まほう少女たち

斜玲亜犀

プロローグ

 たとえば紙とレモン。

 普段は筆箱に入れることのないレモンだが、ときにインクとして使われることがある。

 その際、読み手側はレモンで書かれたことをしっかりと認識し、クエン酸が文字を茶色く浮かび上がらせることを知っていなければいけない。

 他にはレモンを数字で表記する方法がある。レモンを五十音やアルファベットの順番で記す方法である。この場合、数字が何を指しているか分からない以上、解きようがないだろう。

 しかし昨今の暗号はそのような単純構造ではない。インターネット通信における暗号には、鍵が存在する。そしてそれは相手に見えていたり、見えなかったりする。

 そのような仕組みをどうにかしてアナログ的な暗号に組み込みたいのだが、手紙を書く手が進まない。

「さて、どうしたものか」

 彼女は机に向かって頭を抱えた。

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