第43話 3月攻勢①
西暦2027(令和9)年3月1日 ラティニア帝国西部地域
「全軍、攻撃開始せよ」
魔族の指揮官の号令一過、百両以上の主力戦車を前に並べ、数百両規模の鋼鉄の軍勢が東へ進み始める。上空には十数機の戦闘機が舞い、占領した都市ノルグス以東へ飛んでいく。これだけの規模を前に、セリア率いる親衛隊鉄騎兵軍団は全く物怖じしなかった。
「諸君、我らには下がる場所はこれ以上ないと心得よ!帝国の威光を野蛮なる魔族共に知らしめるのだ!」
AMV装甲車の指揮通信型より、セリアは訓示を発する。機動力を重視し、装輪装甲車のみで構成されている鉄騎兵軍団は、100両近くの16式機動戦闘車に300両もの96式装輪装甲車ないしAMV装輪装甲車、18両の25式偵察警戒車、54両のNEMO自走迫撃砲、36両の26式自走対空戦闘車を有する。特にAMVは遠隔操作銃塔を装備したタイプで、20ミリ機関砲と01式軽対戦車誘導弾を運用可能であった。
「砲兵、支援砲撃開始。着弾を合図に突撃を開始する」
命令を受け、自走迫撃砲は砲撃を開始。120ミリ砲弾を敵機甲部隊へと降らせる。面を制する様に放たれる砲撃は数両の履帯を破砕し、致命的な損害を与える。しかし突撃は止まらず、ついに帝国軍本隊が見える位置にまで迫る。だがそれは想定内だった。
「敵機捕捉。攻撃始め」
直後、擬装されていた陣地より数発のミサイルが放たれる。それは陸上自衛隊より援軍として派遣された第2高射特科群の03式中距離地対空誘導弾であり、思わぬ不意打ちを受けた敵の戦闘機と爆撃機は一方的に撃墜されていく。そしてそれを合図に、各所の茂みやら擬装陣地に伏せていた部隊が飛び出る。
「撃て!」
数十門の105ミリ砲が火を噴き、敵戦車の真横にAPFSDSを叩き込む。履帯や転輪を砕かれて行動不能になった車両はまだマシであり、砲弾が装甲を突き破って弾薬庫にまで届いた車両は、文字通り砲塔が誘爆で吹き飛ぶ。後続の装甲車は先頭に激突したり混乱をきたし、そしてそこに対戦車ミサイルが襲い掛かる。
「突撃ぃーっ!」
AMVの後部ハッチより降車した歩兵達は、日本より供与された89式小銃を手に突撃を開始。20ミリ機関砲の支援射撃で慌てふためく魔族兵士に向けて吶喊し、5.56ミリ銃弾を撃ちながら攻め込む。敵兵もカラシニコフ自動小銃を手に応戦するが、戦技においては槍を用いた戦闘の技量が高い帝国軍に利があった。
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