第4話
それから街をぶらぶら歩くと,忙しなく歩く街の人々とすれ違う。周りから置いていかれているような気分になる僕。その気持ちを誤魔化すように空を見上げると、太陽の眩しさにクラクラした。その反射でふと下を向くと、君の仲間が地面に転がっているのを見た。
そうだ。君は蝉だ。その事実は変わらない。その時、君はもう長くはないのだと悟った。君にとっては1秒だって大切で、きっと僕にとっての時間と君にとっての時間は大きく違う。君は一秒一秒、後悔のないように噛み締めて生きている。そう考えると、どうして僕が人間で、どうして君が蝉なんだ、と思った。
僕は長い人生の中で先のことだけ考えて、中途半端に生きているだけだった。でももし君が僕だったら、きっと未来なんかよりも明日なんかよりも、「今」を大切に生きるんだろうな。そして、明日この世を去ったとしても何の後悔もないように、噛み締めて生きていくんだろうな……。
君が人間として長く生きているのを、少しでも見てみたいと思ってしまった。
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