僕は君を飲み込んだ 自主企画「私は__を飲み込んだ」
自主企画「私は__を飲み込んだ」
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330667375263634?order=published_at
⚠︎死ネタ・ヤンデレ?
────────────────────
甲板で海風を感じながら貴族の方々と談笑していると背後に彼女の気配を感じた。彼女、セレナは声を失くした美しい女性で僕の恋人だった。『だった』と過去形なのは僕に望んでいない婚約者が出来てしまったから。国の頂点に立つものとして必要なのは分かっている。だけど僕にはセレナだけが隣に立っていて欲しかった。だけど両親はそれを許さなかった。そしてどうしようか悩んでいた時、背後の海の色を混ぜた青白いワンピースがゆらゆらと視界の端で踊った。ゆっくり振り向くと彼女は静かに目を閉じて胸に両手を当て、とても儚く今にも消えそうな雰囲気を纏わせて立っていた。一瞬この世界は静寂に包まれる。波打つ音も海鳥の鳴き声も聞こえない。再び世界に音が戻ると彼女の薄紅色の艶かな唇が小さく開く。そして透き通った歌声が響いた。波音や海鳥の声と合わさり、まるで悲しい月に照らされた夜の海のような歌声が心に沁みる。歌が終わると同時に彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい……」
彼女は震えた声でそう言うと小さくカランと音を立てて消えた。彼女が消えた場所には真珠が一つ落ちていた。
その後、彼女の部屋を調べると手紙が置いてあり内容はこう言うものだった。
『私は本当は人間ではなく人魚だったんです。私は夢見た人間の世界に行く為、声と引き換えに足を得ました。そして王子である貴方に会いました。貴方に会えて色んなことを知り、とても楽しい時間でした。ですが私は人魚に戻るために貴方を殺さなくてはいけなくなりました。だけど私にはそんなこと出来ません。だって貴方が好きだから。今までありがとう。ずっと好きです。
ps 人魚は死ぬと真珠に変わる、その言い伝えが正しければ私が消えた場所に真珠が落ちていると思います。貴方の好きなように使ってください。』
人魚は泡となって消えるっていうのは嘘だった。彼女は真珠となり僕の手の中にいる。
ゆっくりと手を口元に寄せ、傾けて。
僕は君を飲み込んだ。
────────────────────
アンデルセン童話「人魚姫」を元にしたお話です。王子はセレナと一緒に居たかった(一つになる)ため真珠を飲んだので、少々ヤンデレ気質なのかなと思っています。
私はバッドエンド・メリーバッドエンドだからこそ、この物語は美しいと思っています。私がバッドエンドの話が好きだからという理由もありますが、悲しい結末だからこその良さがあると思います。皆さんはどう思いますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます