La vie en Rose

 かーりぃちゃんファンクラブに入会しようと思って


 申込用紙を見たら 注意事項に


 「すこしむずかしいので お父さんお母さんといっしょによみましょう」


 とか書いてあった


 お母さんはともかく おれさまのお父さんは


 数年前に他界しているので


 一緒に読むためには あの世から呼び戻さないといけない


 おれさまはすぐに魔術書をひもとくと


 ネクロマンシーの秘儀を用いて 地獄からお父さんを召喚した


 しかし お父さんはすでに正気を失っており


 禍々しい瘴気をまき散らしつつ襲いかかってきたので


 おれさまは思わず 手元にあった雷公鞭で反撃してしまった


 その瞬間お父さん 無数の電子対を放出しつつ分子崩壊


 ノイマン境界を越えた分数次元のユークリッド空間の彼方へ


 消えていったのさ


 その様子を柱の陰で見ていたお母さん


 ショックで先祖返りを起こして


 謎のレムリア人祭司に人格変換してしまった


 彼女は突如 おれさまを異端者と見なして


 神聖魔法をぶっ放し始めた


 極低温の冷気を帯びた光芒がおれさまの肌を掠めた時


 おれさまは危うく封印されかかったが


 事象レベルでの波束の収縮が起こる前に


 特殊条件下における因果律の不可逆性の破綻が起きたために


 おれさまは虚無に帰す事だけは免れた


 でも結局 実体を失ってしまった事には変わりないので


 そこら辺を歩いてた きれーなネーチャンに憑依して


 セーターとかについてる毛玉を集めて


 それを再び毛糸に作り直してセーターを編むという


 クリエイティヴな職業に就く事にした


 それからファンクラブは


 年会費がボッタクリ並に高い事を知って諦めた

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