奇石使いのやり直し  

猫野早良

プロローグ-1 奇石使いと聖女

 この世界には五つの国がある。

 東のヒスイ国、西のセキエイ国、南のコウギョク国、北のルリ国。そして、中央に在るコハク国。


 これらの国は『結界』によって、守られていた。



 では、結界は国々を守っているのか。

 それは異世界からの侵入者、異形の化け物――『エニグマ』である。


 エニグマは、闇そのものをまとったかのような黒い姿をしている怪物で、人間を含めた生き物を喰ってしまう。

 その力は強力で、普通の人間では太刀打ちできない。


 そんなエニグマの侵入を防ぐのが結界であり、その柱となるのが『聖女』と呼ばれる存在だった。


 聖女が祈りを捧げることで、結界は維持される。

 そして、聖女を頂点とした世界最大の国教組織スーノ聖教会によって、この世界の結界は管理されているのだ。


 このように、人々の安寧のために必須の結界だが、それも万全とは言い難かった。

 どれだけ聖女が祈りを捧げても、どうしても結界には小さな隙間ができてしまう。エニグマたちは、そんな間隙を縫うようにこちらの世界へ侵入してくるのだ。


 これらに対処するのが、『奇石』とそれを操る『奇石使い』である。


 奇石は摩訶不思議な《まかふしぎ》な力を秘めている宝石で、エニグマをほうむることで生じる『魔晶石』をかてに成長した。


 一方、奇石使いは、奇石と『契約』した人間のことである。

 人は奇石の力を借りることで、エニグマに対抗する術を得る。奇石はエニグマを倒すことで、糧となる魔晶石を得る――これは双方に益となる契約だった。


 スーノ聖教会は、教会専属の奇石使い『守護者ガーディアン』を多数抱え込み、彼らはエニグマ討伐の専門家として機能していた。


 つまり、エニグマに対する『盾』が聖女の結界ならば、守護者は『剣』である。そうして、教会はこの世界に多大な影響力を持っていた。




 これは、とある奇石使いと、その親友だった聖女の物語である。



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