ドスケベサキュバス清楚系委員長がやたらぐいぐい来る件について

吉武 止少

第1話 屋上で

SE:人々のざわめき。

SE:教室の扉が開く音。

SE:ざわめきが小さくなる。

「おはよう」


「もう。委員長なんて呼ばないで。私にはさくらって名前があるんだから。ほら、さくら、って呼んでみて。さ・く・ら」


//タメ。10秒ほど


「はい、よく言えました」


「おっきなあくびなんてして。寝不足? ね、ちょっと話したいことがあるんだけど、ちょっと屋上いかない?」


「とぼけないで。昨日の夜のことよ」


「え? ホームルームが始まる? ふーん、そうやって逃げようとするんだ」


//耳元で囁くように


「そういう態度をとるなら、私にも考えがあるんだけど。た・と・え・ば」


//タメ。数秒


「君に裸同然の姿を見られたって言っちゃおうかな? 別に嘘はついてないでしょ? そりゃ不可抗力なのは私も分かってるよ? でも、クラスの皆はどう思うかな……屋上にいく気になってくれたみたいね」


SE:教室の扉

SE:ざわめきの中を移動。廊下→階段。少しずつざわめきがちいさくなり、やがてなくなる。

SE:鉄扉がきしむ音。ばたん、と閉じる。


「んー、良い天気。こんな日はのんびりお昼寝したくなっちゃうね。委員長なのにそんなこと言っていいのかって?」


//耳元


「良いの。君にしか言わないから。それに、昨日までの私と今日からの私は別なの。昨日のアレを見たなら、わかるんじゃない?」


//元の距離に戻る。


「昨日の夜、私のこと見たよね? どこでって、私に言わせるの!? もう、えっちだなぁ」


「夜10時くらいかなぁ。君、窓から月を眺めてたでしょ? 空を飛んでた私とバッチリ目があったじゃない。あの時空を飛んでたサキュバスが私よ……まさか、同級生にサキュバスの正装を見られるなんて思わなくて」(恥ずかしそうに)


「……何? そうよ、サキュバス。日本語で言うなら淫魔」


//ちょっと近い感じ


「あれぇ? 何か顔が赤くなってるけど、何か想像しちゃった? ね? どうだった、私」


//嬉しそうに。ややからかい口調


「あ、ごめん、怒らないで……それで、話の続きね。私、サキュバスの家系なんだって。びっくりしないでよ。私だって16歳になって初めて知らされたんだから。それで、16歳の誕生日が来たら、生まれ変わったように積極的になっちゃうんだって」


「委員長、クビになっちゃったりして」


//おどけた口調。


「えっ? 誕生日はいつだったのって……知らなかったの? 私の誕生日は昨日よ。もう、昨日一日そわそわしてたのに! ………来年からは覚えといてよね」


「初めてサキュバスになるのは満月の晩って決まってたらしいんだけど、まさかお母さんも誕生日当日が満月だって思ってなかったらしくて……えっ、た、誕生日おめでとうって……あ、ありがと。何か奢るって……えっ、放課後!? じゃ、スタバの新作……良いの?」


//やや不安そうに、でも嬉しそうに


「約束したからね! 放課後、絶対待っててよね?」


//咳払い


「それでね、サキュバスになると、その……夢の中で、ほら、ね? そういうことをするみたいなんだけど……何のことか分からない? 本当に? もう、えっちなんだから」


//やや拗ねた口調で。


「……ケーキも追加で許してあげる。とにかく! 人の夢に潜り込もうとして空を飛んでたの。そしたら君に見られて……」

「えっ!? 私だって気づいてなかったの!? 絶対にバレてると思った……だからこうやって堂々と呼び出したし、こうやって素の自分で迫ってるのに」


//恥ずかしそうに


「忘れて……って言っても無理よね。本当は私だって目立つことするしたくなかったんだよ? 君の夢の中に入って事情を説明するつもりで、屋根の上でずーっと待ってたんだから」


「でも、何でか夢の中に入れなくて……えっ、徹夜したの? 何で!?」


「月夜に見えた女の子のシルエットに興奮してって……ふーん……そっか。寝れなくなっちゃうくらい興奮したんだ。そっかそっか」


//嬉しそうに


「そういうことなら仕方ないなぁ。ちょっとだけ寝る?」

「……変な意味じゃなくて。ほら、屋上なんてめったに人来ないし、寝不足なら少しでも寝れれば元気になるかなって」


SE:チャイムの音


「ほら、どうせもうホームルームも始まっちゃったし、二人そろって遅れてったら、皆に怪しまれちゃうでしょ」


「委員長となら別に良いって……わ、私だって別に困らないけど」


「って、こら。また委員長って呼んだでしょ? 名前で呼んでって言ったでしょ。ほら、呼んでみて」


//耳元で


「さ、く、ら、……だよ?」


//10秒ほど無言。そのあと嬉しそうに笑う。


「よく言えました。じゃあ、ご褒美に膝枕してあげる」


//さくらが座り込む。衣擦れの音。


「はい、どうぞ」

「ふふっ、髪の毛、ちょっとくすぐったい」

「興奮して寝れないの? これ以上は今はだーめ」

//しばらく沈黙

「もう。しょうがないなぁ……頭撫でてあげる」

//頭を撫でられる音。(5~6回)

//胸をぽんぽんする音。以下ずっと

「落ち着かない?」

「私、小っちゃいころこれで寝かしつけてもらってたから、ぽんぽんされるとすっごく眠くなるんだ」

「ほら、深呼吸するよ。目を閉じて」

「私に合わせて、大きく深呼吸して」

「吸って」

「吐いて」

「吸って」

「吐いて」

//静かに笑う

「おやすみ」



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