第1話 不幸な人間3

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「ふぅ……。疲れた」

 帰りの電車で度々発生する、座席の争奪戦。

 それに巻き込まれることなく、すんなりと着席できた私は席に着くや否や小さく息を吐いた。

(今日も、散々だったな……)

 お昼に言われた言葉がグルグルと頭の中をリフレインする。

 そんな中で仕事をこなしてみたものの、思ったような成果にも繋げられず、結局遅くまで残業をしてしまった。

(もう嫌だな。こんな生活……)

 気を抜こうとすると、つい思考が暗い方へと向いてしまいそうになる。

 正直、争いごとに巻き込んでしまうことも、巻き込まれることも御免だ。

 対人恐怖症とまではいかない。けれど、時々だが人間ヒトが怖いと思う瞬間がある。

 それは言葉、行動、声の強弱や高低――様々な要素が複雑に絡み合っていて、私自身どう言葉に言い表せば良いか分からなくなる。

(私が考えすぎなのかも知れないけれど……)

「やっぱり、疲れたな……」

 つい、言葉が溢れる。

 肉体的よりも精神的な疲弊。

 きっと今、鏡で自分の顔を覗き込んだら酷い表情かおをしていることだろう。

(明日、また頑張ろう。努力はきっと、報われる筈だから……)

 溜め息一つ。

 気分転換をしようと携帯を取り出すと、私はとある動画投稿サイトのアプリを開く。

 最寄り駅に着くまでの数十分。

 私はいつも決まって――癒やしを求めて猫動画を視聴していた。

(あー、猫可愛いなぁ)

 画面いっぱいに映し出される多種多様な猫動画に、思わず口許が綻ぶ。

(あっ、また新しい動画が投稿されてる。どれから見よう)

 ペットが飼えない環境下での癒やしを求めて、ラインナップに挙がった幾つもの動画をスライドしていく。そしてお目当ての投稿者の猫動画を見つけ、動画をタップした。

「え……っ」

 刹那、アプリ画面が暗転し幾つもの砂嵐が過ぎ去った。

(まさか、壊れちゃった……?)

 一抹の不安が過る。

 何度か液晶画面を指先で叩いては動画を再生しようと試みる。

 けれど一向に目的の動画は再生されなかった。その時、

 ティロンッ……。

 不安を払拭するかのように、軽快な電子音が流れ、点滅しながらもアプリが再起動した。

「良かった。直ったみたい」

 内心ホッと安堵しながら目的の動画を押す。

 けれど其処には目的の物とはかけ離れた画像が飛び込んで来た。

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