺には仲間同士で楽しく話に花を咲かせたり、自分たちの将来について議論を重ねるペンギンもいた。しかし、大抵のペンギンは
「知ることは厄介なものだよ、悩みのタネも生まれるからね」
前を歩くペンギンたちを見ながら、彼は体を波打つ様にうねらせて進んでいた。
「そうかな?僕は楽しいけどね!」
さっき話したペンギンが、
周りにいるペンギンたちの中には、動く
やがてペンギンたちは、
「きれいだねぇ」
ふたりだけになった浜辺。
「とても懐かしい景色だ…」
彼は、感慨深げに、夕日を見送っている。
「太陽って、こんなに大きいんだなぁ」
その姿を見た彼は、ある事を思い出した。
「…あいつは、今ごろ元気かな……」
「元気だよ!」
唐突に、顔を近づけるペンギンに驚いて、彼は思わずのけ反ったが、あらためてペンギンと向き合った。
「…ま、まさか…お前なのか?」
「そうだよ、今やっと思い出した」
太陽は、いよいよ今日最後とばかりに雲を染め、水平線の彼方まで光を伸ばすのをやめない。
「いつか地球に帰れたら、また一緒に夕日を見ようって、言ったじゃないか」
「そうだったな、私も思い出したよ。しかしお前は変わったな、まるで別人だ」
「それはお互い様だろ?」
ふたりはどっと笑った。
空がすっかり暗くなり、ペンギンたちが寝静まった頃、海から潮風が吹き込んできた。
浜辺の帰り道 ペンギン @ovo2062
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