第9話 主よ、私をお迎えに来て下さったのですね...。

 商店街から帰って来て、メルの生い立ちを聞いた後、メルからクラリスという奴隷を救って欲しいと言われた。その為、俺の部屋から扉をくぐり、ケインズ村につながる洞窟にやって来た。


 日本の時間で今は午後3時ほどだ。


 確か...ビッグハムの奴隷商会から、奴隷を一人貰えるはずだ。


 ビッグハムに、メルの扱いに対して注意をしたところ、「好きな商品奴隷を一名ご用意いたします」と言われた。それで、クラリスを貰おうと思う。


 メルに聞くと、「クラリス姉様の価値は、回復魔法が使える程度。それも効果は小。ご主人様がクラリス姉様でいいと言えば、ライメイ様は喜んでクラリス姉様を差し出すでしょう。私たちは他の奴隷たちよりも安いですから」そうメルが、俺に寂しそうな表情で伝えた。


 そんな寂しそうな表情をするメルに、「俺の中で二人は、手が出せないほど高価な二人だよ」と照れながら伝えた。


「ご主人様...ありがとうございます。その言葉をそっくりとお返しさせて下さい。あなた様が、私を傍にいさせて下さることすら奇跡的なことですわ」


 俺は恥ずかしくなって、メルからの視線をごまかすかの様に、「さあ、クラリスさんを迎えに行こう」と、メルに明るい口調で伝えた。


 ただ...この洞窟からケインズ村まで2時間ほどかかるんだよな。今度、原付でも調達しようかな。マジックポーチに入れば、持って来れそうだし。


 まあ今日は歩くしかないか。原付もないし。そんなことを思っている暇があったら歩かないとな。ぼやぼやしていると日が暮れてしまう。


 そんな俺の心配を知ってかメルは「ご主人様、失礼します!」メルは俺を、お嬢様抱っこした。「メ、メル⁉」俺は照れ臭いのと、いきなりの行動に驚いてしまった。


「ご、ご主人様。ケインズ村までは、かなり距離があります。わ、私がお運びいたします」


 メルは俺をしっかりと抱きかかえ、自分の目線の高さに俺を合わせた。すごく顔と顔の距離が近い。メルの吐息が聞こえる。いや...荒々しい鼻息が聞こえる。「メ、メル大丈夫⁉、そ、その興奮しているのか?」


「はっ!ご主人様の素敵なお顔が、あまりにもお近くで見れた為、幸せ過ぎてあちらの世界に行く所でした。大丈夫です!夜まで、いえクラリス姉様をお助けするまでは、何とか、なんとか我慢を致します!そ、そのまた今夜、ご慈悲を頂けますか...?」


 少し怯えるように伺うメルに対して、「お、お願いします。こちらこそ」言うと、「ありがとうございます。ご主人様!メルはもう...ご主人様に毎日抱きしめられないと、生きていけない身体になってしまいました♡」そう俺に、恍惚とした表情でメルは伝えてきた。


 出会ってからまだ、2日ぐらいしか経っていないはずだが、凄く色っぽい表情をすると思う。これも性欲100万倍の効力だろうか...。


「ご、ご主人様。もし、万が一でも移動中に落下したら危険です。メ、メルの首に両腕を回し、しっかりと私に抱きついて下さい。嫌でも...我慢して下さいね。ご主人様♡」


「全然嫌なことは無いよ、メル。じゃあ失礼するね」そう言って俺は、メルの首に両脇から腕を回し、しっかりとメルを抱きしめた。


「その...駄目です。もっとです。もっと強くです、ご主人様♡...うぅん♡。そうです!激しく強く抱きしめて下さい。その...緩いと落ちてしまいますから♡落ちたら痛い痛いです♡」


