第6話 ご飯何て、2日に1回で結構です!

 朝、日差しの明るさに導かれるかの様に自然と目が覚めた。何だか暑いな。それになんだか狭く感じる。隣を見るとブランケットをかぶった裸の女性がいた。


「うわっ!」思わず声が出てしまった。そうだ、昨日は異世界のケインズ村に行って、それから奴隷商からメルを買ったんだ。そして戦闘に巻き込まれて...。


 メルが強くなったけど、その代償としてメルの性欲が暴走したんだ...。


 メルは俺にしっかりと抱き付いていた。もう痛いぐらい。メルの胸の柔らかな物体が少し潰れながらも、その素晴らしい形をしっかりと保っている。


「う、うーん。ご、ご主人様!お、おはようございます。す、すみません。ど、奴隷の身分でありながら、ご主人様よりも遅く目覚めるなんて...。あってはならない事です。も、申し訳ございません」


 恐怖で顔が蒼白になったメルは、慌ててベッドから飛び降り、裸のまま床に土下座をして俺に対して謝ってきた。裸体に首に巻かれたチョーカー型の首輪が妙にエロい。


 そのままの姿勢でメルは「昨日はご慈悲を頂き、誠にありがとうございました。メルは幸せ者です。こんなに恰好のいいご主人様に初めてを貰って頂き、更には「愛しているよ」と何度も呟いて頂けるメルは、本当に幸せ者です!」


 深々と裸の恰好のままで土下座をしてきた。顔をあげたメルは本当に幸せそうであった。


「メル、幸せなのは俺の方なんだよ。何度も言ったろう。この世界ではメルはすごく美人なんだよ。それにこんな俺のことを素敵だなんて言ってくれるなんて、こっちが信じられないよ」


「確かにご主人様の世界は、私のようなブサイクが持ち上げられている国の様です。でも私は向うの世界の人間です。何度聞いても自分の外見に自信は持てません。ずっとそういう目で見られてきましたから...」


 辛さが滲み出るような瞳で俺を見つめ返した。


「メル...。そんなことないよ。本当に綺麗だよ。ねえメル。俺はあっちの国でメルが安心して暮らせる国を作る予定だよ。協力してくれるかい?」


 そうメルに俺の思いを告げると、「私が安心して暮らせる国...」と、非常に驚いた表情をして、俺の言った内容を繰り返した。


「あと,メルと同じ様に外見で不幸な目にあっている者達を、俺は救うつもりだ。そして皆が安心して暮らせる場所を作るんだ!」


 俺は彼らに対して力を与えることが出来る。ただしメルみたいに信頼と愛情が100%にならないと力が発揮できないみたいだけど...。彼らも俺に信頼と愛情を寄せてくれるだろうか?


 それと...男性を助けたらどうなるんだろう?大丈夫かな...ちょっと不安だ。まあ今はメルが大事だ。メルの不安を取り除いてあげなきゃ。


「それに向こうの世界で、メルよりも強い者はいないだろう。戦闘が重要視される向こうの世界で、メルはもう馬鹿にされることはないよ」


「それも旦那様がいてくれるからです...でも、そうですね!旦那様!私と同じように苦しんでいる者達は沢山います。特にエルフ族は人族に見下されております。必要な物資も人族から高い値段で買わされています。助けてあげましょう!」


 本当に美しさの概念が違うんだな。地球では美のシンボルとされるエルフがサゲスまれているなんて…。


「そ、それとご、ご主人様!」と言って土下座した状態から顔をあげ、俺の目に切実なまなざしを向けてきた。


 俺の目に映るメルの乳房や、きめ細やかな肌、艶やかな唇等、その全てが俺の欲望を刺激する。メルはそんな俺の反応を確かめているかの様であった。


「そ、その!仲間が増えても私を捨てないで下さいますか!私にその、ご加護を与えて下さいますか?」そう切羽詰まった様な表情で、俺に迫ってきた。


「も、勿論だよ」メルの気迫のこもった言動に押されるかの様に、慌てて返事をしてそのままメルを抱きしめた。


 俺が抱きしめたことによってメルの胸の形が歪んだ。お互いの距離が縮まったことで2人の体温が一気に上昇した。


 メルは幸せそうな表情と行動の一つ一つで俺を向かい入れた。「ご主人様...お慕いしております。私を、私をどうか捨てないで下さい...。どうかご主人様のお傍にずっと、ずーとおいて下さい」と涙を流しながら訴えてきた...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 互いの気持ちを確かめ合った後、メルは穏やかな表情になった。今日はバイトも無い。メルがこの世界に馴染めるように、一緒に街並みを歩いたり、近くのショッピングセンターに案内して、ショッピングを楽しむ予定だ。


 ただまずは腹ごしらえだ。メルにご飯を出した。とわいっても冷凍ピラフとカップラーメンだが。朝からそんな物を女性に食わすなと言われても...俺だよ。ブーちゃんだよ。こってり系が大好きなの。それにこんな物しか冷蔵庫には、入っていないもん。


 メルと俺は昨晩から今日の朝にかけて、ご飯を食べずに激しく愛し合った。「メルごめんね。お腹空いただろう?そうメルに聞くと、メルはきょとんとした顔で「ご飯何て2日に1回程度でした。水も10時間に一度だけでしたし」そう恐ろしい言葉を返してきた。


