第10話「通話」
白石くんと二人で出かけた日の夜、私は部屋でスマホを眺めながら考え事をしていた。
(ま、まさか白石くんとデートするなんて……全然想像できなかったな……)
私はどこかフワフワしたような、不思議な感覚になっていた。男の子と二人で出かけたことなんてなかったし、当然かもしれない。
(な、何かRINE送ってみようかな……でもなんて話しかければいいんだろう……)
私はそんなことを思いながら、RINEの画面で文字を打ったり消したりしている。うーん、なかなか難しいな……一旦離れようとスマホを置いた瞬間、私のスマホが鳴った。RINEが来たみたいだ。送ってきたのは――
『若月、今日はありがとう』
白石くんだった。そうか、ありがとうって言えばよかったのか。私はすぐに返事を送る。
『こちらこそありがとう、楽しかったよ』
『俺も楽しかった。なんか、二人で出かけるのも悪くないなって』
『うん、私も同じようなこと思ってた』
そっか、白石くんも楽しいと思ってくれたのか。私は嬉しくなった。
『あ、ごめん、ちょっとだけ通話できないかな?』
私は白石くんの言葉を見てドキッとしてしまった。つ、通話か、そういえば今まで通話で話したことはない。ど、どうしようかと思ったが、断るのもおかしいかなと思ったので、
『うん、いいよ』
と、返事を送った。するとすぐに白石くんから通話がかかってきた。私はふーっと息を吐いて通話に出る。
「も、もしもし……」
「もしもし、あ、若月、こんばんは」
「あ、こ、こんばんは、あの、今日はありがとう、楽しかったよ」
「いやいや、こちらこそありがとう。俺も楽しかった」
「そ、そっか、よかった。何か用事があった?」
「あ、いや、用事があったわけじゃないんだけど、なんか話したくなって」
そ、そっか、話したくなったのか、それなら仕方ない……って、わ、私と……?
「そ、そっか、私なんかでよければ、いつでもいいよ」
「ありがとう。あ、テストも終わったし、あとは夏休みを待つだけだね」
「あ、そうだね、楽しみだよー。白石くんはどこか出かけたりするの?」
「うーん、おじいちゃんの家には行くと思う。若月は?」
「私は部活がメインになっちゃいそうだなぁ。大会もあるしね。でも楽しみなんだ」
「そっか、若月も頑張ってるんだな」
「あはは、三年生は最後の大会だからね、みんな気合い入ってるよ」
夏休みに入ってすぐに、中体連がある。私は二年生だがベンチ入りもできそうだし、試合にも出してもらえるかもしれない。頑張ろうと思った。
「あ、もしよかったら、夏休みの空いてる日に、また一緒にどこか出かけられないかな……?」
白石くんの最後の方の声が少し小さくなった。あ、な、なるほど、今日みたいなデートってことかな……。
「う、うん、いいよ。わ、私なんかでいいの?」
「うん、やっぱり若月と一緒にいると楽しいから。あ、ごめん、お母さんがなんか呼んでる……短いけど、ここまでで」
「あ、うん、じゃあまた明日、学校でね」
「うん、また明日。おやすみ」
白石くんとの通話を終えた。なんか通話というのも緊張するな……でもそっか、私と一緒だと楽しい……か。白石くん、今日の昼間もそんなこと言ってたな……そのことを思い出して、私は少し恥ずかしくなった。
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