第108話 拷問と労い①●
今回はどんな拷問で口を割らせようかしら?
そんなことを考えながら、砦に打ち捨てられていた錆びた拷問器具をいじっていると、
「閣下、後学のため拝見してもよろしいでしょうか」
ロビンが見学を申し出た。
そういえば前回は見ないように言いつけたっけ。
「今回は前回とちがう拷問よ。それでもいい?」
「かまいません」
ロビンだけでなく、トベラやツェリもいる。前回のようにホロ映像で
くすぐりの刑で疲労骨折するまでいたぶる…………私を殺そうとした罰にしては
お目々をパッチリと開けさせて、日光をレンズで収束させて焼く。時間がかかるか……。
気絶するような激辛料理を食べさせる。ゴキ●リ風呂に入ってもらう。体に肉を巻きつけて、飢えた野犬の入った
どれもイマイチだ。スカッとしない。
私の命を狙ったのだ。それ相応の報いを受けてもらわないと……。
あれこれ考えながら、
なぜか錆びまみれの鉄の
そういえば、父が言っていたわね。アレは死ぬほど痛いと。これで再現できそうね。やってみましょう。
「
「
「だったら拷問経験者を一名」
「ただちに呼んで参ります」
拷問係が来るまで、私たちはしばらくお
「それでエレナ、どういった拷問をするつもりだ」
「
「呆気なく口を割る! ますます気になるな」
ツェリは
「トベラ、嫌なら付き合わなくてもいいわ。あなたにはまだはやいから」
「いえ、私も見学しますッ!」
最終確認をする。
「いいこと、これからやる拷問はとんでもない非人道的な行為よ。勇気と自己責任が必要だから覚悟してちょうだい」
「どういう意味だ?」
「それだけ
「呆気ないほど簡単に白状するのだ、凄惨でもおかしくはないぞ? 連日連夜、責め抜くほうが凄惨だと思うが」
そんなことを話している間に、ロビンは屈強な兵士を引き連れ戻ってきた。
「閣下、連れて参りました」
兵士はおどおどと頭を下げる。
「そんなに緊張しなくてもいいわ。拷問っていっても簡単なことよ。この棒を突っ込むだけ」
錆びまみれの鉄串を手渡し、手短に説明する。
拷問係が青ざめる。ちょうどツェリたちから見えない位置だ。
「あっ、言い忘れてたわ。多分、何度も気絶するから、目を覚まさせる水も用意しておいて」
拷問係にアドバイスを与えて、下がる。
「最後の忠告よ。見ても後悔しないでね」
「エレナ、いまさらだな。それほど効果の確かな拷問、見逃すわけにはいかない」
ツェリが言うと、ロビンは無言で頷き、トベラは
父の言ってことが本当だとしたら、これから精神衛生上よろしくないことが起こる。それも下手をすればトラウマ級の……。
そのことをみんなに伝えたつもりだがっだけど……通じていなかったようね。一応の説明責任は果たした。ここから先は私の責任ではない。
みんなから三歩さがると、後ろを向いて、そっと耳を
◇◇◇
拷問はたったの数分で終わった。
父が言っていたことは正しかった。尿道結石は地獄だと。
なんでも出産の激痛に相当するらしく、どんな
ナノマシンで壊せないほど大きくなる前にはやく体外へ排出するよう、父が口を酸っぱくして言っていたのを覚えている。
軽い気持ちで錆びた鉄の串をアレに
ガスコーニュはたった一度の気絶で、すべてを自白した。
見学した面々は、みんな仲良くげっそりした顔になっている。
「あれは女にも有用な拷問だ……」と、げっそりとした表情で口元を手で覆うツェリ。
「恐ろしい歴史の闇を知ってしまいました」当然ながら、トベラはショックを隠しきれず、いまも震えている。
「なんというか、酷い」と、現役の密偵が引いている。
拷問見学の感想は様々だったけど、揃ってこれを世に出すな、と熱い視線で訴えかけてきた。
たしかに効率はいいけど、見ているほうも痛いもんね。今後は封印しよう。
しかし意外だ。貴族だけでなく、商人にまで命を狙われるとは……。そう私に
なんでも聖王国との会戦のおり、王都を
いまも二人が繋がっている確証はないけれど、敵であることには間違いない。要注意人物として外部野の
着想はよかったけど、詰めが甘かったわね。帝室のドロドロとした陰謀を知っている私にとって児戯に等しい陰謀だ。
しかし、だからといって見過ごすわけではない。
見つけたら必ず始末しよう。錆びた鉄串で。
それにしても人気者はつらい。
裏切り者、商人、派閥と私の敵は
今後は、そこに聖王国も名を連ねるのかと考えるとうんざりしてしまう。
ストレス性胃炎にはならないけど、ワインとタバコの量は増えるだろう。実に面倒だ。ツイてない。
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