 今後はメルに3食食べて健康的になるようにと告げた。しかし...。


「ご主人様。お気持ちはありがたいのですが...メルはそんなにお食事はいりません!」ときっぱりと断ってきた。


 理由はなかなか喋ろうとしなかったが、どうやら俺が、今のメルの体型を気に入っていることが原因らしい。メルは、俺が胸が大きくてウエストがスリムな体型を好むことを知り、このプロポーションを維持するために食事量をセーブしたいらしい。


「メルは2日に一回の食事で十分です!たくさん食べ過ぎて体型が変わり、ご主人様に嫌われたくありません!今までの様な野菜くずで十分です」そう言ってきた。


 メルは意外に頑固だから、納得できる理由を言わないと譲らないだろう。何か理由を...と考えるとすぐに解決策はあった。「メル。しっかりと3食俺とご飯を食べてくれ。その、夜、ほら、また...相手してもらいたいし。体力が無いと俺がその、相手がいなくて困るだろう?」


 すると、はっ!としたような表情をした後、「分かりました。その...しっかりと体力をつけます♡いつでもご主人様を向かい入れられるように♡」と、妖艶な微笑した後、食べ始めた。


「ご主人様!このピラフなる物、非常に美味しです!しっかりと味が付いています。肉の味がします!メルは、メルはこんな美味しい料理を食べたことはございません!本当に全部、頂いてもよろしいのでしょうか?」


 そう食べていたピラフのスプーンを置いて、恐る恐る俺に訴えてきた。


「お風呂に入れてもらえ、更には美味しい食事と私のスキルの向上など、ご主人様と出会ってから、私の状況は一変しました。何よりもこんな私を命がけで守って下さり、私をお抱きになって下さるなんて...いまだに信じられません。メルはこんな幸せでいいのでしょうか?すぐにまた元のメルに戻ってしまいそうで心配です」


 そうメルは俺を不安そうに見つめてきた。


「今まで苦労した分が今、幸せとなって戻ってきているんだよ。本当だよメル。さあ次の幸せを見つけに行こう。メル、今度は洋服を買いに行こう!」


 洋服何てご主人様....木の樹皮で結構ですのに...私のために貴重なお金を...そう渋るメルを何とか説得し、外出する流れに持ち込んだ


 このままの流れだと、またメルを抱きしめてしまう。このままだとメルの着る物が一生準備できない。そんな気がした。


 ショッピングモールに行って着替えを買わないと。


 ショッピングに出かけようと思ったが、問題が起きた。メルの着替えが無かった。メルが持っていた服はボロボロで血がついていたので捨てた。今は俺のTシャツと新品のトランクス履いてる。


 駅前のショッピングモールに向かう前に、コンビニでショーツを買ってトイレで着替えてもらおう。メルが傍にいれば、俺がショーツを買っても怪しまれないだろうし。


 その後、近所の衣料品専門店のファッションセンターシロクマでTシャツと下着とスポーツブラ、それにパンツとサンダルぐらい買ってから行こう。


 まず、コンビニとシロクマまでは、俺のTシャツと丈の合わない俺のズボンを履いてもらうしかないな。


「メル、俺の服でしばらく我慢してくれ」そう頼みこんで、俺は自分のズボンとTシャツをメルに着せた。するとサイズはまるっきりあっていないが、メル自身の素材の良さがすべてをカバーし、あら不思議。新鮮で魅力的なファッションに変わってしまった。


「ご主人様!私はこれでいいです!ご主人様のぬくもりと匂いが伝わってきます!」


 気に入ってくれたのは嬉しいけど、外に歩く分には困るな。メルに家着用にあげるからと、新しい洋服を買う事をしぶしぶ了解させた。


 マンションの外に出た瞬間。メルは街の風景を見て驚いている。


「ご、ご主人様!何て大きな都市に住んでいるのですか!何千人といる大都市じゃないですか!出口が見えません!魔物はいないのですか?城壁や柵が見当たりません!草原も見えません!凄いです!メルは初めてこんな大きな都市を見ました!」


 ノーブラだからメルが興奮すると、たわわに実った胸の果実がプルンプルンと揺れる。メルは異世界とのギャップに興奮しまくっている。「ご主人様あれは何なのですか!ではあれは!」とメルは怖がっているというよりも、すごく楽しそうだった。


 そしてすごく体を密着させてきた。すごく照れくさかったがメルは俺に合わせて歩幅を変え、それに加えて、かがんで歩いてくれた。「悪いなメル。腰が痛むだろう?」


「大丈夫です!ご主人様。そ、そんな私のことなんかよりも、そ、その…私と手をつないで下さいませんか?ま、前を歩いてる二人のように...」


 そう言った後メルは、怯えながらもそーっと俺の手を握ってきた。


「メル。自分の好きな服を選ぶんだよ」と言って手をぎゅーっと握ると、向日葵のような笑顔で「はい!」と微笑んだ。


 今でもコンビニに向かうだけで通りすがる人たちが、ありえない二人組を見るような目で俺たちを見てくる。そりゃそうだな。モデルみたいなスタイルと顔立ちを持つ美少女と、ぽっちゃりとしたブサイクな男との対照的な二人組。


 それも仲良く会話して、手までつないでいる。そして美少女の方が小男の歩幅に合わせ、さらに身を屈めて話しているが表情はもう満面の笑み。おかしな光景に見えるだろう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 さあ買い物ミッションの始まりだな。普通に買い物に行くだけだが、もう俺は疲れている。人の目をこんなに痛く感じたのは初めてかもしれない。ただメルは楽しそうだが...。問題が起きることなく無事に買い物が済みますように...。


 そう遠く離れるお地蔵様に向かい、心の中で願う智也であった。

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