 凄く甘い声を出す。ぞくぞくする。


「こほん!」落ちてしまうのなら仕方ない。しっかりとメルを抱きしめないとな。俺が落ちてメルが責任を感じたらいけないからな。


 ただ俺の腕が短いため、メルの顔がさっきよりも更に近づいた。きめ細やかな肌がしっかりと見える。いい眺めだ。


「ご主人様の吐息を感じます!ずっと熱い目線で、私を見つめてくれています♡愛しておりますご主人様♡」と、ふにゃけ顔になったメルの顔がすごく可愛い。


「ご主人様!これが美男子様抱っこです!ナイメール星の女性のやりたいこと第一位です!メルは、メルは幸せ者です!」


「美男子様抱っこ?なんだそりゃ?」


 メルは、俺を抱きかかえたまま泣いてしまった。うーん凄くシュールだ。まあ...メルが喜んでくれるから、よしとするか。「じゃ、じゃあメル、頼まれてくれるかい?俺をビッグハムの奴隷商会まで、連れて行ってくれるかい?本当に重くない?」


「全然大丈夫です!幸せです!こんな言葉のやりとりも、憧れていました!ではご主人様、出発いたします!」


 そう言うと、ものすごいスピードでケインズ村まで走り始めた。本当に身体能力がアップしたんだな。


 あとで聞くと「本気で走ればケインズ村まで1分で着くけど、少しゆっくり目に、5分かけて走りました!」と言った。美男子様抱っこを、少しでも長くやりたかったと言ってくれた。うーん何とも言えない。


 メルに連れられ、男性専用出入り口からケインズ村に入った。相変わらずケインズ村に出入りする為の、女性専用出入り口は混んでいる様であったが、男性専用出入り口はガラガラだ。


 俺は、男性専用出入り口手前でメルから降りて、受付の女性に「村に入りたい」と告げた。門番の筋骨隆々の女性が「奴隷はお一人ですか?大丈夫ですか?」と、本気で心配してくれている様であった。


 昨日もそうであったが、奴隷のメルを見てもひどい言葉を投げかけたりはしない。この門番の方はなかなかいい人で、揉めることもなくケインズ村に入れた。


 ケインズ村に入ってからは、歩くことにした。前回の様にメルを見て罵声を浴びせたり、石を投げるような行為はない。


 メルの首元には奴隷を示す、チョーカータイプの首輪がなされている。メルは俺の奴隷という事で、メルにも侮辱的行為を発したり、行ったら処罰の対象となる。


 特に普通の首輪ではない。特別にお金を払った首輪だ。その者への主人の愛情が伝わってくる。手を出したら重罪に問われるだろう。


 特に外見至上主義のナイメール星において、俺の外見ならば三大公爵家、いや、王家以外は手を出せないだろうと言ってきた。


 もう信じられないが、メルがそういうのなら、信じてみようかな。


 今はそんなことよりも、クラリスを救う方が先だろう。


あとメルには、ケインズ村に入ってからは、俺のお古の帽子をかぶせた。人目を避けるためにメルが欲しいと頼んできたからだ。


 俺はメルに、「異世界で使用していたフードの代わりに、新しいパーカーを買いに行こう」と誘った。しかしメルは「もしよろしければこの帽子を私に下さい」と、俺の使いこんだ帽子を見つめて、真剣な顔で訴えてきた。


あと、クラリスお姉様用にと言って、俺のお古の伸び切ったパーカーも欲しいと言ってきた。


「いいけど、俺のお古なんかを着たがるのかな?何だかそれこそ新しい洋服を用意してあげた方がいいだろう?」と言ったが、「このお古感がいいのです!男性の衣服やアクセサリーを貰うが、ナイメール女性のやりたいこと第2位です!」と力説された。


 何でも男性の愛用の服や、帽子、ハンカチなどを貰う、共有する、交換することが憧れらしい。だからメルは俺のズボンとTシャツを喜んで着たんだ...。


「私の様に男性の着ていた衣服を着れるものは、まずいません。サイズが違いすぎます。私の様に身体がひき締まっており、メリハリのあるプロポーションを持った者のみです...」


