女帝属性の最強の悪役令嬢は様々な『力』で立ち塞がる者を粉砕し、運命さえも平伏させる!

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シオン・カイザー様バンザーーーイ!!!

ここはイージス王国の王立魔法学園である。


イージス王国の貴族達は12歳から18歳までの間、この学園に通う義務があり、そこで勉学に励み、さらには派閥を構成して、将来自分の地位を確立させる為に活動している。

貴族の三男や三女以降は家を継げないので、剣の腕を磨き騎士団に入団したり、良い家に嫁ぐ為に自分の特技を磨いたりするのだ。


そして、現在王族の次に権力あり、王族以上に資金を持っているカイザー公爵家の長女シオン・カイザー公爵令嬢が通っていた。



「見て!シオン様よ!!!」


この国では珍しい、銀色の美しい髪を腰まで伸ばし、金色の瞳は髪色と相対して、全てを見通すように、全ての者を魅了する美しさであった。


シオン・カイザー公爵令嬢が通れば、全ての者が振り返るほどの美貌の持ち主であり、その堂々とした凛とした『態度』は、すでに学園の名物となっていた。



例えば、廊下を歩いていると、中庭の端の方で偶然、5対1で虐められている男子生徒を見かけると──


「ふむ、そこの者達よ。何をしている?」


シオン令嬢の声に5人組は動揺した。


『ヤバイ!誤魔化せなければ!?』


虐めを見られた5人組は必死に言い訳を始めたが…………


「何を訳のわからぬ事を言っている?その喧嘩、我が買うと言っているのだ。ほら、退学になりたくなければ掛かってくるがよい!我を敗北させる事ができれば、今回の事を不問としてやろうぞ!」


手を前に出して、クイクイッと手招きした。

5人組はお互いに見合わせ、どうすると相談しようとしたが───


「我が国の誇り高い貴族の嫡男達が、何を迷っておる?このまま学園長に言って退学させても良いのだぞ!さぁ、掛かって参れ!!!」


!?


5人組はハッとなって覚悟を決めてシオン令嬢に向かって行こうとしたが、その1人が後ろから殴られて倒れた。


「なっ!?」

「し、シオン令嬢に乱暴するなっ!」


虐められていた男子生徒がシオンの堂々とした態度で対峙している姿をみて奮い立ったのだ。


そこからは捨て身の気迫で及び腰になった5人組をその男子生徒が1人で追い払った。


「うむ!良くやった!その気持ちを忘れずに鍛錬に励むがよい。素晴らしい気迫じゃったぞ。お主なら、騎士団に入団しても良い所まで出世するじゃろう。今の気持ちを忘れずにな?」


シオン令嬢はそう言うと何事もなく立ち去った。しかし、それは虐められていた男子生徒の人生を変える出来事であった。

後に、その男子生徒は騎士団に入団し、メキメキと頭角を現して、騎士団のトップにまで登り詰める事になる。


「全てはシオン・カイザー公爵令嬢にこの剣を捧げます!」


後の騎士団のトップがシオン令嬢の【信者】となった瞬間であった。



──今回の力──

【胆力】

物事に対して怖がったり尻込みしたりしない「気力」や「度胸」のこと


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


そして、別の件では───


「ふむ、こんなものか?」


学内テストの結果が廊下に張り出せれており、シオン令嬢は1位であった。


「クソッ!どうして1位になれない!?」


万年2位の秀才が膝を着いて嘆いていた。

シオン令嬢興味を惹かれてその者の所へ近付いていった。


「そこの者よ?何を嘆いておる。胸を張るがよい!2位を死守したではないか!」


腕を組み、上から目線で嘆いている秀才君に言った。


「うるさい!僕は1位になるために寝る間を惜しんで勉強したんだ!でも、勝てなかった!クソッーーー!!!」


今回は今まで以上に勉学に励んで挑んだのに勝てなかった。その事実が秀才君の気持ちを折ったのだった。

シオンはキョトンとした顔で首を傾げた。


「お主は何を言っておるのだ?」

「えっ………?」


シオンは理解出来ないと言った顔で答えた。


「目的を勘違いするでない。1位、2位などその結果でしかない。我は知っておる。お主は前回のテストよりも合計点数が10点もプラスになっておるではないか?我との差は3点じゃった。お主が努力しておる事は僅差で、追い上げられておる我が1番理解しておるぞ?我も久し振りにヒヤヒヤしたものじゃ」


!?


