第7話 - 1
俺は肩掛けの学校カバンを担ぎながら、廊下を歩く。歩きながら、昨日のことを思い出していた。
俺が主に手で勝志を愛撫し、勝志がイった後はハグしたり話をしたりした。世の中には男同士でもセックスできる方法があるらしいが、いろいろ大変そうなので昨日はしなかった。それでも、勝志は幸せそうだった。
それにしても、俺が恋をしていたとは思わなかった。
勝志の体を触るとき、すごいドキドキした。一番ドキドキしたのは、勝志が喘いでいる時の表情を眺めていた時だ。勝志は自分の顔を隠したがるので、手で無理やりこっち向かした。めちゃくちゃ無防備な感じがすごい・・・ドキドキした。これが恋なのか。
いまだに恋が何なのかピンと来てない。ただ、それは後で勝志に聞けばいいかなと思っている。なにせ、俺と勝志は恋人同士になったのだ。わからないことを放置するのは良くないが、それならば聞けばいいのだ。今なら何でも聞ける。
昨日は勝志とそういう話もした。「僕たちは恋人同士で、付き合ってる。うっかり忘れないようにしてね」と言われ、それからいくつか約束を交わした。浮気しないとかそんな事だ。どちらかというと、勝志に「約束してね」と言われて約束させられた感じだ。
もちろん約束は守る。というか、そんな、関係がぶっ壊れてしまうような事ができるはずが無い。
「おや、修一君じゃないか」
ここで、後ろから声を掛けられる。
大島部長だ。背中には大きな黒い楽器ケースを背負っている。
「ようやく付き合うことになったらしいね」
え。勝志のことだろうか。
「勝志君から聞いたよ」
大島部長は、そう言いながら俺に笑いかける。
秘密じゃなかったのだろうか。そういえば勝志と部長って仲良かったっけ。
「・・・部長、廊下で話すようなことじゃないですよ」
「2つだけ言わせて。大事しなよ。くれぐれも不幸にさせることが無いように」
「・・・わかってますよ」
「それからもう一つは・・・おめでとう。私は勝志君のことも修一君のことも可愛い後輩だと思ってるから、君たちのことは応援するよ。何かあったら私を頼ってね」
部長はふふっと笑うと、先に行ってしまう。俺はその背中を見送る。
部長は俺たちのことを好ましく思っているらしい。俺に対してもそれなりの好意があることは意外だ。普段はからかうようなことを言う印象が強いから。こんな俺にも構ってくれているっていうその根底には、さっきみたいな純粋な好意があるからなのかもしれない。
そういえば、恋人同士になってからもちゃんと好意をはっきり伝えた方が良いと聞いたことがある。またどっかのタイミングで、勝志に「好き」って言おう。
経緯だけ見ると、いきなり性的接触をしてからその後に「付き合おう」ってなったから、なんだかなって感じだが・・・。勝志は年単位の片思いらしいのでいいけど、俺は告られて「好きかも」って思い始めた状態だ。なんか大事ものを見落としてる気がして少し焦る。
だからこそ、俺がすべきなのは愛を育むことなんじゃないかと思い始めていた。今はよく分からなくても、これから勝志の好きなところをいっぱい見つけていけばいい訳だ。
そう思うと、なんだか気分が軽い。やることがいっぱいあるのだ。勝志と愛を育むのもそうだし、これからは好きなだけ勝志を喜ばせて良いのだから。
今までは、勝志と俺は別の進路に進む、みたいなふうに思っていたから、あくまで普通の友達として少し遠慮していた。でも、勝志は俺が好きだと言った。俺でなくてはいけないと言った。俺は凡人で代替の効く人間だと思っていたのに、勝志は俺に恋をしていて、それに関しては決して代替できないらしい。
俺はそのことがちょっと嬉しかったし、俺だけができることを勝志にしてあげたいと思った。この「勝志にとっての一番」っていう立場を利用すれば、もっと選択肢が広がるはずだ。
で、今勝志がやって欲しそうなことは・・・やっぱり愛撫かな?どうも結構我慢していたらしいし。
うん、まずは「好き」って伝えよう。それから、勝志とエッチしたり、エッチの仕方を調べたりする。同時進行で、俺は勝志の好きなところをたくさん見つける。それで俺の言った「好き」を誰が見ても本当のことにしてしまおう。
やることがいっぱいある。楽しみなことがいっぱいある。
俺は案外幸せ者かもしれないな、と思った。
// あとがき //
「高校生2人が幼馴染から進化する話」はここでいったんおしまいです。最後までお読みいただきありがとうございました。ブックマークと応援ハート超嬉しいです…。これからもよろしくお願いします。
高校生2人が幼馴染から進化する話 キャビアうどん @zundamochi64
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