魔王と勇者と、世界平和!
米太郎
第1話 魔王と勇者と、魔王城!
//SE コツコツと、石の床を歩く音。
「良く来たな勇者よ。我は、魔王ぞ! わらわを倒すためにここまで来たのじゃろう。早速相手になろう」
「剣を構えよ勇者よ。わらわが、貴様に地獄というものを見せてやろう」
「ふはははは」 //こだまする声。
「はは?」
「どうした?なぜ剣を構えないでいるのじゃ?」
「ん? 魔王が女なのかって?」
「そうじゃ、わらわは女じゃ! だからどうしたのじゃ。これでも立派な魔王じゃ」
「わらわは、お前たちの住んでいる大陸そのものを滅ぼす力を持っておるぞ。それに加えて、街に魔物が攻めて来て苦しんだであろう」
「その魔物の軍隊を率いておるのがわらわじゃ。その頂点に立つのがわらわじゃ」
「どうだ恐ろしくなったじゃろ? それでは、勇者よ、貴様に地獄を見せてやろう」
「え? 思ったよりもわらわが子供だったから戦いたくないと申すか?今、説明したじゃろ、わらわは恐ろしい魔王じゃ」
「こうまで言っても剣を取らないのか。お前は、優しいのじゃな」
「だが、わしは容赦はせんぞ」
「わらわの方から仕掛けさせてもらうとしようかの。お前が無防備であろうとも、構わずに攻撃するぞ。わらわは、極悪非道ぞ」
「せっかくなら、攻撃をする前に、少しお前が絶望するような話をしてやろう」
//SEコツコツと、石の床を歩く音。
「先ほど、わらわの軍隊に攻撃を仕掛けてくる奴らに報復をしてやったぞ。もう二度と悪さができないように、コテンパンにやってやったわ」
「お前も知っておるじゃろ、人間界と我の国の中間にある砦。あそこに人間どもが、戦いを仕掛けてきたからじゃな」
「おお、知っておるか。今後、攻撃を仕掛けらぬように入念に心を折ってじゃなそれを他の人間たちにも伝えるように言って返してやたのじゃ」
「そうじゃ。今後人間がこっちにしかけぬようにじゃな、滅多打ちにしたのじゃ」
「ん? ギリギリ歩けるか、どうかのところで返しているぞ。それがどうした?」
「なんじゃ。殺しはしていないぞ。今後こちらを攻撃しないように人間どもへ伝えさせるためにじゃな」
「わらわが優しい?」
「優しくなどない、わらわはあいつらの鎧をはぎ取って、辱めに合わせてやったわ!これであいつらは、お婿にでも行けない体になったじゃろう」
「それでも、命までは取らなかったと」
「いやだから、わらわが恐ろしい存在だと噂を広げてもらおうとしてじゃな」 //少し慌てた様子。
「怪我も全然していなかったと」
「そうじゃ、コテンパンと言ってもじゃな、肉体的では無いのじゃ。精神攻撃こそが一番の屈辱じゃろう」
「もうあいつらは、二度とこちらに攻撃を仕掛けてこないことじゃろう。わらわは、一番の攻撃をしたのじゃ! 一人一人面と向かっての!」
「もう、そんなことは良いわ! 早速手合わせと行こうじゃないか。勇者よ、剣を構えろ!」
//SE カシャーン。剣が地面に落ちる音。
「ん? どうした勇者よ? 剣を捨てて……」
「本当に戦わない気か? バカなのか、お前は? わらわは、お前を殺すと言っておるのじゃぞ?」
「攻撃を仕掛けてこない人間は殺さないと、そんなことを思っているのか? わらわはそんなに甘くないぞ」
「え? 人殺しなんてさせないって? いや、わしは魔王ぞ! 今までいろんなやつを」
「なに? もう戦う気がなくなったじゃと?」
//SE カシャーン。盾が地面に落ちる音。
「いや、盾まで捨てて……。何を考えておるのじゃ勇者よ。わらわがいる限り、人間どもは恐怖が消えないのじゃ」