まさかの、目の敵にしているシオン令嬢が、自分の事を1番理解してくれていた事に驚愕し、頭を上げてシオンの顔を見た。


「そして、数多の本を読み知識を得る事は将来の糧となる。学園の1位より、その蓄えた知識を将来どう活かすかが重要である。最初に言ったであろう?目的を勘違いするでないと」


シオン令嬢は言い切ったとばかりに背を向けてその場を後にした。そして、離れる前に後ろを向いたまま一言呟いた。


「お主なら将来この国を、民をより平和に、より安心して暮らせる為の政策を考える事ができるであろう。期待しておるぞ。ライバルよ」


ドクンッ


シオンの言葉は秀才君の胸を貫いた。

学園の順位を競うライバルと認めてくれていた。


自分の努力を理解してくれていた事。


自分の考え方の間違いを正し、その知識を正しく使うよう諭してくれた事。


どれも秀才君の心を揺さぶるには大きかった。

そして、自分の心の小ささも理解した。


「僕は絶対に君に追いついてみせる!」


決意を胸に秘めた秀才君の目は力強かった。

後に、敏腕宰相として、国王の右腕として活躍していく人物が、シオン信者になった瞬間であった。



──今回の力──

【知力】

知性の働き全般を表し、思考力や知識の豊富さを現す。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


さて、突然だが、シオン・カイザー公爵令嬢には『婚約者』がいる。



何だってーーーーーーーー!!!!!!



うむ、ここまで読んだ【シオン信者】達の心の声が聞こえてきそうだな。


婚約者はイージス王国の王子である。アーサー・イージス第一王子である。

ちなみに兄妹は第二王子と王女がいる。


そのアーサー王子が熱を上げている令嬢がいると噂になっていた。


「シオン様!よろしいのですか!あんな事を許しておいて!?」


取り巻きの1人がシオンに苦言した。


「うむ、まぁ、若い頃には火遊びも経験となろう。放っておくがよい」


婚約者であるアーサー王子の浮気にシオン令嬢は興味がないように、放置する処置をした。


アーサー王子の浮気の噂は日に日に大きくなっていった。


「見て下さいな。中庭で浮気相手の令嬢とイチャイチャしていますわ!」

「シオン様と言う淑女の鑑のような素晴らしい御方がいるのに信じられませんわ!」


周囲の目など気にしないアーサー王子の行動に、婚約者を持つ令嬢達の目は厳しくなるばかりだった。


そして、学園内でのイベントで社交パーティーが開催された日であった。


パートナーを伴って参加するパーティーで、アーサーはシオン令嬢を選ばず、浮気相手をパートナーに参加した。シオン令嬢は仕方なく1人でパーティー会場へとやってきた。


シオンは扇を口元へ当てて呟いた。


「これはこれで、面白い体験であるな」


変わり映えのない日常に飽きていたシオンは、いつもと違う行動に、少しワクワクしていた。


パーティが始まり、シオンの周りには多くの令嬢達が労りの言葉を掛ける為に集まった。


「シオン様、もし報復されるのでしたらお手伝い致しますわ!」

「私もです!シオン様に恥をかかせるなんて許せません!」


シオンを慕う令嬢達はフンスッフンスッと殺る気に満ちていた。いや、殺ってはダメだろうが!