 これって...嫌味で言っている訳じゃないんだよね?恐ろしい土地だ、ナイメール星。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「奴隷を一人、くれると言っていたので貰いに来た」そう言ってビッグハムのお店を訪れた。


「もちろんです。発した言葉に二言はありません。どうぞこちらに」と俺たちを特別室へと通してくれた。


 ビックハムは俺をソファーに座るように促し、俺の前に高級そうなカップを差し出した。メルは当たり前のように俺の後ろに立っている。


「メル。俺の横に座るんだ。誰が立っていなさいと言った⁉」


 メルはびくっとして「は、はい...ご主人様。で、で、でも...」


「大切なメルが粗末な扱いをさせられているのが耐えられない。ビッグハムいいだう?それとも駄目なのかい?」


 そう、ビッグハムをちらりと見ると、ビッグハムが震え出した。この国は男性と外見至上主義だ。特に外見の良い男性の奴隷を傷つければ、それ相応の罰を受ける羽目になる。


「す、すみませんでした。す、すぐに飲み物もお持ちします。メ、メル様、ど、どうぞお座り下さい!」


 ビッグハムは、今までのことを忘れたかの様に、手のひら返しでメルの前で土下座をした。


 まあそこまでして欲しくはない。ビッグハムのボンテージの隙間から、見えて欲しく無いものが見える。本当に勘弁してくれ。


「メルごめんね」とメルを隣に座らせ、頭を優しく撫でた。だいぶ落ち着いた様で「本当にありがとうございます。私の為にああいう発言をして下さって...。本当にご主人様は、お優さしゅうございます♡」そう言って目をキラキラと輝かせて俺を見つめて来る。


 テーブルの上には、山のようなお菓子が積まれた。ここまでしなくてもいいのだが。まあ1つ2つは後で頂こうかな。それよりもクラリスだ。今回はクラリスを迎えに来たんだ。


「ど、奴隷達を見に行かれますか?それともこのお店で一番、高価な者をご用意いたしましょうか?」


 高価な者って...恐ろしい人物が登場するってことじゃないか?


 俺が迷っていると勘違いしたのか、ビッグハムはこの奴隷商会一の美女について、説明を始めた。


「それはそれは美しい者です。非常にふくよかでくびれなどなし。もうそれは天然の肉のコートを着こんでおります。抱かれ心地は、もう肉の底なし沼にはまった感じがするでしょう。そして顔は...」


 ビッグハムは営業トークを始めた。肉の底なし沼って...死んじゃうじゃん...。


「分かったもういい。もらいたい奴隷は、もう決まっている。クラリスを呼んでくれ。クラリスだ」


「へっ⁉」


「今、何と...おっしゃいましたか?」


 ビッグハムは、凄く呆気にとられた顔をしている。何でそんな奴隷をわざわざ...と言う表情だ。


「ビッグハム、クラリスだ!もう言わないよ」


「ひ、分かりました!」


 ビッグハムは急いで、クラリスを自分から呼びに行った。


 メルは「ご、ご主人様。ほ、本当によろしいのでしょうか。一番人気のトンソックーが、無料で手に入るんですよ!ナイメール星一の美女と言っても過言ではありません。私たちみたいに、くびれなどない完璧なプロポーションですし!」


 うんざりとする表情で、「いらない」と呟いてしまった。維持費に幾らかかるんだよ。それに俺は「メルとクラリスがいい」と、心からの声を伝えた。


「ご、ご主人様。そんなストレートに言われると,,,理性が崩壊してしまいます♡もうご主人様。大好きです♡」


 更にメルは俺の胸に深く顔をうずめてきた。メルの呼吸がさらに激しくなってきた。早くクラリスを引き取って帰らないと。メルの理性が暴走しそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 待つこと20分。廊下の奥の方からドス!ドス!ドス!と、特別室に近づいてくる音が聞こえた。


 ドアが開くと、汗だくのビッグハムが「大変遅くなりました。ぜーぜー」と息を切らしている。相当急いだのだろう。至る所から汗が流れ落ちる。そんなに急ぐと、膝を壊すぞ...。


