Sidh or She

 歩道橋の上を


 ねこが 鼻歌を歌いながら


 二本足で歩いていたよ


 ほかの皆さんは


 あれは ケット・シーだよと


 口々に叫んでいたけれど


 ぼくは ねこまただと思った


 しっぽは見えなかったけど


 きっとそうだ


 でも アイゼンハウアー氏によると


 彼もしくは彼女の鼻歌のメロディーは メジャーペンタトニックで


 2・4・6拍目にアクセントのある8分の6拍子のアップビートだったので


 どうやらケット・シーかもしれない という事だった


 でも ぼくは正直言って 氏の意見は間違ってると思った


 ぼくの耳には あの鼻歌はマイナーペンタトニックで


 ダウンビートの2拍子に聞こえたし


 だとすれば あのねこは


 田舎節の民謡を鼻歌で歌っていたのだから


 きっと ねこまたに違いないのだと考えられるわけだ


 大体 アイゼンハウアー氏は


 普段からダルシマーとかで


 キワモノのプログレ歌謡とかを演奏して喜んでるような人だし


 スネアとキックの違いもわからないようなソロイスティック派だから


 彼の意見にまともに向き合おうという事自体 おかしいのだ


 それだったら インチキフィンランド人歌手のソイナコイネンさんの


 歯笛でフィンランディア演奏でも聞いていた方がましだ


 彼女だったらきっと ぼくのみこまた説を支持してくれたに違いない


 惜しい人を亡くしました

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