「フフフッ、大丈夫だ。我は気にしておらぬ。それに面白いイベントが始まるようであるしな?」


シオンがそう言うと、少ししてアーサー王子が叫ぶ様に声を上げた。


「皆の者!聞いて欲しい!私はシオン・カイザー公爵令嬢の婚約を破棄する!そして、ここにいるリリス・モリガン男爵令嬢との婚約を発表する!」


「アーサー様!とても嬉しいですわ~♪」


アーサーが大声で言った後、会場はシーーーンと静寂が支配した。


不穏な気配を感じ取ったアーサー王子は、その場を取り繕う様に、理由を話した。


いわく、シオン令嬢が嫉妬してリリス男爵令嬢に嫌がらせをしていたという。

しかし、その嫌がらせとは子供のイタズラレベルであった。教科書を破かれたり、水を掛けられたりなどなど。


周囲の目が厳しいものになっている中、リリスだけは冷静だった。


『フフンッ♪大丈夫。私は前世の記憶があるのだもの。この後の展開も知っているのよ♪』


そしてアーサーがリリスが階段から突き落とされた事を言った時に、リリスは涙目で訴えた。


「あの時、突き落とされる時に、咄嗟に相手の服を掴んだんです!その時、その相手の『ボタン』を握って落ちたんです!これがそのボタンです!」


リリスが見せたボタンは、意匠の紋様が刻まれており、一目で高価なものだとわかった。


「おおっ!それは確かに我のものだ。お主が持っておったのか。褒めて遣わす」


何処までも偉そうに上から目線のシオン令嬢であった。


「聞きましたか!?シオン令嬢も、このボタンが自分のものだと認めましたわ!」


このボタンは、その日の午前中に元々取れかかっていたボタンが千切れて落ちただけであった。

リリスはボタンを拾うイベントを知っていたので、落ちたボタンを回収しただけであった。


「うむ、それは紛れもなく我の服のボタンである。それで、なにか問題でもあるのかな?」


「だ、だから!私が階段から突き落とされた時に───」


「それはありえん!そこの者よ。しっかりと考えて話すがよい。お主が突き落とされた日はいつであるか?もし、嘘や虚偽の供述をすれば首が飛ぶと思え」


シオン令嬢が手を挙げると、護衛の騎士達がリリス令嬢に剣を向けた。


「ヒィッ!?」


目の前に剣を突きつけられて悲鳴を上げるリリスに、アーサーも何が起きているのか理解できず、呆然としていた。


『なに!?なに!?なに!?前世の記憶と、イベントの話が違うんですけど!?』



リリスもここに来て始めて焦り出した。

そして、突き落とされた日を伝えると、シオン令嬢はその日は、午前で早退している事が判明した。故に、あり得ないのである。


「これで、我の冤罪は晴れたかな?それにしても───」



シオン令嬢はリリスをジロジロと見つめると、おもむろに身体を触りだした。


「きゃっ!?…………アン♪や、やめて……」


ハァハァと息も絶え絶えに座り込むリリスに、シオンは揉んだ自分の両手をワキワキしながら考え込んでいた。


それを見ていたパーティ会場の令嬢達は自分も触って欲しいわ!と、訳のわからない事を考えていたりした。


「不思議なものである。我も、そこそこの美貌の持ち主だと自負しておるが、男と言うのはお主のような、甘ったるく話す頭の悪い女性を好むのか?」


頭が悪いって失礼なっ!と、リリスは言い返す気力もなかった。


「フンッ!貴様の様に男を立てる事を知らない女と居るのは疲れるのだ!少しは私を敬う事を覚えろ!」


ああ、それが本音なのかと会場の皆が思った。


「うむ~なかなか難しいものであるな…………」


顎に手を当てて、さて、どうしたものかと思案するシオンは、ハッと思い付いたようになにかを閃いた。


そして、リリスの横に座り込んだ。


「し、シオン様?」


多くのシオン信者達が、具合でも悪くなったのかしら!?と、心配したが───


ポロポロッ


!?


嘘っ!?

シオン・カイザー様が泣いている!?


ザワッと会場が動揺した。


「えっ?」


これにはアーサー王子が1番動揺した。


「あ、アーサー様…………グスンッ、酷いですわ。わ、私はアーサー様の、相応しい女性に………なろうと頑張っていただけなのに………」


顔に両手を当てて、チラッと見える潤んだ瞳でこちらを見るシオン令嬢の、ギャップに皆が【堕ちた】

敵であるリリスですらポーッと見惚れたぐらいであった。



「ふざけんな!シオン様を泣かせる奴は王子であろうと、ぶっ殺してやる!」


「ざっけんじゃないわよ!シオン様を泣かせるなんて!…………これはアリだけど………ジュルリッ、じゃなかった。王子でも許しませんわ!」


会場から罵倒が飛び交った。

アーサー王子も身の危険を感じて後ろに後ずさった。


ウルウルッ

「皆様、止めて!私が悪いのです。私に至らない所があったのが悪いのですから…………」


涙目で訴えるシオンにドキューーーーンと胸を撃ち抜かれるみんなであった。


そして、アーサー王子の殺意のゲージがどんどん高まっていった。


ボソッ

「よし、殺そう」

「うん、こんな浮気王子は死んで償うべきよ」


ジリジリッとパーティ会場の皆が王子に近付いていったが…………


スッと立ち上がったシオン令嬢が一喝した。


「そこまでじゃ!ふむ、こうやって男達を操るのであるな?なかなかに面白い!」


「き、貴様!ウソ泣きを───」


アーサー王子は怒ってシオンに近付こうとしたが、誰かが投げた酒瓶が頭に当り気絶した。


「さて、なかなか面白い体験をさせてもらった。リリスと言ったか?お主、我の部下にならぬか?」


「はっ?」


リリスはなにを言われたのかわからず声が出てしまった。


「な、なんで私が──」

「別に断っても良いぞ?ただし、王家と公爵家の婚約を破断にしたのじゃ。すぐに、首が飛ぶと思う──「はいっ!なりますわ!」」


リリスは声を被せて答えた。素晴らしい身代わりの術である。


「うむうむ、良かったわ!我に勝った者は久し振りじゃ!お主の様な者が配下になるのは嬉しいものじゃぞ♪」


???


