第17話 復帰

いつものように、家でゆきと、ノノは過ごしていた。


古くなった不要なものを処分することをなんと言うでしょう。 「〇〇御免」


ピンポーン!


はい、野田くん。


お母さんごめーん!!


ブブー


なんでやねん!!


あハアハアハアハア!!


…テレビからクイズ番組が流れている。

回答者がいつも珍回答を生み出すことで有名か番組である。



ゆきはテレビを見ながら笑った

「ふふっ。面白いね、この番組」

「うん。そうだね」


ゆきの言葉にノノも答えた。


……


ノノが目覚めたあの日以来、ゆきは泣かなかった。

今までのような、明るさを完全に取り戻したわけではなかったが。

それでも、明らかに明るくはなっていた。



01月30日


ゆきは、翼プロダクションの事務所に来ていた。ノノを抱えて。


「本当に、大丈夫」

とノノはゆきに問う。


「…うん。私はアイドルだよ。弱音なんて吐いていられないよ。今まで休んでいた分も取り戻さないと」

ゆきは答えた。


あの日から、ゆきはアイドル活動を休止していた。

今日からアイドルを再開する為に事務所へやってきたのだ。


「来たわね、ゆき」

マネージャー、佐藤紗雪は事務所でゆきを待っていた。

復帰の話も以前からゆきと、話していたのだ。


「……準備は出来てるわ。……むりだけは、しないようにね」

「……はい」


ゆきと、マネージャーは少しの会話を交わした。


「それじゃあ、行ってきます」


そして、ゆきは事務所を出ていき会場へ向かった。


……


マネージャーはふぅと息をつき。

残っていた仕事をパパっと終わらせ。

マネージャーも会場へ向かった。




会場



ゆきは、アイドル衣装に着替え、コンサートをする準備を整えた。

そしてその腕には、やはり、ノノをかかえていた。


会場にはいつものように、たくさんのファンがゆきを待っていた。

しばらくの休止、それに伴いファンの熱意も上がっており。今までとは違う高揚感に溢れていた。


ゆきは、少し緊張した。


既に慣れ親しんだ事ではあるが、こんなにも何日も期間を開けることは今まではなかった。

そのブランクがあるかもしれないと少し不安になった。


ノノはゆきを邪魔させないようにとただ黙ってゆきを見ていた。


……



開演の時間になった。


ゆきはステージに立つ。


そして、幕があがった。



ゆきの眼前には、たくさんのファンがいた。


ファンはうおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおと歓声あげた。


やがて声がやみ。ゆきは、ファンに向けて話し出す。


「みんなー、こんにちはー」


こんにちはああああああああああああぁぁぁとファンからも声が上がる


「えへへ……ありがとうみんな。最近は少し休養をもらっていたので、少し久しぶりだよね。…私がいない間寂しくなかったかな?私はみんなに会えなくてすごく寂しかったよーみんなはどうだった?」


ゆきの言葉に


俺もぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおお寂しかったよぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおゆきたああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁん

等様々な叫びが歓声が上がる。


「ありがとうみんな。もっと皆とお話していたいところだけど。久しぶりだし、みんな、私の歌、聞きたいよね!?」


うおおおおぉぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおと声が上がる


「よしっそれじゃぁ早速、行ってみよう!1曲目「流星の絆」いくよー!」


わあああああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁ

と歓声上がる中、曲のイントロが流れ出す。


ゆきはマイクを握り、歌う体制をとる。


そして歌声をつむぎ出そうとした、その瞬間。


ゆきの視界が歪んだ


「え」


グラグラと、グラグラと、ゆきの視界が揺れる。

それは、あの時の同じ


観客に変化は無い。ゆきの視界だけが揺れるのだ。


「あ、あ、ああ」


そして、ゆきの脳裏に浮かび上がる、あの時の映像。


揺れる会場、身動き取れない自分。


兄の死の瞬間……。


ゆきは、浮かび上がるそれらを振り払おうと、必死に声を紡ごうとする。だが……


声は、出なかった。


強ばった表情で、かたまったまま動かないゆき。


「ゆき……?」

ノノはゆきの異変に気づき声をかける、だがノノの声はゆきには届かない。


そして……。



ガコッ



ゆきの持っていたマイクが、床に落ちた。

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