 更に今までは気が付かなかったが、後ろにもう一人いるようだ。


 すっぽりと全身にフードを被った者が、唖然として立っている。まるで何で私がここに呼ばれたの?という態度を取っている。


「わ、私に何か御用でしょうか...。そう怯えるように全身を、フードで隠しているクラリスが俺に聞いてきた。多分、目の前にいるメルにも気が付いていないだろう。


 凄く怯えている。でも、その声はすごく透き通り美しく、安らぎを与えてくれる。是非全身を拝めたい。


 そう思っていると、「何をしているんだいクラリス!奴隷の作法を忘れたのかい!お客様が目の前に現れたら、フードを取って全身をさらけ出すんだよ!」ぜーぜーはーはー言いながら、すごい剣幕でクラリスに言い放った。


「でも、私が脱いだら皆さんの目や気分が悪くなるんじゃ...」と、ビッグハムに怯えながら聞き返す。


「そんなことは分かっているよ。今回のお客様はお前を希望してるんだ。早くフードをお取り!」と、ビッグハムはクラリスを怒鳴った。


「は、はい」


 そう不安いっぱいの震える声でクラリスは、ビッグハムに返事をした。少しでもフードを羽織っていたいかのように、ゆっくり、ゆっくりと、その全身を覆っているフードを脱ぎ始めた。


 パサリ


 クラリスを覆っていたフードが、床に落ちた。


「うわ!」俺は驚いて声を出してしまった。


 クラリスは何も身につけていない。すっぽんぽんだ。す、すごい...。本当にメルが言ったとおりの、メリハリのある体をしている。恥ずかしいのか、顔を見られたくないのか下を向いている。


 しかしその見事なプロポーションは丸見えだ。もう視線をそらせることが出来ない。食い入るようにガン見してしまう。隣にメルがいるのに。分かっているのにクラリスの見事すぎる裸体を見てしまう。


 プロポーションはメルに劣らない。身長も同じくらい。お胸はメルよりも豊かかもしれない。そして見事なくびれと、長い脚を持っている。


 俺が叫び声をあげてから、クラリスは震えている。怒られると思っているのだろう。メルと同じだ。


「ご、ごめんよ、クラリスさん。そんなに怯えないで。大丈夫だから。まさかフードの下に何にも着ていないとは思っていなかったから。本当に、ごめんね」


 そう俺が言うとクラリスは、「えっ」と言い、視線をあげた。


 お互いの視線が交わった瞬間、予想外の美しさに息を呑んだ。


 それは二人だけの深い共感を生む瞬間だった。


 やばい、メルの言ったとおりだ。すごく綺麗で清楚な印象を与える。まるで聖母様のような慈愛に満ちた顔立ちだ。こんな美人がこんな場所にいるなんて信じられない。でも、これが現実だ。


「すごく綺麗だ」俺は自然と声が漏れてしまった。それと同時にクラリスからも「本当に素敵なお方。外見もそうだけど、内面からにじみ出てくるオーラも...。ま、まさか、主が地上におりて来て下さったのですか?」そう呟き俺を見つめた。


 その驚きは、時間が止まったかの様な、特別な瞬間を2人の間に生み出した。2人は何も言葉を返さずに、ただただ見つめ合っていた。


「ご、ご主人様。わ、私を忘れないで下さい!私もご主人様を愛しております。傍におります!」


 震える手で、不安げな表情をしたメルがぎゅっと俺の手を握りしめてきた。


「ご、ごめんよメル。び、びっくりして、メ、メルが言ったとおりだ。もちろん、メルと俺はずっと一緒だよ」


 そうメルに伝えると、メルは怯えていた表情が和らぎ、ほっとした表情をみせた。


 その後メルは、クラリスに対し「お姉さま!メルです!お姉さま!」と大きな声で呼びかけた。


「メ、メル⁉まさかメルなの⁉し、心配したのよ!よかった...メル、生きていたのね。本当に良かった...。馬車が壊れた後、メルが帰って来なくて心配したのよ。てっきりもう会えないかと思っていたわ...」