リリスは首を傾げて尋ねた。


「シオン様に勝ったとはどういうことですか?」


「我と言う婚約者がいたにも関わらず、お主はアーサーを籠絡させたではないか。女としての魅力として我に勝ったのじゃ」


シオンはうんうんと腕を組んで頷いた。


「これからはお主から女としての立ち振舞いを学ぶとしよう。本日はあっぱれな余興であった!我はこれにて失礼する!」


シオン令嬢が立ち去ると、護衛の騎士に連行される様にリリスも連れて行かれるのだった。



この後、アーサー王子は王位継承権を剥奪され、地方の寂れた領地へ飛ばされることになる。


逆に、リリスはシオン・カイザー公爵令嬢に気に入られ、専属侍女として仕えることになった。


「シオン様!いい加減に許して下さい!!!」


リリスはミニスカメイド服を着させられていた。胸も強調されていた。


「しかしのぅ?会談にお主を連れていくと話が早くまとまるのじゃ。先方が契約の話を早く終わらせようとするのでな………」


「その後!私に言い寄ってくるんですよ!私はまだ処◯なのに!!!」


!?



赤面するリリスに、流石のシオンも、リリスが身持ちが悪く遊んでいると思っていた為、驚きと共に申し訳ない気持ちになり、『たまに』その格好をさせることで許すのだった。


そして、リリスの前世の記憶がバレてその知識を使い、世の中を発展させるのはもう少し後になってからである。


「何故もっと早く言わなかったのじゃ!」

「自分の切札を馬鹿正直に言う人物がいますか!」


……………それもそうじゃ。すまぬ。


「それにしても、シオン様こそ転生者ではないのですか?私の知っている悪役令嬢シオンと、設定が違い過ぎているんですが?」

「いや、別の異世界の知識など知らぬぞ?我は我の道(覇道)を突き進むのみじゃ!」


「男前過ぎてステキですねっ!」


ヤケクソ気味に言うリリスであった。

『どうしてこうなった!?』



──今回の力──

【魅力】

人の心をひきつけ夢中にさせる力。女としての色香など。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


婚約破棄事件からすぐに、シオン・カイザー公爵令嬢に縁談が舞い込んできた。


「なんと!隣国の【国王】からの縁談じゃと?」


隣国は『アイギス帝国』


我がイージス王国より広い国土と国力の高い国であり、前皇帝までは国土拡大政策を取っていた。

我が国にも戦争を仕掛けて来たが、追い払う事に成功している。そして、アイギス帝国は、我が国を諦めて、我が国の反対側にある国々に矛先を向けて戦争していた。


しかし、現皇帝が病気で急死するとその子供が皇帝に就いた。


年は現在20歳。

ちなみにシオン様は18歳です。


新しく皇帝になったグレイ・アイギス皇帝は痛感していた。


すでに国は疲弊し、戦争で奪い取った領地は高い税で搾取するばかりで、各地で反乱が起き、そして鎮圧しながら新たな収入を得る為に戦争を繰り返す。


もう限界だったのだ。


それを間近で国政を見てきたグレイは、なんとか国内をまとめあげていた宰相と、同じ志を持つ文官達と共に、国内の内政に力を入れる事にした。


現在戦争していた場所から兵を撤退させ、国境に駐屯さえた。これには軍上層部から苦情がきたが、国内の生産力が落ちており、今後の物資を送る事が出来なくなると、もっともらしい理由を付けて書状を送り、さらに、国内で反乱が起きていると言って、少しずつ前線から兵を引き上げさせた。


これには、軍に反乱されては国が滅びると言う理由から、細心の注意を払いながら、軍の力を削いでいった。しかし、いくら戦力を削っても軍部が強い力を持っている事に変わりはなかった。


