第27話 ブサイクな種族

 サラは、先ほどの淫靡な状態から少し落ち着き、真っ赤な顔して俺に近づいて来た。


「智也様、すいませんでした。大変おみぐるしい姿をお見せしまして...」


 サラが真っ赤な顔で土下座をして謝ってきた。まぁ確かに恥ずかしくなるだろう。一番の絶頂期はお尻を突き上げて、喘いでいたからな。でもこうやってみると、目じりの下がっておっとり顔のサラは非常に可愛い。


 また俺の女性の奴隷たちの中で一番背が高いが、一番おっとりとしている様に見える。それと一番...敏感なのかもしれないな。


 ただ、先ほどのエロ全開のサラに、狂喜乱舞したのは俺の息子様であった。


 まだ、先程のサラの姿をどうしても思い出し、今の姿とのギャップで、股間が膨れ上がってしまう。一生懸命、手で隠しているがバレバレの様だ。


 サラは「と、智也様、その大きくなっている男根様は...私を見てですか?私は智也様にとって少しでも魅力的に見えるのですか?」と聞いてきた。


 更にサラは、「先ほど、智也様の前で尻を突き上げて、にやついた姿などを他の男性の前で行えば、問答無用で首を落とされていたでしょう。こんな私の行いを許して下さるのですか?私の姿を見て興奮して、下さるのでしょうか?」と、涙ぐみながら聞いてきた。


 凄くすまなそうな表情を浮かべながらも、一途の望みにかけるかのような表情で、俺の答えを待っている。俺も恥ずかしいが、サラにきちんと言葉で伝えよう。


「う、うん。サ、サラ、サラはとても魅力的だよ。さっきのサラの姿に興奮したし、今でも思い出すだけで、その、大きくなってしまう。そして、そ、その言いづらいけど...」と言葉を濁すと、サラが「言いづらいけど...の後を教えて頂けませんか?」と、俺の前で跪き懇願してきた。


 凄く目が大きく、吸い込まれそう。本当にメルやクラリスとは違う魅力を持った娘だ。メル以上にオドオドしている様な気がする。


「その...俺が主として暮らしている世界と、ナイメール星とでは美醜が逆転しているんだよ。だから、その..ナイメール星で仮面やフードで容姿を隠している人たちの方が、俺に取ったら非常に魅力的に見えるんだ」と伝えた。


 俺の話を聞いた周りの者は、騒然とした。


 ただ俺は気が付いていなかった。俺は皆の前で、美醜が逆転をしている話をしたことで、遠巻きで聞いていた2人の運命が、大きく変わるきっかけになったことを。


 遠巻きで聞いていた2人は、お互いの顔を見合わせ、息の合った足取りで「洞窟王」のリーダーであるテートの所に向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺の美的感覚を聞いたサラは、少しほっとしたような表情に変わり、更に俺の傍に近寄って来た。


 俺の耳元で「そ、その言いづらいのですが、智也様との奴隷契約により、私の身体は性欲が100万倍にアップしました。姐さんの後で結構です。ど、どうか私にもご慈悲を頂けませんか?あなた様なしではもう...生きられない体と心なのです」


 そう耳元で俺に話しかける声が震えている。ただ、吐息はとても熱い。すごく恥ずかしいのだろう。顔が真っ赤だ。そうだよな。簡単に言えば「私として欲しい」と言っているんだから。


 更にサラは、「それまでに発狂し、智也様に抱き付いたりしたら、コロさんの入れられていたという檻に入れて下さい...。うん♡それもいいかも♡」と何かあさましい姿を想像したかのように、ぶるっと身体を震わせ、一人艶美な笑顔を浮かべている。


 ちょっと引く。いや大分かな。ドMか!


