第29話 服の完成
はやて達がお茶をしながら待っていると、ガイとそれに付き添っていたまほろがキラキラとした笑顔で帰って来た。
「「できたわ!」」
ガイが薄ピンクのニットベストを持って、まほろはネクタイを大事に握りしめている。
「「ほら、2人とも、食べてないでコレ来(着け)て!」」
上から着るだけなので更衣室には行かなくていい為、はやてとあずきは急かされて、あずきはベストを上から着て、はやてはリボンをネクタイに変えた。
「バッチリね!素敵よ2人とも!」
「うん、バッチリだよ!」
あずきのピンクのベストの胸には金の糸で箒と魔法陣が刺繍されている。
この箒と魔法陣はまほろとはやても着ているシャツのポケットにも刺繍されているが、まほろのデザインである。
それは置いといて、黒ローブの中にニットベストを着たことであずきのキュートな雰囲気が強調されてピンクの髪との統一感があってとても似合っている。
はやても、リボンからネクタイに変えただけなのに、可愛らしい雰囲気が抜けて、ボーイッシュなはやてによく似合う。
「へぇ、2人ともよく似合うじゃないか。あとは、2人の箒だ。ちょっと待ってな、持ってくるからな」
みれいは感想を言った後に、箒を取りに行って、2人に渡した。
「これが、私の箒か……」
はやては、箒を受け取って感無量といった様子で呟いた。
はやてがまほろに憧れたのは、この学校に入学する前、箒に乗って空を飛ぶ姿を見た所からである。
魔法を習い始めて、箒を受け取った事で、いつか自分もこの箒で空を飛ぶんだと想像する事ができた。
「まほろちゃん、私早く魔法の勉強して、まほろちゃんみたいに空を飛べるようになりたいわ!」
箒を握りしめて、自分のやる気を宣言するはやての言葉に、隣で箒を受け取ったあずきは耳を疑った。
色々と魔法の勉強をして驚く事はあったが、空を飛ぶのは初耳である。
「ちょっとまって、空を飛ぶってなに?」
あずきの質問に、まほろではなくはやてが自分の事のように自慢げに答える。
「まほろちゃんはな、魔法で空を自由に飛べんねん! 箒に乗ってな、スーって飛んでくんや。私も、この箒で早く飛べるようになりたいわぁ」
はやての語る顔は憧れに瞳がキラキラと輝いている。
「空を、それも自由にってどう言う事なの?」
あずきの常識では空は飛べるものではない。
忍者の極意の一つに《ムササビの術》と言うものがあるが、あれは風を読んでの滑空。つまり、ゆっくりと飛ぶように落ちているだけである。
「風魔法?いえ、それじゃ箒を使う意味がわからないわ!」
疑問を口にしながら詰め寄るあずきに、まほろは苦笑いで返答を返した。
「それじゃ、今日の夜は飛行魔法の講義をしようか」
「……分かったわ。それまで待つわ」
「やった!めっちゃ、楽しみやわ!」
3人が和気藹々と話す姿をガイとみれいは並んで見守っている。
「あの子達の成長が楽しみだわ」
みれいが、ガイの肩に頭を預けながら呟いた。
「そうだな」
返事をするガイの言葉は、いつもと違って男らしいそれも一瞬の事だ。
「あ、ほら、3人ともせっかくお揃いの服を着たんだから並んで見せて!」
ガイの言葉に、はやて、まほろ、あずきがガイとみれいの方を見て並んだ。
「3人とも、グッドよ!」
ガイが親指を立てた拳を前に突き出し、みれいも笑顔で親指と人差し指をくっつけてオッケーのサインを作る。
こうして、まずは形から。後は魔法を覚えるだけと、準備が整ったのであった。
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