そのアイドルは愛をうたう
春瀬はなの
第1話 そのアイドル、日本一
「
その問いかけに、俺は「そうですね……」と呟きながら指を顎に当てる。
「やっぱりスキンケアかな。僕は仕事柄不規則な生活になりがちなので、肌がボロボロにならないように、と気を遣ってます」
「現在もライブツアーの真っ最中ですもんね。やはり打ち合わせなどで忙しくなるのでしょうか?」
「打ち合わせもそうですし、リハとか衣装合わせもありますね。あとは……ほら、有難いことにこうして取材のお仕事も入れてもらってますし」
前原さん――今回のインタビューをしてくれている人である――に向かってにこりと笑みを浮かべながらそう言うと、彼はくすくすと笑い声を溢した。
「こちらこそお受け下さりありがとうございます。今回のテーマは『かわいいに迫る』ですから、春原さんの”可愛い”をとことん追究させてもらいますよ!」
「あははっ、お手柔らかにお願いしますね」
”可愛い”。そう言われるのはなにも今に始まった話ではない。160センチで止まってしまった身長に中性的な顔立ち、ほとんど声変わりのしなかった高い声はいつだって良くも悪くも注目を浴びた。それに嫌気がさしたこともあるけれど、今の俺にとってはそれが仕事道具であり武器だ。
だから、俺は素の自分を隠してアイドル・春原愛人を演じる。そして、今日も「可愛い」を貼り付けて笑うのだ。
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