ゆきの彼方

ゴミ捨て場

第1章

プロローグ







ねぇねぇ昨日の「vsアイドル魂」みた〜?


見たみた〜。ゆきちゃんめっちゃ可愛かったよね〜 もう最高〜

えー私は断然まお様派だよ〜 あの氷のような鋭い視線に踏み潰されたいわ〜


……人々の喧騒が聞こえてくる。


話題は、アイドルのバラエティ番組についてだ。


……


アイドルって、なんなんだろう。


最近、巷で盛り上がっているという。


女の子が可愛らしいドレスを身にまとい。歌って踊ったりするらしい。


一体そんなものを見て、何が楽しいのだろう。

人間とはよくわからないものだな。


その時のオレは、そんなふうにしか思えなかった。

アイドルという存在が最も身近にいながら、だ。


……

でも、今は思う…。


アイドルは、最高だ、と。


………………………



そう。これは


オレが「アイドル」という存在を知っていく物語だ。





・・・・・・・・・・・・



ソラ大陸 好文学園 屋上



明日の天気は晴れ。1日晴れでしょう。

大陸全土を覆った異常気象は落ち着いており、今後も天気は安定していく見込みです……。


……


ケータイから流れる天気予報が聴こえる。

異常気象……、

つい先日まで、起こっていた、「暗い空」の現象も今ではもう起こらなくなり。

世界は再び今まで通りの青い空が展開されていた。

不気味ではあったが、真昼間でも日が出ていても、暗いままの空というのも、それはそれで、特別な感じがあり。

小学生の時に遠足に行く時のような、未知の体験をする時のワクワクした気持ちにもなったものだ。

……


昼休み、昼食を食べるために屋上へ行くと、久しぶりに見る顔がいた。


眠音ねむ

屋上でいつも寝ているみょーな奴だ。

というか、オレはこいつの寝ている姿以外を見たことがない。


「ねむ。お前いたのか?」

「ん……、ふわぁ〜。彼方くんかぁ、おはよ〜」

今まで眠っていたのか、彼女は横になっていた体を起こし、目を擦りながら言った。


「1ヶ月ぶりくらいか?随分久しぶりだな。最近、見なかったが、一体どうしたんだ?ひょっとして、寝すぎていよいよ成績がやばくなっていたのか?」


普段は昼休みにいつも屋上で寝ているのだが、どういうわけが、ここ1ヶ月ほど、姿を見なかった。

なのでその疑問をねむに投げかけたところ、意外な返答が帰ってきた。


「違うよぉ〜。ひどいな〜彼方くんは。いや、成績がやばいことは変わりないんだけど…。

そうではなくですね、私は、こう見えても、今まで。世界を救うための旅をしていたのですよ〜。いやー大変だったな〜」


「…………??」



「あー信じてないなーその顔は〜」


いや信じるもなにも、突拍子なさすぎてだな…


ねむのあまりの現実感のない言葉に呆気にとられるオレを気にもとめずに、彼女は語り続ける。


「あ、そうそう!旅の途中でね、キミの妹さんとも会ったよ」

「い、妹って…。ゆきに会ったのか?」


ねむが言っているのは、月城ゆき。オレの妹のことだ。

そういえば最近アイツはどこかに行っていてあまり家に帰ってきていなかったようだが…。


「うんうん。会ったなんてもんじゃあないよ。ゆきちゃんは、世界を救うために。一緒に旅についてきて戦ってくれたんだ。凄くつよくて頼もしかったんだよ。

ゆきちゃんがいなかったら今頃私はどうなっていたか… 」


「お、おう…」


「ゆきちゃんのアイドルとしてのコンサートも見せてもらったんだけどね、すんごく素敵で楽しかったな〜。ゆきちゃん、歌も上手だし、可愛いし。アイドルって素晴らしいね」


あいどる…?

そういえば、あいつはアイドルというモノをやっていると、以前言っていたっけ。

よくわからないが



「とにかく、凄く頑張ってたんだよぉ…。だから、キミも、ゆきちゃんの…こと…労って…あげな…よ…」


すぅ、すぅ


寝るな。


……


ねむはすっかり寝てしまった。



さっきの話は、なにを言ってるのかさっぱりよくわからなかったが

ゲームの話でもしているのだろうか。


まぁ、こいつは元からふわふわしたところがある。大方夢で見た話でもしているのだろう。

と思うことにした。

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