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「母に反対されました。あなたに逢うことを」
海のない都の山奥で、私はひっそりと心の中であなたへ呟きました。
最近はお酒を口にしても頭が痛くなるばかり。
夏の終わりの虫の音を、あなたの波音だと思い目を覚ますばかり。
これは、これは恋なのだと思います。
――いいえ、これは運命。いいえ、これは宿命。
どんなに運命や身内や周りの環境に反対されたって白い目で見られたって、わたしはあなたのそばに。常にあなたを心に求めております。
あの日あの夏の日、水着の上に柔らかなタオルを肩にかけながら走った船の上で浴びたあなたの優しい波風と飛沫を。眼差しを。暖かな光の反射を。そして匂いを。忘れはしません。
愛してます。あなたのそばで生きて、共に寄り添い、そして散っていきたい。
ただあなたの海を決して穢したくない。
だからあなたの海の脇へ一度わたしの髪先を一部だけ切り落とさせてもらいました。
親友へわたしの骨をあなたの体内へまいて欲しいと冗談混じりに言いましたがきっと叶わないでしょう。なので先にあなたの中へ、溶けなくとも、それが穢れとなろうとも入れさせて頂きました。お赦しください。
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