雑草転生 異世界で聖樹と少女を助けてます

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 異世界に転生したオイラ。


 なんとびっくり、雑草だったでやんす!


 まじ、ぱねぇっすな。


 異世界転生って、こんな可能性眠ってたんでやんすか?


 雑草じゃ、ろくにうごけねぇっすよ!


 オイラはとても困ったっす!


 せめて不思議な聖樹とか大樹とかにしてくれ!


 で、やんすよ!


 とにかく、何もする事がないでやーんすっ!


 そよそよ風に吹かれてるでやんす!


 物思いにひたれば、思い出すのは嫌な事。


 いやぁ、前世はきつかったっすね!


 社畜だったから、ブラック企業で働きまくり。


 ろくに休む暇もなかったでやんす。


 こうやってのんびりしてると、心が洗われるようでやーんす。


 ねむくなってきたでやんす。


 すやすや。





 スキル:寝る子は育つを獲得。


 レベルアップ!


 レベルアップ!


 レベルアップ!






 ぼうっと寝てたら、百年経ってたっす。


 異世界の睡眠はんぱねーっす。


 まわりに町とか人とかいなかったから、ぐっすり眠れたせいでやんすかね?


 ヒーリング効果とやらっすか?


 おっとぉ! 深く眠り過ぎたら、周囲が変わっていたでやんす!


 遠くに小さな町ができてるでやんすな。


 ん?


 ステータスが見れるようになってるでやんす。


 異世界ってまじぱねえっすわ。


 どれどれふむふむ。





 ステータス

 名前 雑草

 種族 雑草

 レベル 100

 つよさ 1

 すごさ 1

 スキル 寝る子は育つ




 おおっとぉ!?

 さっそくつっこみどころが出てきたでやんすよ!


 1って低すぎやないっすかね!?


 それと、つよさは分かるけど、すごさってなんすか!?


 それに、寝る子は育つって、どういう感じ?


 レベルが100になってるのと、何か深い関係が?


 まあ、いいかっす。


 もうちょっと寝とくっす。






「聖樹さま! お水です。お受け取り下さい!」


 とと、寝てる間に町が発展して大きくなってたでやんす。


 遠かった町がおいらの近くまで発展してきてるでやんすな。


 かんさつ、かんさつ。


 周りを見渡せば(目とかないっすけど)重そうな桶をもった少女がいるっす。


 で、その少女が話しかけているのは、大きな木っすね。


 聖樹って言ってたっすけど、すごい木なんっすか?


 天まで届きそうなビッグスケールっす。


 少女はお水をぱしゃぱしゃ。


 その後も、何か話しかけてから去っていったっす。


 レベルがあるから元の世界じゃない事は分かってたっすけど。


 異世界の植物って、ちょっと特殊みたいっすね。


 なんか神聖そうな光のつぶが出てるでやんすよ。







 あれから一か月が経ったっす。


 おいらは眠ってレベルアップ。


 レベルが150になったっす。


 すると新しいスキルを習得したみたいっすね。


 その名も 「たくましくなる」


 効果はその名の通り。


 百回踏まれても、しおしおにならない逞しさを手に入れたっす。


 うーん。


 微妙?


 そうかもっすね。


 でも雑草って、オイラからしたら雑魚っすし。


 そういうスキルでもないよりはマシっすかね?