 クラリスと同じくらい性欲が強そう。そしてちょっとアブノーマル系かもしれない...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「インリンは大丈夫そうか?」と聞いてみた。


「大丈夫じゃないけど、なんとか耐えているよ。でも、今まで以上に旦那が恰好よく見えて仕方ないんだ。それに、旦那に話しかけられるだけで、身体がほてって来るんだ」と言った後、俺を見る目が捕食者のそれに変わったので、そーとその場から離れた。


 そんな真夜中なのに、いや、真夜中だからかもしれないが、エロ話満開の俺たちの元に、スルスとテートが近づいてきた。  


「インリン。結果はどうあれ、私たちはあなたに救われたわ。本当に感謝をしています。そして今まで、本当にごめんなさい。  


 2人は、いや「洞窟王」や「闇蛍」のメンバー達も、「一獲千金」の者たちに謝って来た。


 更にスルスとテートから、ここケインズ村では外見上を理由に、食堂や宿屋などでの差別を廃止することを約束してくれた。そこにはビッグハムも協力してくれる様だ。


 この町は採掘と、採掘作業を支える奴隷によって成り立っている。そしてスルスやテート、更にビックハム達3人は貴族である。この3人が動けば、町民や役人は文句が言えない。文句を言えば町を追い出されるだけだ。


 どうぞ、他の町で暮らして下さいと...。


 スルスやテート、ビッグハムからの意外な申し出を受けて、「一攫千金」のメンバーたちは大喜びだ。深夜とは思えない賑やかさとなった。麻璃奈たちも駆けつけて、豚汁やエールを無償で身分に関係なく振舞っている。もうお祭り騒ぎだ。


「智也君、はい♡」と、俺にも豚汁を笑顔と共に手渡してくれた。


「お、美味しい。こんな美味しい豚汁初めてだよ!」


「うふふふ♡いっぱい食べてね♡やっぱりいいわね。大好きな人の為に料理を作るって。本当に幸せな気分になるわ。その食べっぷり。本当に美味しそうに食べてくれる。本当に幸せ♡」


 そう俺の食べる姿を、うっとりとした表情で見つめる麻璃奈。「でも...」と、話を切り出して来た。


「日本酒が作り出せないのよ。お米が無いから。こっちでもお米を作りたいから種籾タネモミを買ってきて欲しいの。それと、すぐにでも日本酒を使いたいから大量に日本酒も。ああ後、みりんも欲しいわ。出来たら醤油も」


 そう言ってきた。メルやインリン、サラ、それにクラリス達に、買い物の仕方を教えないとな。まずは俺が怪しまれない程度に、今頼まれた物を買って来よう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 麻璃奈と話していると、インリンとテートが俺の傍に近寄って来た。「テートがお願いしたいことがあるって」と、俺にテートを引き合わせた。テートは髪を、後ろで1つに束ねている。


 体型はくびれもなくふくよか。一重でたらこ唇と、こちらの世界では美人の部類なのだろう。


 そんなテートが俺に向かって「智也様、どうしてもうちのチームの2人が、あなたの直接の奴隷になりたいと申しております。無償で治してもらった恩義を、今後の人生で直接お返ししたいと申している者がおりまして...」と言ってきた。


 俺の元に連れてきたのは、ジャネットとベレッタと言う、全身をフードで覆い、顔を仮面で隠している者たちであった。この2人は俺とは面識がない。


 ジャネットは、「智也様ありがとうございました。あの落石が起こった時は、もう終わりだと。でも...やっとこ生の苦しみから解放されると思いました」と、俺に伝えてきた。


 俺に感謝を述べつつも、少し寂しそうな表情を浮かべた。


「私たちの怪我は多分、エリクサー並みであったと思います。特に私の場合、右脚がもげて、首から下の感覚はありませんでした。智也様の能力を譲渡されたクラリス様が、私たちを元の状態に戻して下さりました」


 凄く礼儀が正しい。そして、凄くフードから見える手は細くしなやかで美しい。でもフード越しにでも何となく分かるほど、胸は膨らんでいる。そんなジャネットの姿をぼ~と見とれていると、ジャネットは話を続けてきた。


「私たちの種族は、非常にブサイクな者が多いと言われております。ですが、智也様は美醜の感覚が逆転なさっていると、はっきりと聞かせて頂きました。それなら私たちにも機会があると思いました」