 寂しげな表情をメルに見せた後、はっとした表情に変わった。


「な、何で、メルがそこにいるの...。何で主の様なお方の傍に、あなたが座っているの...?分からない事ばかり。メル、どういうことなの?」


 クラリスは自分が裸という事すら忘れ、メルをじっと見つめている。


 ただ...俺はクラリスの裸が丸見えの状態。おっきな2つのお胸が、クラリスが発する一言一言に反応し、ブルンブルンと揺れる。


 こんな緊張感漂う場所で不謹慎かもしれないが、俺の股間も少し元気になりつつある。メルにばれたら嫉妬されそうだ。平常心であり続けないと...。


 そんな俺の心配をよそにメルは「お姉さまには、いつも救って頂きました。今度はメルが助ける番です!私のご主人様を連れてきました!ご主人様はメルを受け入れてくれました!お姉さまの事もご主人様は、必ず受け入れてくれます!一緒に幸せになりましょう!」


 メルは自分の思いを、クラリスに向けて力いっぱい伝えた。


「メ、メルを受け入れた...?私を受け入れる?意味が分かりません。そんな絶世の美男子様で、主のようなお方が...メル、嘘をついてはいけません!嘘は心を汚くしますよ!メル!」そう、クラリスはメルを諭した。


「こらクラリス!智也様の奴隷、メル様に向かってなんて口の利き方をするんだい!メルと呼び捨てにするんじゃない!メル様とお言い!」そうクラリスに向かって大声で叱りつけた。


その後、ビッグハムはメルに向かって「すみません。メル様。教育がなっていないばかりに、不快な思いをさせてしまいまして。私が代りに謝ります」とビッグハムは、メルに対して深々と土下座をして謝った。


「そ、そんな、ライメイ様がメルに対して土下座何て...?じゃ、じゃあ本当にあなたはメ、メル、いやメル様のご主人様なのですか?」


 そう、疑い、怯える様な瞳で、俺を見つめてきた。何が何だか分からないなりに、俺がメルを受け入れたことを認めた様だ。ここではっきりと俺の意志を伝えて、俺達のもとに来てもらおう。


「そ、そうです。クラリスさん。メルを引き取りました。そしてメルを愛しております。奴隷としてではなく人として。俺は外見で人の価値を決めるこの国で、サゲズまれている者を救いたい。メルに相談をしたら、真っ先にあなたのことを心配しました。僕と、僕らと一緒に生きてくれませんか?」


 メルも、俺とクラリスとのやり取りを見守っている。


「私が、あなた様のような高貴なお方と一緒にですか...?私が傍に居てもあなたは気分を害さないのですか?そんな、そんなお方がこの世に現れるなんて、まだ信じられません。ですが...主が私をお救いに来て下さったとしたら...」


 クラリスは自分自身の中で、決意を決めた様にしっかりと俺と向き合い、床に両膝をつき、手を組んで俺を見上げた。


「ありがとうございます。私の様な身なりでも慈愛の心で受け入れて下さるのでしたら、私はこれからの人生の全てをあなた様に捧げます。これも神のお導きでしょうから...。よろしくお願いします」


 そう言った後、クラリスは、冷たい床に深々と頭を下げた。


「クラリスさん頭をあげて下さい。私はあなたに頼んでいる立場なんですから。では、一緒に来てくれますね?」そう俺が意志を確認した。


 クラリスはさげていた上半身を起こし、両手を組んだまま「はい、主の導きに従い、あなた様にこの身を捧げます」そうはっきりと、自分の意志を示してくれた。


「お姉さま!」そう満面の笑みをしたメルが、喜びを爆発させるかの如く、クラリスに飛びついた。


 さあ一緒に帰ろう。でも...3人も俺の部屋で暮らしたら狭いかな...。


 一気に現実に戻ってしまった智也であった。

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