箱入りお嬢様の“恋人”ができたらしたいこと♪

秋月大河

【トラック1】ステップ1 恋がしたいお嬢様からのお願い♪

◆聞き手のマンションの部屋の玄関

 ※聞き手のセリフは補足的なイメージです


 SE:チャイムの鳴る音×2

 SE:マンションの扉の開く音


 //立ち位置:正面 声の距離:普通


「あっ、こんにちは。お兄さん、お久しぶりです」

「突然、押しかけちゃってごめんなさい。私のこと覚えていますか?」

「私、乃愛(のあ)です。佐伯乃愛(さえき・のあ)と申します」


 聞き手が戸惑っている


「……もしかして覚えていらっしゃいませんか?」

「私、この佐伯マンションのオーナーの娘です」


 聞き手「オーナーの娘さん?」


「はい、そうです。お父様がこのマンションのオーナーなんです」

「それで、私もこのマンションに住んでまして……お兄さんとも、何度かご挨拶させていただいたんですけど……覚えていませんでしたか?」


 聞き手が思い出す


「あっ、やっと思い出してくださったんですね。よかった……」

「今日、お兄さんのお部屋に来たのは、折り入ってお願いがありまして……」

「ええっと……実はですね……」

「とても恥ずかしいお願いなんですけど……」

「ああ、どうしよう……やっぱり恥ずかしくて言えません……」

「でも、ここまで来たら言わないわけにはいかないです」

「で、では、思い切って言いますね……」


 //立ち位置:正面 声の距離:近い


「お兄さん! 私と今日一日恋人になってくれませんか!?」


 聞き手「は?」


 //立ち位置:正面 声の距離:普通


「あはは……やっぱりびっくりしちゃいますよね」

「私もいきなりそんなこと言われたら不審者だと思っちゃいます」

「でも、私、本気なんです! 本気でお兄さんと恋人になりたいんです!」


 聞き手がきょろきょろと辺りを見回す


「……あの、お兄さん? いったい何をされてるんですか?」


 聞き手「どっきりかと思って」


「……えっ? どっきり? いやいや、どっきりではありませんよ?」

「お兄さん、私は本気でお願いをしてるんです」

「本気でお兄さんに、わたしと今日一日恋人になっていただきたいんです!」


 聞き手「なんでまたそんなことを?」


「……じ、実は、これにはふか~~~い理由がありまして……」

「えっと……その……私、男の人がとても苦手なんです……」

「小さい頃から、今までずっと女子校に通ってたせいで、お父様以外の男の人と全く話したことがないんです……」

「だから……その、男の人が側にきただけで、怖くて逃げ出したくなっちゃって……」

「この間なんか、道を聞こうとした男の人に肩を叩かれただけで、悲鳴を上げて全力で突き飛ばしてしちゃって……」

「(ため息)はぁ……これでは、とても男の人と恋愛なんかできません……」


 聞き手「恋愛?」


「はい! 私、ずっと映画やマンガみたいな恋愛をしたいって思ってるんです」

「素敵じゃないですか~。恋愛映画みたいに好きな人と手をつないでデートしたり、抱き合ったり……ああ、あのイチャイチャを私もしてみたいんです~」

「でも、このまま男の人が苦手では、一生恋愛なんかできません」

「だから、私が少しでも男の人に慣れるためにも……お兄さんと恋人ごっこをして、男の人に慣れる練習をしたいんです……」


 聞き手「俺も男だよ?」


「あっ、いえ、なぜかわからないんですけど、お兄さんなら大丈夫な気がするんです」

「これまでの人生で、お父様以外の人と、こんな風に自然に話せた男の人は、お兄さんが初めてでして……」

「あっ、ちょっと待っててください。確かめてみますね」


 //立ち位置:正面 声の距離:近い


「んっ……ちょっ、ちょっと緊張しますけど……でも、なんとか大丈夫です」


 //立ち位置:正面 声の距離:普通


「ふう……やっぱりお兄さんだとなぜか平気なんです」

「……つかぬ事をうかがいますが、お兄さんは女の人ではないですよね?」


 聞き手「違うよ!」


「ああ、ごめんなさい。大変失礼いたしました」

「私、思ったことをつい素直に言っちゃう性格で……」

「と、とにかく、私が男の人に慣れるために協力していただけませんか?」


 聞き手「急に恋人なんて言われても……」


「やっぱりダメですか? もしかしてお付き合いされてる方がいるんですか?」


 聞き手「いないけど……」


「いらっしゃらない? では、私と恋人ごっこしても問題ありませんよね?」


 聞き手「いや、そういうわけには……」


「どうかお願いです、お兄さん。お兄さんに断られたら、私は一生男の人が苦手なままです。きっと私は生涯恋も知らずに、ひとり寂しく死んでしまうんです……」

「だから、どうか今日だけ……今日一日だけ私と恋人ごっこしてくれませんか?」


 聞き手「わかったよ。今日一日だけだよ?」


 //立ち位置:正面 声の距離:近い


「ありがとうございます! とっても嬉しいです」

「では、今日はわたしとお兄さんは恋人です」

「ふつつかものですが、今日一日よろしくお願いしますね♪」

「いっぱいイチャイチャしましょうね」

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