「でもよく聞こえたね。2人は俺の傍には見かけなかった様な気がするけど」


 何気ない俺の言葉に、「私たちは少し離れたところにいましたが、常に智也様の会話には耳を傾けていました。私たちの種族は耳が良いので...」


 そう、俺の反応を伺いながら、ゆっくりと身に着けていたフードを脱ぎ捨てた後、俺の目の前で仮面を外し、耳を覆っていた髪を捲し上げた。


 耳が俺よりも長く、その先端が少し尖っている。


「ま、まさかエ、エルフ、なのか?」


 俺の驚いてあげた声にびくっとして、2人は俺を怯えるような目で見つめる。俺に外見で叱られると思っているんだろう。


 は、初めて見た。小説などで読んだ通りだ。2人とも体の線が細く、ガラス細工のような美しさだ。本当に耳が尖っている。


 人族の美しさとは全然違う。芸術品の域。信じられない美しさだ。美の神様みたい。何だか畏れ多い感じがする。


 ナイメール星には、地球のような質の高い化粧品が存在しないようだ。麻璃奈からも、化粧品の購入を頼まれた。


 せめて化粧水だけでも欲しいと、お気に入りの化粧水を頼まれた。そんな化粧品もろくに無いこの国で、ここまでの美しさを誇っているなんて...。


 言葉を失ってしまった。


「ほ、本当に申し訳ございません。勝手に仮面を外してしまって」と2人は、地面にひれ伏して慌てて仮面を付け直そうとしてきた。


「ご、ごめんね。大声を出してしまって。エルフ族を見るのが初めてだったから。そ、それに。2人のあまりの美しさに驚いただけだよ。本当に2人とも綺麗だ」


 そう素直な言葉が、恥ずかしげもなく飛び出してしまった。もう遠慮するとか抜きにさせるほど美人。


「そ、そんな。綺麗だなんて言葉、始めて言われました」


 2人は困惑した表情を浮かべ、人生の中で初めて言われた「綺麗」という言葉にどう対応していいか分からず、困っている様であった。


 テートから話を聞いてみると、瀕死の重傷を負った二人は、救い出してくれた俺に深く感謝をし、一生をかけて恩を返したいとテートに頼み込んだようだ。


「ジャネットとベレッタには、「美醜の逆転した感覚を持つ智也様なら、私たちを受け入れてくれるチャンスがあるかもしれない」と申しております」


 するとジャネットが「智也様の傍で少しでも恩返しがしたい。不躾ブシツケな言い方ですが、こんな身体でよろしかったらいくらでもお使い下さい。どんなことでもいたします。傍で恩を返させて下さい」と、涙を浮かべ俺の脚元で懇願してきた。


 ありがたい申し出だが、キャパオーバーを起こしそう。いや起こしている。このままでは間違いなく腹上死をしそう。でも...クラリスによってすぐに生き返らされるだろうし...ある意味、過酷な人生が待っていそう。


 嬉しい申し立てだが悩んでいる俺に対して、テートが2人に助け舟を出すかのように、「この2人はきっと智也様のお力に立てると思います。スキル効果は(小)ですが、人形作成師と傀儡子カイライシです」と言ってきた。


「そんなテートさん、いいのですか?すごく採掘作業で、役に立ちそうなスキルじゃないですか?」と俺がテートに聞いた。


「智也様、さん付けは勘弁して下さい。確かにスキル効果は(小)ですが、危険な場所を採掘する時に非常に有効なスキルを持つ2人です」と言った後、「ですが...」と話しを続けた。


「ですが、2人は強い思いであなた様に使えたいと申しております。2人の想いを大切にしたいと思います。それにあなた様の奴隷となったインリンやサラには、私たちは今まで酷い行いをしてきました。せめてもの気持ちです」と、テートは深々と頭を下げてきた。


 何だかすごいことになってしまった。メルと出会ってからまだ3,4日しかたっていないというのに6人の美少女奴隷を持つご主人様になってしまった。


 俺がぼ~としていると「ご主人様!ジャネットとベレッタの契約をお願いします。ライメイ様がお呼びですよ!」とメルが教えてくれた。


 本当にもう帰らないとやばいのに...。契約をしたらいったん地球に帰ろう。本当に...。

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