第29話
「本日の授業は宝探しだ、早く取ってきたものから上がってよし!」
とある日のアルマの授業、ようやく座学が減りだしFクラスでもアルマを使った実技をするようになっていた。とはいえ、下位クラスの実技は他のクラスが優先されている都合上、大体の時間はこうして一日の最後になっていた。
本日の授業内容は宝探しと呼ばれるもので、入学試験でも使ったあの広大な森に隠されたボールを時間内にとって来るというもの。言葉にすると単純だが、敷地面積の広さから、アルマを常に纏っていなければ時間内に踏破できる距離ではない上に、クリア順にAPが配布されるということから奪い合いも起こる。限りなく実践的であるこの授業。生徒たちの中では、ここで上位の成績を残している者たちが迫るクラス対抗戦の代表になると
最下位クラスということもあり、どんぐりの背比べな成績を残す者がほとんどな中でも、頭角を現す者は居る。
「一位、谷貝。上がっていいぞ」
「ウス」
出席番号一番、谷貝恭二。このFクラスのトップであり、宝探しの実技ではほぼ一位を取っていた。いつものように、他のクラスメイトを内心下に見ながら帰り支度を始めようとしたその時、
「二着、谷中。速かったな……だが、余計な分のボールはどこか遠くに置いてこい」
(! 谷中だと)
二着、それも谷貝とほぼ変わらないタイムで戻ってきたのは出席番号が最下位。つまり、Fクラスで最も成績の悪い生徒のはず。しかし、それでも彼はこの順位で帰ってきた。
「ったく、余計な邪魔に付き合うんじゃなかったぜ……っと」
(! なん……だと。なんだ、あの飛距離は!)
笹山から余計に持ってきたボールの処理を任された光一は、手に持ったボールを思い切り投げる。その、一瞬で遥か遠くに見えなくなったボールを見ただけで分かる。入学当初と同じ、右腕だけにアルマを纏った落ちこぼれにしか見えなかった男、その実力の一端が。
(谷中光一、一応チェックしておくとするか)
谷貝は、光一の方の背中を睨みつけると、いち早く教室へと戻るのであった。
「へっへーん、今回も私の勝ちね。って、谷貝はともかくアンタも終わってるの!?」
「くっそー、最後の直線で差をつけられちまったぜ。おっと、光一。速かったじゃないか」
それから、少し遅れて山崎と斎藤の二人もやってきた。
「割と近くにボールがあってな。運が良かったよ」
「ふーん。ま、次は負けないけどね」
「また俺が片付けかよ……」
そんな談笑をしながら、教室へと戻る三人。少しづつ、だが確実に放課後の活動の成果は出ている。そして、
「全員集まったな。それじゃあ、
それが認知され始める時は、すぐそこまで来ていた。
「さーて、今日の授業は前も言ったが、DEFクラス合同での宝探しだ」
谷貝が光一のマークを始めた二日後、下位クラスの生徒たちはいつもの会場の前に整列していた。クラス対抗戦まであと一月ない程度、下位クラス同士の演習とはいえ、この授業の結果が前予想に大きく影響を及ぼしうる。
「今回はいつもの宝探しとは少しルールを変えるぞ。クラス対抗で負けたクラスは後片付けだからなー」
笹山が読み上げるルールは、いつもの個人戦である宝探しではなく、クラス全体で何点分を集められるかを競うというものであるということ、授業終了時にボールを回収しその点数を競うので、途中脱落などはなく、何度でも奪い返すことが可能であるというあたりが変更点であるとの説明がなされた。
「最後に、戦闘を許可するのは五分経ってからとするので、それまでは散策と話し合いに当てるように」
「それでは。これより、DEFクラス合同演習を開始する!」
笹山のその言葉により、生徒たちが土煙を上げて森の中に散開していく。様々な思惑が交差する、合同アルマ演習が、今始まるのであった。
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