金魚の自由

今日は金魚鉢の中で泳ぐ金魚を眺めていた。


その金魚を眺めていたら、金魚が僕に話しかけてきた。


「何で生きてるの?」


「分かんない。」


「僕は、この金魚鉢で泳ぐために生まれてきたんだって思ってるし、それで満足してるよ。」


「そうなんだ。」


「でも、たまにはどこかに連れてってくれない?」


「分かった。」


僕は金魚鉢を抱えて、近所の公園に行ったり、線路の上を通る橋に連れて行ったり、コインランドリーに連れて行ったりした。


最後に海に連れて行ったら、


「僕、海で泳ぐのちょっと憧れてたんだ。少しでいいから、海で泳いでもいい?」


「わかった。」


そう言って、僕は金魚を海の中に入れてあげた。


しばらくその金魚は海の中を泳いでいたが、だんだんたどたどしくなってきて、しばらくすると、動かなくなってしまった。


僕は動かなくなった金魚を鉢に戻して。家に帰った。


いつもの場所に鉢を置いて、その向こうの空を眺めた。


空はいつもみたいに雲ひとつなく青々と輝いていた。


金魚は鉢の中で何も言わずプカプカと浮いていた。

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