第10話 ずっとそばに… (中編)
12月24日 クリスマス・イブ
オレとゆきは「春野花」の街に来ていた。
「あ、お兄ちゃん見てみてー、あの服凄く可愛いー」
「ああ、そうだな」
ゆきはその腕に「ノノベアーのぬいぐるみ」を大事そうに抱えながら歩いている。
町内最強選手権大会のあの日以来。ゆきはノノのぬいぐるみをいつも、持ち歩くようになっていた。
「あ、見えたよ映画館!」
「あぁ、あそこか」
オレたちが向かっていたのは映画館だった。
……
オレとゆきは映画館に映画を見に来た。
その映画のタイトルは
「月城ゆきvs金城まお~史上最大の決戦~」
見ての通りの、ゆきと金城まおが主演の映画だ。
その内容はというと、アイドル界のトップの座を掛けて、
2人がガチバトルを繰り広げるという、なんだかよく分からん話である。
「はじまるよ・・・!」
映画が始まった。
@@@@@@@
まおちゃん!!!
…よく来たわね、月城ゆき。
どうして急にこんなことを…!?
その答えは、あなたが私に勝利したら教えて、上げるわ!
かッ!!!1
金城まおの身体から光が輝く
くっ!!…戦うしか、道はないの!?
まおちゃんは本気だ、本気で私に勝ちにきてる。
ならば、私も本気で立ち向かうしかないっ!
本気の相手には本気で応える。
それがアイドルってものでしょう?
・・・・
いいんだね、まおちゃん。
私、「本気」でいくよ…!!
来なさい…!!!
やああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
はああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
@@@@@@@@
(なんで、こいつら戦ってんだ……)
内容はかなりぶっ飛んでいるが、映像のクオリティ自体はかなり高かった。
星屑を流星のように飛ばし攻撃する、
ゆきの魔法「流星の絆」と
金城まおの光り輝く魔法「女王の後光」
2人の「能力」がぶつかり合い、画面は激しく揺れ動き、そして、輝いていた。
2人がいるだけで画面は華々しさが満たされていた。
しかし、その勝負は熾烈を極めた…。
@@@@@@@@@@@@
あああああああああああっ!!!?
そん、な…私が… 負け…る…?
まおちゃん!大丈夫!?
・・・・・・・
どうして、こんなこと・・・。
ゆき。私はね。
いい加減決着を付けたかったのよ。
どちらがより、「頂点」に立つに相応しい存在か。
だから、1度、「本気」のあなたと、戦いたかった…。
…どうして、どうしてそんなに「頂点」に拘るの?
私は、まおちゃんと一緒にアイドルやれたらそれでいいのに
私は「女王(クイーン)」よ…。
女王たるもの、常に覇道を歩み、頂点にたち続けなければならないの。私に付き従うもの達のためにも。
まおちゃん…
しかし、ゆき…。やはり。あなたの方が上だったようね。
でもね、勘違いしないで。私はまだ、諦めたわけじゃない。
いつか必ず、私はあなたを超える…!
@@@@@@@@@@@@
2人のその決着は、ゆきの勝利という形で落ち着く。
だが、あのプライドの高そうな金城まお、そして金城まおのファン達がこの内容に納得しているのだろうかという疑問が湧く。
その旨をゆきに話したところ。ゆきはこう答えた。
「うん。それは大丈夫だよ。何よりまおちゃん自身があの内容にちゃんと納得した上で作っているからね」
「そ、そうか…」
「ふふっ。それにね。…実は。これ、「実話」なんだよ?」
「……??」
その意味がよくわからなかったが、何度聞いても、ゆきは「そのままの意味だよっ」としか言ってくれなかった。
……
公園
夜になりオレたちは公園にいた。
公園の中央には大きなクリスマスツリー立っている。
電飾がかけられ頂点には星が着いている。
夜の街をツリーが照らしている。
綺麗だ。
ゆきはツリーを見ている。
「キレイだね、お兄ちゃん…」
「ああ……」
オレはずっと疑問に思っていることを言った。
「なあ、ゆき」
「?」
「今日はクリスマスだけど、良かったのか?一緒にいるのがオレなんかで」
「……うん。なんかね。一緒にいたい気分だったの。お兄ちゃんと」
「そうか」
その時、空からひらひらと白く小さな粒がたくさんに落ちてきた。
「雪だ…」
「珍しいね、ここではあんまり降らないのに」
白い雪が舞降る夜の公園で、綺麗に光るクリスマスツリーに照らされながら、ゆきは言った。
「お兄ちゃん。あ、あのね……。私、ひとつだけ。ひとつだけね、望みがあるの。聞いてくれる?」
「ああ…」
そして、ゆきは話し出した。
「私ね、アイドルが好き。これからもずっとずっとアイドル続けて、みんなと色んな見たことない景色を見ていきたい。って思ってる」
「……」
「それでね。その……こんな事言うのは。変かもしれないけど。…お兄ちゃんに、見ていて欲しいの。私のこと。ずっと、そばで」
「……」
「お、お兄ちゃんが、見ていてくれたら…私、なんだってできちゃうような気がして…。って。あ、あはは、何言ってるんだろう私。ご、ごめんなさい。私お兄ちゃんの気持ち考えずに…」
ゆきは顔を下に向ける。
そんなゆきに、オレは言った。
「……なんだ、そんなことか。」
「え」
「そんな望みなら、いくらでも叶えてやる」
「…ほんと?」
「ああ。オレはゆきの「お兄ちゃん」だぞ?…そんなこと言われなくても。いつでも。ずっと、そばで。見ていてやるさ」
「…絶対だよ?約束だよ?」
「ああ、約束だ」
「……ありがとう、お兄ちゃん」
オレとゆきは、手を繋ぐ。
それだけで、なにかが、通じあったような気すらした。
「えへへ…。これからもよろしくね、お兄ちゃん」
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