そして、ある程度兵力を王都へ戻した後、並行して別の後ろ盾になるものを探していた。


そこにシオン・カイザー公爵令嬢の婚約破棄の話が舞い込んできたのだ。


「イージス王国は兵力で劣っていても、我が国の軍を撃退している。幸いな事にカイザー公爵家は我が国と領地も隣接している為、援軍をすぐに送る事もできる。家筋的にも問題はない。是非とも私の妃に欲しい!」


こうしてグレイ皇帝の猛アプローチが始まった。

一方シオンは───



「どうなされるのですか?」

「うむ、我的には受けても良いと考えておる」


バサッと、分厚い報告書を机………いや、テーブルに投げ置いた。


すでにシオンも隣国の事情を調べ上げていたのだ。


「グレイ皇帝は文官気質で、政治的手腕はなかなかのようじゃ。しかし、欠点として武力がなかった。いくら内政が上手くとも、武功のない者に軍部は付いてこぬ。だが───」


ニヤリッと不敵に嗤うシオンにリリスは、あ゛ーと、結末を察して南無南無と合掌した。


それからすぐに、アイギス帝国に縁談承諾の返事届いた。


このニュースに、シオンの事を狙っていた貴族の子息は落胆したのは言うまでもない。


そして驚くべき事に、シオンは手紙の返事とともにアイギス帝国へと向かっていた。


「…………まさか、こんなにすぐに来て頂けるとは思っていませんでした」


「フフフッ、我を望んでおいて気の利いた言葉も掛けれないのかえ?お主の希望を叶える事が、我の願いと重なっただけじゃ」


すでに主導権はシオンが握っていた。


「申し訳ない!まさかこんなに早く来て頂けるとは思っておらず、まだ部屋の準備などできておらず、急ぎ準備致します!」


焦るグレイをよそにシオンは言った。


「よいよい♪我はすぐにここを立つのでな。戻って来るまでに準備しておいてくれればよいぞ」


「はっ?どこに行かれるのですか」


「我が国(これから自分の国になる)を見て廻ってくるのじゃ。国内を見ずに統治などできぬ故にのぅ」


シオンは護衛として約100人ほどの兵を連れて来ていた。まぁ、半数は執事やメイドなど、身の周りを世話する者達であるのだが。


シオンはグレイ皇帝に、未来の王妃が視察に国内を周ると早馬を走らせた。


「よろしいのですか?」

「…………ああ、不穏分子を炙りだすためじゃ」


すでにグレイ皇帝が隣国のシオン・カイザー公爵令嬢に求婚している事は広く知られていた。


各地に現れるシオン公爵令嬢に、領主達は驚きながらも歓迎した。


一部を除いては。


「釣れましたね」

「うむ、少し敵兵が少ないが、まぁよいじゃろう」


アイギス帝国の国境に近付いてきた頃であった。平原におよそ500人もの兵が待ち構えていた。


「止まれーーーー!!!!!その馬車にシオン・カイザー公爵令嬢が乗っている事はわかっている!シオン令嬢を差し出せ!!!」


司令官らしき者が叫んだ。


「ふむ、モテる女は辛いものじゃな♪」

「いえ、これは全然違いますから。さっさとヤッちゃって下さい」


すっかりシオンの付き合いになれたリリスは、遠い目をしながら言った。


私もすっかり毒されちゃったなぁ~

こちらは100人で向こうは500人なのに、負ける気がしない。怖くないなんておかしいわね。


普通なら恐怖で震えるものなのに全然怖くなかった。


そして、予想通りの展開となった。


シオンが赤いドレス姿で敵兵に飛び出して、手に持っていた特注の【鉄扇】を使い敵兵を叩きのめした。周りの護衛もシオン様に怪我などさせない!と、鬼気迫る気迫で敵兵を圧倒した。


そして、この襲撃は初めてではなかった。これで5回目だったのである。


「ば、バカな!?強すぎる!」


100人の少数で圧倒しているシオン軍に、敵兵は動揺していた。


実はこれには訳があった。


それはシオンのスキル【覇王】であった。

自分を慕う者に、シオンのオーラを纏わせるスキルであり、オーラを纏った者は、攻撃力、防御力、素早さが『3倍』になるのだ。


そこに、シオン自らが突撃すれば、後ろの兵士達は死にものぐるいで戦うと言う訳である。


「ふぅ~、これで占領した領土を好き勝手にしていたクズ領主達を一掃できたかのぅ?我が治める国じゃ。膿は出し切っておかぬと、思わぬ所から腐ってしまうからのぅ」


すでに数千もの兵士を少数で叩きのめしている。

アイギス帝国の全土に、その武勇は広まっていった。


元々、イージス王国は兵力で劣っているのに、アイギス帝国の侵攻を跳ね除けている。

その時の被害が大き過ぎた為に、アイギス帝国はイージス王国を諦めたほどであった。


故に、イージス王国は少数精鋭揃いと言われていた。


「ただいま戻ったのじゃーーーー!!!!!


