心霊スポット事件

ボウガ

第1話

ある老人が、別の囚人に対し牢屋でこんな話をしていた。みすぼらしい顔立ちの男で、その与太話を真に受けるものも、疑うものもいた。



ある大学生が心霊スポットに向かった。男二人と女一人。

 A男、チャラチャラした男。B子、霊感があるといわれるおどおどした少女、C男、B子の彼氏、知的で筋肉質。

 そこはある廃病院だった。


 A男が先導する。

「ここは、去年も自殺者がでたんだよ」

 C男

「お前、そういう事は早く」

 A男

「でもお前、B子の霊感を疑っているだろう?」

 C男

「……」

 C男はふがいなかったが、近頃B子との中がうまくいかないと仲の良かったA男に相談したところ、心よくこの場所を案内してくれた。その中のこじれた原因というのがB子がたまに不思議な事をいって、デートの雰囲気を壊したりするので、困っていたし、そのせいで喧嘩も多かったというのだ。


 別段試す意図もなかったが、C男は、B子の気持ちが理解できるかも知れないと思い、こうした場所を尋ねることにした。というのもC男は一切そういうものを信じておらず、恐怖心という物さえ持ち合わせていなかった。B子にはいっていなかったが、わりと無感情なのだ。

 B子と付き合うようになったのだって、幼馴染にいい子だと紹介されたからだった。


 A男は、いろんな部屋を案内する。B子は、しかし彼の案内する部屋のどれにも、「何も感じない」

「ここじゃない」

 という。A男は大学でも人気ものだし、自身の女癖意外は誠実でまともな奴なので、C男は、顔には出さずともB子の事を疑い始めていた。


 ふと、二回のある部屋に案内されたころ、といっても通りかかったころにB子がいったのだ。

「この部屋よ、この部屋で何かあった、それも、ごく最近」

 そんな事をいいだした。


 A男はいう。

「いや?そこには何もないはずだけど」

「ううん!!絶対ここよ」

 A男は困惑し、C男は

「君らしくない、なんでそんなに強くいうんだ」

「そ、それは……」

 おしだまるB子

「なんか証拠でもあるの?」

 とA男


 B子は突然目をつぶった。しばらくしていった。

「だれかが、私に呼びかけている……ここで殺されたといっている」

 びっくりした顔でB子を見つめるA男。

「お、おい!ちょっと」

 C男が止めるのも聞かずB子は中に入っていく、そして床のコンクリートが砕けた場所で、コンクリートをどけて、ひとつの真新しい注射器をとりだした。

「これ、警察に提出すれば犯人が……」

「うわっ!!!」

 B子がそういった瞬間に背後でC男の叫び声が聞こえた。A男が、何か光ものを手に持っている。

「くっそ……どいつもこいつも、C男、悪いな……そいつは“本物”だ、お前たちは処分しなきゃいけない、なにせやくざのても借りたんだ、これがばれたら迷惑がかかるし、俺もただじゃすまねえ」

「A男、何のつもりだ……」

 A男は、手にナイフをもっている。C男は首を切りつけられていた。

「去年ここで死んだっていう男なあ、俺が殺したんだ、クスリを一緒にやってさあ、今の今までばれなかったんだ、なのにさあ、B子、どうして気付いた?まさかお前に本当に霊感があったなんてなあ、俺はなア、俺にないものを持っている人間が嫌いなんだ」

 B子は、立ち上がりいった。

「声が聞こえたの、本当にあなただったなんて……彼は、私の友達だった、だから、調べて……C男ともそれで付き合うようになった、あなたに真相を聞くために」

 A男はケタケタと笑い声をあげた。

「あはははは!!じゃあ俺たちの関係もしっていたか、ここで死んだ奴と俺との関係を」

「“彼”は優しかった、人間としてもできていた、けれどゲイで、そのことをずっと隠していた、彼氏ができたといっていたけど、やっぱりあなたの事だったのね、彼氏が金をせびるとか、ドラッグを進めるとか、ずっと周りに相談していたわ、ここに来た事、いままでの音声、録画して私の親友におくってあるから、私を殺しても無駄よ」

「くそが!!だから女ってやつは!!」

 A男は叫びながらナイフをもって、B子にめがけて突進する。ヨロリ、とその前で男が立ちはだかる。

「やめて!!!!」

 と叫ぶが、C男は、B子にむけていった。

「すべてわかっていたよ、それでもよかったんだ……」

 グサリ、と音がして、すべてを諦め目をそらしたB子、しかし、やけに静かなので、前を向き直る。すると、A男は、背後から―見知らぬ男に背中を突き刺されていた。そして、C男は腰をぬかしてその場にへたり込んでいた。


 A男はそこに崩れ去る。見知らぬ男がその姿を現した。B子がみた男は、ここで死んだはずの彼女のゲイの親友D男だった。彼は叫んだ。

「俺はずっとこの時をまっていた!!」



 「霊感があってさ、自分の死を悟ってね、それで逃げ延びていたんだ」 

 とある囚人が、こんな話を、面会に来た女性に話していた。

 「そうね、D男」

 女性は立ち上がる、それは少し大人になったB子だった。

 「ああ」

 だが目の前に座る男は、ずいぶん年老いた人間で、見るからにみすぼらしい男だった。B子はわかっていた。彼はD男ではない。D男がとりついてしまった男なのだ。あの時、助けてくれた名前もない浮浪者だったのだ。


 調べると、どうやらあの廃病院では精神病の患者をうけいれていたという。そしてあの浮浪者もその患者で、家族いわく“幽霊をみる”とよくいっていたらしく、まるで支離滅裂な言葉ばかり話して、会話が成立しなかったのだという。それから数年たち出所してその後、親族に引き取られたという。


 もともと友達の少なかったB子。D男と仲良くなったのは、ともに霊感持ちであることをいわずとも悟っていたからだった。いまではC男と結婚し、幸せな家庭を築いているという。D男は、彼氏、つまりA男の事を”かわいそうな人”ともよく語っていたし、霊になっても語っていた。D男の中に自分にないものを見つけ、初めは真剣につきあったが、段々、周囲からの目線がきになりだし別れを切り出したが、D男は、彼の本心を見抜いてしまった。それがよくなかった。


 A男は別の地域に住んでいて、昔いじめられていて、自分に自信がなかった。だからありとあらゆる人間と仲良くしたり自分には持ってないものを持つ人間に憧れていた。そしてそれでトラウマを克服しようとしていたのだ。くしくもそのトラウマというのが、彼のもともと住んでいた地域では霊感のある人間や霊媒師の家系の人間などが多く、生来の彼の性質“見栄っ張り”が見抜かれていて、かつ霊感がないためにいじめられていたのだという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心霊スポット事件 ボウガ @yumieimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る