「戦わずに世界を平和にできる方法を探そうっていうのか? そりゃ、わしだって平穏に暮らしたいのじゃが」
「だが、わしに攻撃を仕掛けてきているのは人間じゃ!」
「なに、誤解がある? そうなのか? 信じて欲しいと?」
「そんなもの、簡単に信じられるか! 現にわらわの大事な仲間たちがやられておるのじゃ!」
「森で昼寝をしていたところを襲われたり。それで、その魔物の肉を食したり、骨や皮を使って道具を作り出しておるのじゃろ」
「それは昔の話だとしても、そんな歴史をわらわは許さぬ。現にわらわの父上も」
「父は封印しているだけで生きている、だと?」
「今更遅いわ! わらわは、父様も母様もいないでこの城で」
「もう抵抗はしないからと?」
//SE カシャン。カシャン。金属製の小手を脱ぐ音
「おいおい。何をしておるのじゃ。今度は、小手を外して。靴を脱いで。鎧を脱いで」
//SE カシャーン。金属製の防具が地面に散らばる音
「……っておいおいおいおい」
「分かった! ストップストップ! ストップと言っておるじゃろ!!」
「バカ! これ以上脱ぐんじゃない!」
//SEカシャーン。金属製の防具が地面に散らばる音。
「お前、今パンツ一枚じゃ! 恥ずかしいじゃろ!」
「お前が抵抗しないのはわかったから、せめて服くらいは着てくれ……」
「わかったわかった。少し信じよう。お前がこちらに攻撃する意思が無いのはわかった」
「お互いに、一旦落ち着こう。わらわは攻撃しないから。お前は、脱ぐのをやめるのじゃ」
//一呼吸。
「やっと分かったか。ふぅ」
「それでは、勇者よ。話し合いをしよう。どうやって世界平和を目指すというのか、お前の考えを聞かせてもらおう」
「魔王は怖い存在と、そんな誤解があるというお前の言い分はわかる」
「だから、まずは人間界に言って無実を証明しようというのじゃな。そんなことができたら苦労はせんわ」
「お前に、考えがあると? お前と一緒に街に行けば、大丈夫なのか?」
「勇者っていうのは、国民から信頼されているからっていう理屈なのじゃな」
「それは、信じていいものなのか。そうは言ってもじゃな」
//SE カチャカチャ。ズボンのベルトを外す音。
「いやいや、わかった! 脱ぐんじゃない。露出癖があるのか貴様は!」
「そもそも、魔王が女で、しかも幼いとわかっておるのに脱ぐなんて、それは変態の所業じゃ」
//SE カチャカチャ。ズボンのベルトをつける音。
「うーむ、勇者よ。そなたを信じて良いのかは、わからぬが一度だけなら信じてみても良いかも知れぬな」
//SE カチャカチャ。ズボンのベルトを外す音。
「まずは一度だけでも良いじゃろ! 信じるって言っておるじゃろ! もう服を脱ごうとするんじゃない! それこそ、お前が言う『悪い歴史を繰り返しておる』のじゃ!」
//SE カチャカチャ。ズボンのベルトをつける音。
「『悪い歴史』そなたの言う通りなのかもしれぬな」
「『悪い歴史』は繰り返してはならぬ。繰り返さないためには、わらわが自ら動くことで止める。勇者よ。半分服を脱ぎかけているお前に説得力が有るのか無いのか」
「ただの露出癖のある人間の説得を真面目に聞いてしまっているわらわじゃが」
「それこそが勇者というものの力なのかもしれぬな。お前が勇者なのも、なんだか納得した気がする。お前が言う平和の作り方、協力してみよう」
「それにしても勇者よ。その説得する力というのを、もう少し違うやり方に変えた方がいいかも知れないぞ。早く服を着てくれ」
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