魔法中毒勇者の治し方

スクール  H

fil.0 プロローグ

ー 魔法中毒 ー


魔法中毒:一定期間に一定以上の魔法を使い、その後 一定期に間一定以上の魔法を使わなくなった時に起こる中毒症状のこと。


この中毒症状になった者は、自分の中にある魔素を出すため、本人の制御ができないまま魔法を発動させてしまい、周囲に多くの被害を出す。


しかもこの中毒症状には治す療法がない。症状を抑えることしかできない。


本来、この症状は一般人がなることはない。


この中毒症状は魔法使い、とりわけ上位の人々が陥りやすい。


だからこそ厄介だ。


魔法が放たれるたびに周囲の建物は崩れ、 多くの負傷者も出す。


唯一他の中毒症状と違う点は、魔素さえ出し尽くせば、魔素が回復するまでの期間は中毒者も平常に戻るということ。


さらに本人が眠っている間は、ある程度症状も治まるという点だ。


とはいえ、症状が治るのも半日程度である。その後数日間はまた、魔法を打ち続けてしまう。


さて、そんな魔法中毒症状が存在する、ある世界のある国に、

一人の男がいた。


その名は、クドウテルキ。

異世界の『地球』より召喚された勇者で、仲間と共に魔王を倒し、英雄となった者である。

この世界では最強の力を持ち、現在は、二児の父でもある。


そして、クドウテルキの妻、メアリー。

この国の王の娘であり、魔王討伐のメンバーの一人でもあった。

魔王討伐後、二人は恋に落ち結婚をし、二児を出産した。


マリーとシュンキ。

テルキとメアリーの二人の子だ。


この国の王は、ルーカス五世。宰相は、アルラス。


そんなこの国である問題が起きていた・・・



「ルーカス様!また、また城の城壁が・・崩れました!!」

「まことか・・」


そうつぶやいて、王は頭を抱えた。


「はぁーーー。どうしたものか・・」


隣りにいた宰相アルラスに目を向ける。


「・・・国王様、承知しました。メアリー様を呼んでまいります」


アルラスは、近くにいた側近に呼びに行かせた。


一時間後。


「父上、申し訳ありません」


そう言って入ってきたのは、王の娘のメアリー。


「いや、お前のせいではなかろう。すべては、ワシの責任だ」

「しかし、私たちの問題でもありますし・・・」

「いや、勇者様に負担をかけてしまったのは我が国。国の問題は、王の問題だ。君たちの責任ではない。

それより、メアリー。こっちに来てくれ」


王はメアリーと二人だけで別室に移動し、話し始めた。


「お前を呼んだのは他でもない、勇者様についてだ」

「テルキのことですか?」

「ああ。最近はどうだ?」


メアリーは少しうつむき、話し始めた。


「数日おきには元に戻りますし、テルキ自身も抑え込もうと努力しています。そのため、以前よりは破壊しなくなりました。しかし―」

「しかし、なんだ?」

「本人自身は苦しそうです。周りに迷惑をかけ、子供二人にもかまってあげられない。そんな日々が、つらいようで・・・」

「さようか・・・」


王は勇者に同情し、目を伏せた。


約半年前からだ。

魔王討伐の勇者クドウテルキが魔法中毒になったことを知っているのは限られた人間だけだった。

日を追うごとにテルキの体調は悪化し、民衆に知られるのはもはや時間の問題だった。


「ところで、父上。話というのは?」

「! あ、ああ。話というか、要請というか・・」

「?」

「我が娘よ、どうか勇者様、いや、テルキ殿を治してくれ!」


親子二人は向かい合いながら、互いの目の奥をうかがうように見合った。

突然王は立ち上がり、国の長にも関わらず、頭を下げた。


「都合の良いことは百も承知だ。これまで、我が国がテルキ殿にどれだけ助けられたか十分に理解しているつもりだ。嘘偽りなく、感謝している。

ただ、ワシもこの国の王じゃ。民を守らなければならない。もし、テルキ殿が本気で暴れでもしたら、この国が滅びかねん。

だから、こうして頭を下げてお前に頼んでいる!図々しいと思われるだろうが、頼む。メアリー!」

「・・・頭を上げてください、お父上様。私も分かっています。このまま行けば、どうなるか。

・・・でも、でも。方法が無いのです。わからないのです。いろいろ試しましたが、どれも成功しないのです」

「そうか。だが、それでも頼む。国からも援助する。大臣たちもきっと納得するはずじゃ」


メアリーは少し考え、王の目を見て言った。


「わかりました。この私、メアリーの命に代えても、必ず我が夫にして英雄、クドウテルキを治してみせます」

「!おお!よくぞ申してくれた。それでは―」


その言葉を遮り、メアリーは言う。


「早速ですが、父上!夫用に頑丈な家を一軒、郊外に用意してください!」

「し、しかし、メアリー。援助するとは言ったが、簡単に国家のお金を使うのは・・・」

「国のお金でなくてもかまいません。『お小遣い』でもよいので、買ってください。ね!お・父・上!」

「まいった。ワシの自腹かぁ・・・」


いたずらな笑みを浮かべて、そう言う娘を見ながら、思わずため息をつく王であった。



話が終わり、王の部屋から出たメアリーは城内にある夫用の家へと向かった。


「必ず、テルキの魔法中毒を治してみせる!」


拳を天に突き上げるメアリーであった。


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