 おっと、今日も少女がやってきたっすよ。


 なにやら暗い顔をしてるっす。


 ちょっと心配っすね。


 何があったんでやんしょ。


 ふむふむ。


 なるなる。


 ほどほど。


 つまり、この聖樹さんの周りの植物が枯れてきてるんでやんすね。


 それで、人々の心配してると。


 よく見ると、聖樹もちょっとだけ、しおしおになってるみたいっす。


 毎日のようにこの少女とは顔をあわせてるっすから、なんとかしてやりたいっすなあ。


 なんて思っていたら、スキルが発動。


 対象を選べるようになったっす。


 なら、ほい、ぽちっとな。


 あ、指とかはないんで、言ってみただけっす。


 オイラ、雑草なんで。


 で、何をしたかというと。


 聖樹さん達にたくましくなるスキルを使ってみたっすよ。


 するとあら不思議、


 さっきまでちょっとしおしおだった聖樹さん達が、心なしかちょっとだけ元気になったっす。


 少女もそれに気づいて、ちょっとだけ笑顔に。


 いやー、良いことするのって気持ちいいっすね。







 ふんふんふーん。


 ふふんんふふーん。


 あっ、そこの虫それはあかんっす。


 かじっちゃだめっすよ。


 久しぶりに起きたおいらっす。


 ただいま、かじられてるっす。


 まったく、異世界の虫ってしつこいっすね。


 まあ、元の世界の虫のしつこさなんて知らないから、分かんないっすけど。


 おやおや。


 聖樹どんも虫にかじられてるじゃないっすか。


 これはあかん。


 あかんやつですわ。


 聖樹どんがこのままかじられて、中身すっかすかになっていったら、お世話係の女の子が悲しんでしまうっす。


 そうはさせないっすよ。


 さあ、目覚めよオイラの雑草パワー!


 ピロリん。


 ーー「虫よけ」スキルを習得しました


 ま


 じ


 で?


 いや、ノリで言ってみただけっすけど、案外やってみるもんっすね。


 目ん玉飛び出るいきおいで驚いたっす。


 オイラ、雑草だからないっすけど。


 とりあえずあるなら使ってみよの精神っす。


 さっそく使ってみるっすよ!


 ぱあああああ。


 あ、効果音は言ってみただけっす。


 なんかそういう演出あった方がいいかなって。


 それでふむふむ。


 どうなったっすか?


 おおっ、成功っす。


 聖樹どんにくっついていた虫たちが、勢いよく逃げていくっすよ。


 あー、良かったっすな。








 すぴぴー。すぴー。


 まつっすー。それはオイラのドーナツでやんすよ。


 はっ、なんだ夢か。


 どうもオイラっす。


 あれからいろいろあったんすけど、なんとびっくりな事が判明したっす。


 どうやらこの町の隣の隣のまた隣の町の住人が悪さをしてるみたいっす。


 俺達より実りのある町なんて許せん!


 とか言って、聖樹どんに虫くっつけたり、除草剤まいたりしたり、傷つけようと斧ふったりしてるっす。


 人間ってこわいっすね。


 素直に人の幸福を喜べない人間って。


 業が深くて、まじぱねえっす。


 ま、おいらも元人間っすけど。


 それはおいといてっと。


 その度に黙っ見過ごしてるわけにもいかないでやんしょ?


 だからオイラ、したたかになるスキルとか、薬剤耐性(毒物・劇物に限る)スキルとかを駆使して聖樹どんを守ってきたっす。


 おかげでお世話の少女はいつもにこにこ。


 毎日元気に聖樹どんの水やりに励んでるっす。


 純粋な笑顔に癒されてるっすよ。






 はっ、もしかしてオイラが異世界転生したのは、このため!?


 なんて考えすぎでやんすかね?


 まあ、生まれた意味なんて人それぞれ。当事者が決めるのが一番いいでやんすからね。


 深く考えずにやりたい事やってるっす。


 それはそうと、度重なる悪戯が失敗してるのを見てか、とうとう悪人たちが早まって極端な行動に手を染めようとしてるっす。


 油をぶっかけて、聖樹を燃やそうと考えてるみたいっすよ。


 はーっ(くそでかため息)。


 落ちぶれるところまで落ちたもんっすね。


 元人間として、同じ人間だったってのが恥ずかしいっす。


 って、嘆いてばかりもいられないっすから。


 ぱぱっと駆逐しましょーかね。


 ちょうど目の前に暗闇の紛れて、聖樹どんの近くに忍び寄る不届き者がいるでごわすからな。


 ほい駆逐ー。


「ぎゃああああ。草が動いてる!」


「ばっ、化け物!」


「ひいい、逃げろ!」


 ほれ、ぽいぽいぽいっと。


 レベルを上げにあげたオイラはとうとう、自分の体を動かせるまでになったっすよ。


 さんざん脅したっすから、


 これでもう悪さなんてしないでやんしょ?







 ふいー。


 疲れた疲れた。


 めちゃねむー。


 めちゃだるー。


 この体って、定期的に眠らないといけないみたいっすから、こうやってすごく眠くなるみたいっすね。


 さてさて、次に起きるのは何十年後か、何百年後か。


 その時も、同じように聖樹どんが生えてて、おまけに真面目で可愛いお世話係の女の子がお世話してたら、目の保養的にいいっすけどな。


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