第34話
「おい、観撮! 何やってんだ」
「何って、盾になって貰ったんですよ。
「ぐっ……」
勝手にクラスメイトを盾にされたことを咎めるEクラスの男がいたが、観撮はそれを正論で封殺する。Eクラスの生徒たちも分かっているのだ、目の前のFクラスが強大な力を持っているということを。
(観撮とかいったな、こいつこの状況でいい統率力を発揮してるじゃないか)
「そこの人、何故Dクラスの二人をかばったんです? 無駄にダメージを受けるだけだと思いますが」
「こいつらは俺が追い詰めたんでな。漁夫の利でポイント取られても腹立つだけだからな」
この演習では、何人倒したかの個人スコアと勝利クラスにいるかどうかで付与されるAPが変わる。砲撃から安室と東堂の二人を守らなければ、個人スコアは光一ではなくEクラスの誰かに奪われていたのだ。
「観撮、お前とは休戦協定を結んでいたはずだが」
「協定とは破られるためにあるものですよ。D、Fクラスの主力を一度に潰せるなら尚更ですね」
東堂が対話を試みるもの、観撮は無視してEクラスの生徒たちに指示を出す。あらかじめ指示されていたのだろう、大半の生徒が片手にキャノン系のアルマを身に着け三人に狙いをつける。
「おい、お前ら。五分生き残れるか」
「え? あ、ああ。そのくらいならなんとか」
「上等」
光一は、万事休すといった表情を浮かべる二人に声をかけ、短く言い残したと同時に思い切り地面を蹴ってEクラスに突撃する。Fクラスを逸脱した踏み込みは、狙いを付けていたはずのEクラスたちが光一の姿を見失ってしまうほど。
「すごい……」
安室の口から思わずそんな声が漏れた。単身Eクラスたちの中に飛び込んだ光一の動きはまさに一騎当千、腕の一振りでまた一人とEクラスの生徒が宙を舞う。
「チッ……時間稼ぎにもならないですか。陣形Dを組め! トリプルバーストの使用を許可する!」
観撮が声を張り上げると、Eクラスの生徒は一気に光一と東堂たちから距離をとった。その程度なら光一は一足で距離を詰めることができるが、Eクラスの生徒が三人固まり構えた巨大なキャノン砲を見て動くのを一瞬、
Eクラスの生徒たちが構えるそれは、三人でパーツを持ち寄る必要があるものの破格の威力を持つキャノン砲のアルマ。しかし、いくら威力が高くとも当たらなければ意味がない。光一の反応速度なら避けるのは不可能ではない。だが、動くが遅れた理由は、
(まずい、この位置は防ぎきれない)
東堂は瞬間的に悟ってしまう。正面から受けるのであれば
だが、Eクラスの生徒たちは前後から同時に砲身を向けていた。今の彼女には複数の
「う、うそだろ……」
「俺たちのトリプルバーストが……」
正面からの砲撃を防いだ衝撃で、後方に飛ばされた東堂は背中に何か暖かくもずっしりとしたものに当たって止まる。
「もう少し隠し時たかったんだがな。ま、しょうがねぇか」
振り返ると、右手を突き出した格好で赤熱した砲弾を受け止める光一の姿があった。
(馬鹿な! あれをまともに受けるなど防御系の
光一が
「どうやら、僕が直接相手しないといけないみたいですね」
「麗!」
「すまない……花梨」
人数も減り、切り札も防がれ士気の大きく下がったEクラスの前に安室が転がされた。全員の視線がそちらに移り、観撮がずれた眼鏡を直しながら出てきた。
(この男、いくら消耗しているとはいえ麗を相手にして傷一つないだと)
安室がまるで相手にならない、いくら観撮が
「その
「ヤツ? 誰のことだよ、俺なら入学試験でも倒されたことなんてないが」
「何だって?」
観撮計、彼はEクラスの主席という位置に甘んじているのだが、その実力はBクラスの中位から上位はある。そんな彼がなぜEクラスにいるのか、それは入学試験で彼は一人として倒すことなく脱落するという結果を残してしまったからである。
その原因となった人物こそ、今のAクラス主席であり、天才こと一ノ瀬颯真である。観撮は次のクラス対抗戦で一ノ瀬に復讐するためにAPを集めて良い装備を集めようと躍起になっているのだ。
観撮からすれば、目の前の光一もクラスに似合わない実力を備えており、自分と同じように強者から入学試験で狙われたのかと思っていたのだがそれは違うと光一は言い切ったのだ。
「それに
「なんだと……そんな事があるはずがない! そんなクズ
「だったら調べてみろよ、そういう
観撮が最初に浮かんだ可能性を光一はあっさりと否定し、自分のもつ手札を明かした。それは、
(そんなに言うなら使おうじゃないか、
観撮の右目に青く光が灯り、幾何学模様が瞳に浮かぶ。
「
「だからそう言ってるだろ」
その
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