第6話「帰り道」

 学校のテストが近づいている。部活もテスト前の休みに入った。

 授業もテスト対策ということで大事なのだろう……が、私は今日もうとうとしている。なんでこんなに眠くなるんだろう……先生の話が催眠術だ。きっと眠くなる言葉が紛れているに違いない。そんなことを考えていた私だった。


「ここテストに出るぞー、書いておけよー」

(そっか、テストに出る……んだね……)


 はっ、いかんいかん、また意識が飛んでいた。私は慌てて黒板に書かれてあることをノートに書く。あ、変なミミズみたいな線があるな、寝ながらも頑張って書こうとしていたらしい。私は恥ずかしくなって消しゴムで消した。

 その時ふと気になって、白石くんの方を見た。白石くんはいつも通り前を向いて真面目に授業を受けているみたいだ。すごいなぁ、なんで眠くならないんだろ……と思ったと同時に、白石くんの横顔が綺麗でドキッとしてしまった。


(や、やだ、私、どうしたんだろ……まぁ、ノートは書けなかったらまた白石くんに見せてもらえばいいか)


 相変わらずひどいことを考えている私だった。でも私はノートを見せてもらっているのに、私が白石くんにしてあげられることはほとんどない。なんかそれもどうなのかなと思ってしまった。


(白石くんは気にしてなさそうだけど、なんか申し訳ないな……ああいかん、また眠くなりそう……)


 そこからは睡魔との格闘だった。



 * * *



 今日の授業が終わり、さて帰ろうかと思っていると、


「――若月、帰るの?」


 と、声をかけられた。見ると白石くんがいた。


「あ、うん、帰るよ」

「そっか、途中まで一緒に帰らない?」


 ああ、なるほど、一緒に帰るのか……って、ええっ!?


「ええ!? あ、うん、いいよ……」

「なんでそんなに驚くのか分からないけど、まぁいいか。じゃあ帰ろうか」


 私と白石くんは玄関で靴を履き替えて、一緒に帰る。だ、誰か知り合いに見られたら恥ずかしいな……と思っていたが、幸い知り合いはいないようだ。


「……若月、また寝てたな」


 歩きながら白石くんがぽつりとつぶやいた。あ、み、見られてたのか、恥ずかしい……。


「はい、申し訳ありませんでした」

「いや、そんなハッキリ謝られても……ちゃんとノートはとれた?」

「あ、うん、なんとか……ギリギリだったけど、私も頑張ったよ」

「それが普通なんだが……まぁいいや。テストが近いな、勉強してる?」

「う、うん、夜ラジオ聴きながら勉強してるよ」

「そっか、それならよかった。テストなんて嫌だよな、小学生の頃はこんなテストじゃなかったのに」

「あ、白石くんでもそんなこと思うんだね」

「まぁ、楽しいことじゃないからね。でも、ちゃんとやっておかないと後で大変なことになるし」


 そっか、白石くんでもそんなこと思うのか。私と同じことを考えていて、なんだか嬉しくなった。


「そうだね、でも私はまた成績悪いんだろうなぁ、嫌だよ」

「いやいや、やる前から諦めちゃダメだよ。一緒に頑張ろう」


 そう言って白石くんが私の頭をなでなでしてきた。


「……ええ!? あ、う、うん、頑張る……」


 わ、私は恥ずかしくなって白石くんの顔が見れなくなってしまった。顔が熱い……あれ? なんだろうこの気持ち……。

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