第2話 心のガラスが砕け散った時
☆セリナ、サイド☆
私は。
個人的に彼を不思議な人だと思っている。
彼っていうのは目の前の中西さんだ。
私なんかに構ってくれてその身が濡れる事も躊躇わずその傘をくれた。
その事に私は驚きを持って中西さんを見る。
私は.....心より愛していた男性に浮気された。
そして私自身が捨てられてしまい。
それからどうしようもなくなって死のうと思っていた矢先だった。
この様な男性が居るという事が私にとって衝撃である。
世界は既にもう救いのない様な世界かと思っていたのだが。
私の様な人に構う男性も居るんだな、と思った。
だけど結局は容姿目当てかもしれないけど。
「.....凄いな。これは。お前さん家事スキル相当凄いんじゃないか」
「.....そうですかね?これぐらいは普通だと思います」
目の前に塩鮭と卵焼きとほうれん草のおひたし。
それからご飯を出してみる。
これは全部.....あの男性の為に鍛えたものだが。
だけど無駄骨になったけど。
思いながら私は目の前で笑みを浮かべる中西さんを見てから手を合わせる。
「これぐらいしか作れなくてすいません」
「.....何を言っている。十分過ぎる。ありがとうな」
「そうですか?.....でもそう言ってくれてありがとうございます」
「俺にとってはこんな暖かい食事は久しぶりだ」
「.....ですか」
それから私は中西さんを見る。
中西さんは美味しそうに食べ始めた。
たかだかこれぐらいで喜ぶのが私は、ちょっとあり得ない、と思ったが。
だけど彼は心底から喜んでいた。
「有難うな。今日限りだとしても.....幸せを感じれた」
「.....私はこれぐらいしか出来ないので。.....だけど喜んでもらえたなら嬉しいです」
「.....君に言うべきじゃないけど。俺は心底嬉しかった。本当に嬉しかった。この気持ちが少しだけでも伝わればと思う」
そして中西さんは私に微笑む。
私はその姿を見ながら目を丸くしてから、そうですか、と返事をする。
不思議な人だ。
以前付き合っていた人はこんなんじゃなかったのに。
☆
それから私達は別々に登校をする。
中西さんとはお別れしてから教室に向かうと。
珠子が話かけてきた。
須藤珠子(すどうたまこ)。
日本人で友人が少ない私の貴重な友人である。
ボブヘアーに.....関西弁?の様なものを使って話している。
「それにしても大変やったなぁ。セーナも」
「.....そうですね」
「まさか相手の男に浮気とは。私やったら確実にはっ倒すやろうね」
「ですね」
セーナとは私の愛称である。
何というか珠子が私に付けた。
私はその名前が気に入っている。
珠子が好きだ。
「.....でも何だか少しだけ晴れ晴れしとるね?どしたん?」
「ううん。何でもないです。.....ちょっと嬉しい事があっただけですね」
「そうなん?どんな嬉しい事や?」
「内緒ですよ」
中西さんに傘を借りてそして傘を返して借りも返した。
もうこれで中西さんと関わる事は無いだろう。
思いながら私は窓から空を見上げてから。
珠子に向く。
そんな珠子は柔和な顔をして私を見ていた。
「.....浮気の事に関してはもう忘れようって思います。.....最低な人は何処までも最低ですから」
「そうやな。私もそう思うわ」
「.....でも忘れられますかね?」
「私はセーナなら大丈夫って思うで」
「.....そうですね。確かに」
それから私はチャイムの音を聞く。
珠子は座っていた椅子から立ち上がり、ほんじゃまた後でな、と言いながら手を挙げて笑みを浮かべる。
そして戻って行った。
私はその光景を見ながら手を振る。
そして授業を受けた。
☆
因みにだが私の浮気相手はお見合いで知り合った男だ。
正直誠実で.....優しかったから。
好きになったのだが。
裏切られてしまって私は酷く傷付いた。
「.....」
心がバリバリだ。
ガラスが砕け散った。
だけど生きなければならない。
私は職員室から書類の束を運ぶ。
ちょうど私は生徒会の書記をしている。
なので書記として生徒会の書類を運んでいた。
「あの」
そうして思い束を運んでいると。
背後からそう声がした。
そこを見ると.....何故か中西さんが居る。
私を見ながら、重そうだ。運ぼう、と言ってくれる。
「.....え?でも.....」
「朝のお礼だよ。.....借りを返すとかそんなんじゃなくてね」
「.....そうですか.....でもいつまでもお礼合戦が続きますよこれ」
「まあそうだな」
苦笑しながら中西さんは紙の束を持ってから生徒会室まで運んでくれた。
私はその紙の束を見ながら、それじゃあ俺は、と去る中西さんを見る。
その中西さんに、あの、と声をかけた。
それから、お茶飲みませんか?淹れます、と言う。
「え?しかし.....」
「良いんです。飲みたくなったから。インスタントですけど」
「.....じゃあ貰おうかな。有難う。丁度喉が乾いてた」
「はい」
所詮男なんて、と思っていたのだが。
中西さんは何か普通の男とは違う別のオーラを感じる。
何故なのだろうか。
思いながら私はポットでお茶を淹れる。
疑問がありながら。
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