高二病

 高校二年生。漸く四日間の地獄のテスト期間が終わった、その日のこと。


 通常は月曜日の昼休みに行われる筈の委員会は何故かテスト終了後の放課後に行われた。


 その為、十一時半より早く帰れるはずが遅くなり学校を出たのは十二時すぎた頃だった。


 いつも通り音楽を聴きながら呑気に下校していたが今日は特段と強い向かい風が私を襲った。


 電動自転車のくせに漕ぐペダルは異常に重かった。


 それだけではない。


 道路にある細かな砂は風で舞い上がり目の中に入り込んできた。


 ガタガタ道での片手運転は危険だと思い、上手く赤信号に当たり少し強めに目を擦った。


 次の瞬間、私の世界が変わった。


 瞬きをするたびに一瞬視界は赤に染まる。


 その時にやっと私にも新たな能力が! などと中二病みたいな考えをしてしまった。


 私の場合、正確には中二病ではなく高二病だと思う。


 この歳になってこんな事を考えるなんてと心の中で苦笑しながらも、この向かい風という名の魔王に立ち向かうべく、私は赤く明滅する世界で「自転車のペダル」†聖剣†を回した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る