バンッ!と、扉を開いて執務室に入ってきたシオンに、グレイ皇帝はポカーンとしていた。


ハッ!?


「シオン令嬢!貴女にはどんなに感謝しても足りない!ありがとう!」


すでにシオンの偉業は、倒された兵士達から国中に知られており、グレイはシオンの両手を握り喜んだ。軍部がシオンに忠誠を誓うと言ってきたからだ。


「うむ、我が旦那様が喜んでくれて何よりじゃ!」


それからグレイ皇帝とシオン公爵令嬢は、時間があれば色々な事を話し合うことになった。


政治的な事。

お互いの好きな事。


などなど。


そして───


「君に我が国を捧げます。どうか、この国を導いて欲しい!」


グレイはシオンの方が国を治めるカリスマと武力、政治力があると痛感し、シオンを【女帝】として治める事を希望した。

シオンはグレイを除け者などにはせず、表の顔はシオンが担い、裏ではグレイが支える事で、アイギス帝国を立て直す事になったのだ。


「きけぇーーい!すでに我が国であるアイギス帝国は、グレイ皇帝と我が二人で治めていく!何人たりとも、我が『愛する旦那様』を侮辱する者は許さぬ!」


大勢が集まるパーティ会場で、シオンは改めて自分の想いを口にした。


グレイは圧倒的なオーラを放つシオンに敬服し、汚れ仕事など喜んで行うほどに愛するようになっていた。


シオンは圧倒的なカリスマを持って、軍を掌握し、他国に攻め入る兵士から、自国の民を守る兵士に変えていった。


「よいかっ!我が愛する民を守る為に貴公らは存在している!自分の住んでいる町を、隣人を、愛する家族を守る為にその力を振るうようにせよ!そして、民に慕われる誇りを胸に生きるのじゃ!」


騎士団の前でシオンが演説した言葉は、多くの兵士の胸を打ち、素行の悪かった騎士団は生まれ変わったのだった。


そして、いつの間にか自国のイージス王国がアイギス帝国の属領となっていた。


「いつの間に???」


シオンは首をを傾げたが、シオンを慕う騎士団長、宰相などが2つの国をシオンが統治したほうが発展すると言って、王家に反旗を翻しシオン女帝に捧げたのだった。


『これでまたシオン様にお仕えできる!』


いきなり他国へ嫁ぎ、主君として仕えることが出来なくなった事への意趣返しであった。


無論、イージス王国の方がシオン信者が多く存在していた為に、簡単に手続きは完了した。


「まぁよい!どちらも我の愛しい国である。両方を一緒にめんどうを見ることにしよう!」



こうして、2つの国は一つとなって、関税など撤廃し、物流が活発になった事でより発展していく事となる。



──今回の力──

【カリスマ】

一部の人々が持つ、他の人々を引きつけ感銘を与える強力な個人の性質


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



それから幾星霜の月日が流れて───


歴史書にはこう書かれている。

アイギス帝国の第一人者であるシオン・アイギスは、他国から嫁いできた公爵令嬢であるが、そのカリスマ性から帝国の実権を握り、国内を発展させた女帝である。その夫のグレイ皇帝も陰ながらシオンに尽くし、二人はいつまでも相手を思い合ったと記させている。


シオン・アイギスは結婚して帝国の名字となったが、もう一つの呼び名で親しまれていた。


シオン・カイザー(女帝)と。



シオン・カイザー様!

バンザーーーイ!!!

バンザーーーイ!!!!!


バンザーーーイ!!!!!!!



貴女様の名前は、永遠に語り継ぐと我ら信者が後世へ知らしめます!


こうして、シオン信者により、現代でもシオン・カイザーの名前は不滅に知られているのである。



【END】



※この小説を最後まで読んだ『あなた』はすでにシオン信者になっています。


シオン・カイザー様バンザーーーイ!!!!


シオン様の為に★★★で評価お願い致します!

全てはシオン・カイザー様の為に!

(笑)


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