カルナヴァル·ロード

ねこねこ暇潰商会

第一章

第1話 プロローグ

 木星

惑星連合宇宙軍統合本部中枢内にあるメインコンピューターを前に、結果を確認する度に眉間にシワを寄せ、苦々しい顔をする1人の男が座っている。


アルフレッド·フォン·デリウスフォード

やや明るめのテールグリーン色の髪を背中のあたりまで伸ばしているが、整った顔立ちは中々の美丈夫である。


甘いマスクに、鮮やかなグリーンの瞳。

一見すると、とても軍人には見えないその容貌は、初めて彼を見た人はモデルか俳優と見間違えてしまうほどである。


しかしながら、人が羨むほどのこの容姿も彼にとっては煩わしいばかりだ。

士官学校を卒業して以来、順調な経歴に対して自分に向けられる目は、

嫉妬、羨望、あからさまな侮蔑。


その外見だけを見て蝿のように群がってくる女達。


そして、デリウスフォード家の後ろ盾と自分に対しわが娘をと寄ってくる高官たち。


どれ一つとっても良い事など有ったためしがない。


そんな彼は若干28歳にして、今は連合宇宙軍月支部の最高責任者でもある。



「なぜだ…」

何度目か判らない同じ結果を、睨みつけるように見つめながら、困惑の言葉を漏らす。

「アキは…アキはまだ寄宿学校を卒業したばかりなのに…」


誰に問うわけでもないその言葉は、固く握られた両手の拳を嘲笑うように消えていく。


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