第3楽章 ノイズの先に 前編

「あーあ…………昨日は疲れたな…………。」


あの怪人を倒して、翌日。僕は音楽室に入ろうとしたときだった。


「きゃっ!」「いてっ!!」


音楽室から出てきたエミリとぶつかった。


「…………全く、エミリ。どうしたんだ?」


「ああ、ケイスケ!ちょうどいいところに!シズクちゃんが…………!」


「えっ…………まさか…………?」


嫌な予感がして僕は音楽室に入る。



音楽室には他のみんなもいた。


「ああ、ケイスケ。…………少し聞きたいことが。」


フウヤがそう言うと、シズクを指さす。そこにはあぐらをかいているシズクがいた。


「あーあ。やってらんない。」


シズクがそうつぶやくと、カイがぼやく。


「来たか…………シズクのやさぐれタイムが。」


「やさぐれタイム?」


ライアンが疑問に思うと、カイは説明をする。


「ああ、シズクは時々、ああいう風になるんだ。」


「彼女…………大人しいイメージがあったのですが、まさかそんなモードがあるなんて…………。」


「……………………。」


「マコト?どうかしたのか…………?ああ、そういえば、マコトはこのシズクを見るのは初めてだったな。」


「…………うん。」


「困ったわね…………こんなときに怪人なんて現れたら…………!」


エミリがそう言うと、待っていたと思うほどのタイミングでピアノがひとりでに鳴る。


「くそ…………こんなときに…………。」


すかさず浅見先生も音楽室に来た。


「大変だ!怨怪七人衆の奴らがやって来た!今すぐ出動するんだ!」


「えっ、でもシズクが…………。」


全員がシズクに視線を向ける。シズクはそれを気にせずに寝ころびだした。


「……………………!」


寝ころんだ瞬間、マコトがシズクのところに向かう。


「マコト…………?」


「シズクさん!しっかりして!!」


「マコト…………。」


エミリも駆けつけようとするが、カイに止められる。


「ここはマコトに任せるんだ!!」


「ええ!?でも、マコトは…………。」


マコトは動こうとせず、シズクをずっと見つめる。


「仕方ないよ、エミリ。行こう!」


「…………わかったわ。」


僕たちは急いで怪人がいるところへ向かう。







「きゃああああ!!」


「あははは!良い悲鳴だね!ピクチ!お願い。」


「ピックピク!」



「あははは!これで写真に閉じ込められたね!」


「ピクピク!」


「それじゃあ、次に…………!」


「待て!」


僕たちは怪人がいるところに着いた。そこには大量の写真が地面に散らばっていた。


「これは…………!?」


「あははは!びっくりしちゃった?」


「あなたは…………以前の怪人とは違いますね。何者ですか?」


「僕はレイズ!怨怪七人衆の幹部の1人だよー!!」


「ピクピク!我はピクチだピク!」


「挨拶が済んだようだ。行くぞ。」


他のみんなも頷く。そして、マジックタクトを振りかざす。


「「「「「ミューズチェンジ!!」」」」」



「炎のミュージック!!ネイロンレッド!!」


「風のミュージック!!ネイロングリーン!!」


「空のミュージック!!ネイロンブルー!!」


「闇のミュージック!!ネイロンブラック!!」


「光のミュージック!!ネイロンホワイト!!」


「世界に輝く音楽を!!」


「「「「「楽器戦隊ネイロンジャー!!」」」」」


「演奏開始!!」


「今だ!ピックピク!!」


「きゃあ!!」


「エミリ!?」


怪人は変な機械を使い、エミリに光を当てる。するとエミリは写真になっていた。


「い、今の機械で人たちを写真にしているんだな!!」


「白いの!その通りだピク!!」


「みんな…………気を付けていくぞ!」


「ああ!」「はい。」「おう!」


「かかってこいピク!!」






「……………………。」


「……………………。ふああああ…………眠い。」


僕は流川マコト。叔父さんの勧めでユメミノの学校に転校して、数か月。こんなシズクさんを見るのは初めてだ。


「……………………だるい。」


「シズクさん…………!」


何とかして僕は、元に戻したい。そんな願いも叶わず、どのくらいの時間が経ったのだろう。


「ねえ…………。あんたどうなの?」


「あっ…………あんたって…………マコトだよ!」


「そう………………それより、エミリのこと好きなの?」


「エ…………エミリさんのこと…………?」


「あんた、エミリのこと好きでしょ。そうなんでしょ?」


「そんな…………僕は…………!!」



僕は初めてここに登校した日を思い出していた。初めて登校したときから数日。クラスに馴染めない日々が続いていた。


それでも叔父さんに言われて、吹奏楽部に入ったがここでも馴染めない日々が続く…………そう思っていた。


「こんにちは、マコトくん。」


「ど、どうして僕の名前を?」


「浅見先生から教えていただきましたわ。阿宮シズクです。よろしくお願いいたします。」


「阿宮さん…………よろしくお願いいたします。」


「シズクで良いですわ。ケイスケくん。エミリさん。カイくん。マコトくんですわ。」


すると、そこに今ではかけがえのない友人たちが目の前にいた。


「僕は古城ケイスケ!よろしく。」


「住野エミリ。よろしくね!」


「小東カイ。…………よろしく。」


「…………よろしくお願いいたします。」



あのとき…………声をかけてくれたシズクさんがいなかったら僕は…………。


「シズクさん…………お願いです…………。今だけで良いです。…………元に戻って!!」


「……………………!?」


シズクさんは驚きを隠せていなかった。僕にはそう見えた。


「……………………わかりましたわ。マコトくん。」


「シズクさん!!」


シズクさんは僕に笑顔を見せた。


「行きましょう!みなさん待っていますわ。」


「はい!」

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